宵明けの青空に -2- アカデメイの錬金術師

  





「あの星が周っていることに、気が付いたのは何時だ。」
「君は誰かに教えてもらったのか。」
「次は月が満ちる頃に来ます、それでは。」

アカデメイの鐘がなる。
でっこぼこの星にうさぎなんかいるわけない、
私は目が良いのだ。




黒い海にひょん、月の裏側はでっこぼこ。
地球に残されたオーパーツ、
その一つはきっと私たちのことで、
私たちの歴史が原人と呼ばれる人たちの食事から、
わずか1万年で変わってゆくのだろうか。

「記録を取ろう。」

日の高さは、この街一番の煙突くらい。
どうどう風が吹く、くしゃみが跳ね返ってくるような日。

木々は枝を逆立て仰け反り、しゃらしゃらと音を立てて戻る。
暖かい日和ではあるが、辺りはやや黄味がかっている。

こんな日は外に出ないで家にいるのが一番だと、
ライアンさんだったら、言うだろうな。


カランコン カランコ

「ハントいるかい。」
「ほ、ほいな。」

期待を裏切るのもそうです、ライアンさんです。
風の日ぐらい家にいるもんです。

「はい、いますよ。」
「一寸、調べものを頼みたい。」

"調べもの"これは私の仕事であり、
お客様に必要となる本を山積みにすることで料金を頂いている。

それはライアンさんとて例外ではなく、
特にお得意様には十分な情報を得ていただく為に、
少し多めに用意をさせていただいているのだ。

特にライアンさんは無茶な調べものが多い。
放置して硬くなったパンをもう一度練り直す方法とか、
割れてしまった白塗りの器を誰にも気づかれることなく修復する方法などの、
未知といえば未知の、技術寄りの調べものがほとんどだ。

調べものは最短経路で答えにたどり着くべきだと、
思うことがしばしばある。

但し、ライアンさんのようなケースでは、
なるべく調べものに対し多くの答えがあった方が、
きっと、その事例が成せること多いらしいのだ。

「調べものですか、何ですかね。」
「この世界で空を飛ぶのに最も適した形状を教えてくれ。」
「きっとそれはあれですよ、そうですね鳥ですよ。」
「それが本当かどうかを調べてほしい。」

「むう、ライアンさん。鳥は空を飛ぶ生き物の代表ですよ。」
「鳥だとすれば僕らでは重すぎる。」


ほれ、来ましたよ。
ですが、本日は先に目的を訊いてしまいます。
何となく、分かってはいるもので。

「今度は何を作るんですか、新しい魚を作るんですか。」

ライアンさんが照れたように口ごもったのが分かったが、気にしてはいけない。
それを思って伝わってしまったら、どうするのですか。

  
  
  
  
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