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「うまれた雪」~柏木麻里
詩ページ(2005/11/25現在):「うまれた雪」 |
作者サイト:柏木麻里 |
この詩の中で、雪は、降り積るものではなく、地面に沁み込み、消えてゆくものとして描写されている。
それは、作者(彼女)が想うひとが、人知れず胸を開いている、そこから生まれ、彼女の心の中に降り積もってゆく
――― いや、沁み込んで行く。彼女は、その雪が沁み込む地面であり、雪を降らせているひとをひそかにもとめている。
その雪から、掌に、言葉をもらう・・・。美しい詩である。 この作者の詩のいくつかは、この詩のような深閑とした雰囲気を持っていて、しかも、 視覚的な美しさを巧みに言葉で表現し、彼女自身の感情を、静かに、しかし切々と伝えてくる。 のみならず、この詩が掲載されているサイトを実際に見てみればわかることであるが、 パソコンのモニターに納まりきらないほどの平面の中に、まるで絵画のように、文字を置いていて、 作者の表現したい想いが、視覚的にも伝わってくる。 もっとも、私自身は、通常の詩と同様の行配置としてワープロソフトに打ち込んで印刷し、この詩を読んでいたわけで、 別に、その絵画的な文字配置とは関係なく、この作者の美意識なり、思いを十分すぎるほど感じることができた。 作者は、本来 美術史研究者のようであるが、それだけで、このような言葉を紡ぐことができるわけではないだろう。 最後に描かれた、雪の上に咲くジャスミンは、作者の想いの象徴であり、愛する者に向けて開かれた胸である。 彼女はもはや「伝えることができない」地面ではなく、受け取ると同時に、与えることのできる花となった。 そのジャスミンの香りは、雪が生まれる地へと届いたのだろうか。 2005/11/25 |