詩集:葉擦れの地

”初秋”:第5詩集 2005~2009(PDF) (epub) (kpf)

細長い谷あいを

海へ向けて歩く

刈り取られた後の水田に挟まれた街道に

朱色に染まった蜻蛉が滑空している   ...詳細

”口伝の海”:第4詩集 2001~2005(PDF) (epub) (kpf)

木々の間をジグザグに

右手で幹を触れ

次には左手で幹を触れ

飛び跳ねるように歩いて行く   ...詳細

”ガラスの中の呟き”:第3詩集 1990~2000(PDF) (epub) (kpf)

うす青いガラス細工の中に

凍りついた呟きがうずくまる

(私は深い眠りにつく者

 この眠りを覚ますことができるのは   ...詳細

”崖下の小舟”:第2詩集 1982~1989(PDF) (epub) (kpf)

鏡に映る己が憔悴の顔をしばし見つめ

断崖にただひとつ建つ掘立小屋の中

疲れきった身体を汚れたベッドに横たえ

窓からは、これは風だ、そうに決まってる   ...詳細

”生の没落”:第1詩集 1979~1982(PDF) (epub) (kpf)

時の逃走するを追いかけて息を切らし

常に瞬間と静止の中に沈黙の焦燥を残したまま

がんじがらめの縄は次第に肌に食い込んでゆき

深くゆっくりと下りてゆく、無限の圧力の中へ   ...詳細

解説

 ここでは、言語によって、様々な抒情を音楽として表現できないだろうか、と意図して私が書き綴ってきたものを掲載しています。

 敬愛する作曲家である武満 徹は、言語と音楽の間の距離を縮めることにも意を尽くした人だ、と私は思ってきました。 また、音楽解説者は、音楽を言語によって表現するという困難な道を選んだ人々です。 私自身も、"Preludes"の中に掲載した文章を書き綴る過程で、その困難を感じてきました。

 それなのに、更に困難な、「言語による音楽表現としての詩」に取り組むというのは、まさに無謀としか言いようがないでしょう。

 けれども、私が敬愛する様々な詩人たち ―――中原中也、立原道造、萩原朔太郎、高村光太郎・・・――― などの書いた詩には、 明らかに音楽が奏でられている、と思っています。

 私は、外国語をほとんど解せませんが、様々な訳者が優れた翻訳を行ってくれているおかげで、 フランスやイギリス、ドイツ、 東欧、中国などの詩も味わうことができますが、そこにも明らかに音楽を感じることができます。 どのように韻を踏んでいるか、 発音構成はどのようになっているか、などが理解できぬ者でも、翻訳によって、その底流に流れる音楽を感じることはできるのです。 詩はもともと「うた」であった、と私は考えます。

 その視点で、もう一度、詩とは何か、というものを考え直そうというのが、私の考え方です。

 葉擦れ―――。それは、私が、自然の中から得られる最も美しい音楽だと考えているもののひとつです。 そのような意味での音楽が、言語の連なりから聞こえて来ること・・・、これこそが私の夢です。

 ここには、閉塞感に満ちた詩から、「陽光(ひかり)」をテーマとしたもの、「生活(くらし)」への憧憬を歌ったもの、 その他の様々なモチーフを取り扱った詩が含まれています。

 おそらくはこれからも、私は冒頭に示した困難な表現に取り組むのであろう、と思います。     2005.1.20

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