どこに行く サウジアラビア
日本の産業を支えている資源の一つが、石油である。その石油の8割が中東地域から輸入されている。ここは、イスラム教の国々である。
そのイスラムの国々の盟主と自負するサウジアラビアが、今、注目されている。
国家の経済的基盤である石油資源からの脱却を目指して進めている『ビジョン2030』。これからのサウジアラビアがどのような方向に進
むのかは、我が国としても決して高みの見物をしているわけにはゆかない。
まだ、大学に入学したばかりで、東京の東西南北もまだ定かでなかったころ、教養学部の授業で衞藤 瀋吉先生から国際関係論の授業を受けたことがある。今でも忘れられないのは、そのときにスディリーセブンの話をしてくれたことだ。まだ、サウジアラビアもイランも区別がつかないときに、サウジの将来について、こののスディリーセブンが政治の舞台で活躍する時代が来るだろうと言われた。それから半世紀たち、それが現実になっている。先生の見識の深さと洞察力の凄さに今更ながら敬服している次第である。そのサウジアラビアについて、70近くになって付き合うようになった。日本からすれば、キリストの世界は比較的、扉が開かれているが、イスラムの世界は、ほとんど情報がない。そんな状況の中で、私がかって勤務していた住友化学から、「サウジアラビアで推進しているプロジェクトを手伝いに来い。」とのお声がかり。話を聞けば、最先端の技術は知らなくても、世の中の最先端の情報があればよいとのこと、自分でも、かってお世話になったこともあり、少しでも恩返しができればとの思いで、単身、サウジアラビアに乗り込むことになった。
ここでは、何も知らない未知の国、サウジアラビアに乗り込み、微々たるものではあるが、異文化の人たちとどのようにかかわり、そして、サウジアラビアのためにどんな仕事をしてきたかをザックバランに紹介したい。
ひとつだけお断りをしておくが、イスラムの世界は、異教徒に対しては、きわめて閉鎖的と言わざるを得ない。したがって、私の見聞きしたことは、私が滞在していた、西海岸(紅海に面した一地区)のことであり、石油資本の活動の中心である東海岸(ペルシャ湾岸)や、砂漠のなかのオアシスの中にできたリヤドなどとは、文化も歴史も、また、イスラムの世界も必ずしも同じではないことをご承知願いたい。なにしろ国土は日本の6倍もある国だ。したがって、ここで記述されていることは、サウジアラビアの一地区でのこととご理解いただきたい。
サウジアラビア見たまま | サウジアラビアの未来 | Science World for Saudi Arabia | Kentaurus in Saudi Arabia |
道の国、サウジアラビアと日本の関係は、非常に密接だ。日本のエネルギー、産業の源材料の原油の1/3はサウジアラビアに依存している。これに、サウジと全く同じ価値観をもっているクエートから1/3、そして、その他のアラブ諸国からのものを加えれば、なんと、80%近くは、この地域からだ。そのサウジのことを我々はあまり知ってはいない。
では、そのサウジとは、いったいどんな国なのだろうか。 決して、おろそかにはできない国であることを認識してほしい。 |
国家歳入の8〜9割を原油、並びに石油製品の輸出に依存しているサウジは、昨今の原油価格の低迷で近い将来、財政的に追い込められるのではないかと考えられている。
手厚い政府の保護で、贅沢ともいわれる生活をしてきたサウジは、今、変革の時を迎えている。 Vision2030という壮大な国家変革のプロクラムを旗印にいま、大きく変わろうとしているのだ。 そんなサウジはこれからどこに行くのだろうか?
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そんなサウジは、原油依存の国から、産業立国を目指して新しい国造りを始めた。
その一つガ石油の川下産業の育成だ。 サウジが進める政策の一助になるようにと、住友化学が進めてきた、サウジに提案している技術立国のための施設と、教育の施策は、・・・・・? 国の基本は国民であり、人材を育てるには教育が必要だ。
どんな教育をしてゆくのか、それが問題だ。
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異文化の人たちと付き合うのは、彼らの価値観のよりどころ知らなくてはいけない。しかし、そのためには、彼らとともに生活してみない事にはわからない。
酒を飲めない、女性がいないそんな世界で、いかにストレスを発散させるかも、努力が必要だ。 ストレスが溜まっていてはいい仕事もできない。 ではどうすればよいのか。 私がしてきたストレス発散の方法あれこれ。
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これがサウジアラビアだ
これは、2013.01〜2016.02 の間、サウジアラビアに滞在し、石油化学開発プロジェクトの一端を担って来たその間に経験したイスラムの世界に関する知見をまとめたものである。
これが、サウジアラビアの全体について、をまとめたものではなく、一個人の観点、並びに、興味からの限られた情報のなかでのものであることを了解していただきたい。
今、イスラムの世界でなにが起こっているのか
古くはパレスチナ問題、そして、今はシリアの内戦、イスラム国の抗戦、国際的なテロ、そして、難民問題と、世の中を震撼させる事件が絶えず起こっているが、平和な日本、否、平和ボケした日本国民からは、これらは遠い世界の出来事と思われている。
しかし、ガソリンをはじめとするエネルギー源、さまざまな化学製品の原料としての石油の輸入の8割強(81.8%、2015年 経産省「石油統計」)を中東(サウジ33.5%、UAE
25.2%)からの輸入に依存している日本からすれば、これは、「台所に大変な火種を抱えている」というのが現実だ。
国際的な社会常識からすれば、こうした状況も突然大きな変動をきたすことはないと信じ込んでいる我々であるが、はたして、それで日本の将来は大丈夫なのであろうか。この報告書は、こうした問題の対処に、果たして、今、イスラムの世界で起こっている事件の背景にどのようなものがあるのか、そして、彼らの価値観を理解し、これから先イスラムの世界がどのように変化してゆくのかを考えるヒントとするためのものである。イスラム教の2つの聖地を持ちイスラム社会の盟主国を自負するサウジアラビアに3年ほど滞在し、限られた範囲ではあるが、実際にこの国で体験したことを、できるだけありのままに整理し、まとめたものである。