まさに、「何処に行く、石油大国。」
Saudi
の未知への旅である。
こうした時代背景と、サウジアラビアの現実の中で住友化学、ひいては、日本はどのような行動をとっていけばよいのか、どんな行動を取らねば成らないのか、それが今問われている。
ペトロラービグ計画は、前国王の思惑の色濃いプロジェクトだ。
前国王は、サウジアラビアの前途を考え、そして、石油産業の地形学的戦略をたて、サウジアラビアの西海岸地域の産業開発をするという戦略を立てた。既に、石油を産出する東部州から、ホルムズ海峡の閉鎖に退校して、アラビア半島を横断する石油のパイプラインを完成されている。しかしながら、西海岸地域は、以前としてメッカ、メディナの二聖都に来る巡礼者をあいての商業で成り立っていた。アブドゥラ―国王は、この西海岸にも産業を育成する必要を感じ、ここに、世界から優秀な学者を招集し、世界最先端の学術研究をし、サウジの技術 を育成するための、大研究学園都市KAUST( King Abdullar University of Science and Technology )を造った。また、その北には、サウジ最大となる貿易港を持つエコノミックシティーを開発している。ここをサウド家が主導するサウジの経済の中心となる都市にしようと言うわけだ。
ラービグ二期計画では、一期計画と比べ、より複雑な二次製品が生産される。
このため、かなり高度運転操業技術が求められる。
( 住友化学、ペトロラービグ石化計画資料より )
そして、これに繋がる世界最大の石油精製プラントを持つ石油コンビナートがラービグ石油化学基地であり、ここに、サウジで最も近代化された川下産業を育成するための工業団地も隣接して開発した。そして、この石油コンビナートに技術を提供して、サウジでに樹脂加工産業を育成しようとしているのが住友化学のラービグ・プロジェクトである。
2015年にサウジアラビアにもの凄い嵐が吹きまくった。原油価格の暴落である。国家歳入の8〜9割を原油の輸出、並びに、石油化学産業に依存している国家は、それまでの10年間に莫大な資産をため込んでいると言われたが、その資産が、2〜3年のうちに枯渇してしまうのではとの憶測が乱れ飛んだ。
この時にサウジ政府を支える、Aramcoが出した年間の目標は、
低迷する原油の価格に耐えられる企業体質の確立
完成間近いサダラ石油コンビナートの早期運転開始
ペトロラービグの第二期建設の完成と早期の操業開始
だった。そして、Aramcoの会長である、Al Fahliは、保険大臣、そして、エネルギー大臣と国家の要職に就いた。プロジェクトの相手であるAramcoの責任が増大し、住友化学の責任はいよいよもつて重大になった。
( Pet-Rabigh 資料より )
第一期計画では、主として原油からの一次製品、基礎化学原料の生産がプロジェクトの骨格であったが、第二期計画では、図からも明らかなように、より収益性の高い、二次製品にと、製品の目標が進められた。これに伴い、ますますもってサウジサイドのより高度の、そして、緻密な操業管理、運転、製品取扱い、需要家に対する対応が求められるようになった。
驚くべきことに、サウジアラビアのラービグプロジェクトに続き、Vision 2030 の一環で、ラービグの近くにある原油の積出港にもなっているヤンブーと言う地域で、次期の大型石油化学コンビナートの計画を進めている。
前アブドラー国王は、ペトロラービグのプロジェクトに先立ち、イスラムの巡礼で潤ってきた西海岸地域の経済改革を進めてきた。それが、次のようなものだ。
KAEC
( King Abdullah's Economic City) |
1000億ドルをかけて、建設が進んでいる目がシティー計画。2035年の完成を目指す。完成すれば、地域の物流・製造の中心地となる。工業地区イガにも病院や学校が建設され、街の人口は200万人に到達することが目標。世界で10本の指に入る大きな港をもつことになるだろう。
すでに、10社近くが活動をはじめ、20社近くガ進出を決めていると言われる。 トヨタ自動車もサウジへの輸出の拠点として広大な土地を所有しており、そのときが来ればここに自動車工場を建設することもできると言われている。 |
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KAUST
( king Abdullah University of Science and Technology ) |
国王がポンとポケットマネー一兆円を出して立ち上げたといわれる世界に缶たる最強の理工系大学を立ち上げたのが、この研究学園都市。世界中から優秀な研究者を集めて、政府の干渉がない環境で自由な研究をしてもらおうというもの。そのためイスラム圏では珍しく男女共学、高度な学園自治が確保されている。
潤沢な研究費が用意され、最高級、最先端の研究設備が用意されているが、成果の評価もなかなか厳しいとのこと。日本からの自由な研究風土を求めて若手の研究者が参加している。 サウジの風土を考えてか、海洋科学、生物化学などの分野でのテーマも多いようだ。 |
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高速鉄道建設 | 毎年、3百万もの巡礼者がメッカとメディナを訪れると言われる。この二つの都市を高速鉄道で結ぼうと言うもの。途中にはジェッダとラービグの駅が建設された。サウジの西海岸の経済が大きく変化するすることは間違いない。 |
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スポーツセンター | 大きなプロジェクトとは言えないかもしれないが、ジェッタに壮大なサーカースタジアムを中心としたスポーツセンターを建設した。こうしたスタジアムをこれからも全国各地に建設していくというのが政府の方針だ。公表はされていないが、この地区に世界一高いタワーと立てると言われている。その高さは、もちろん、だれも知らないが、1000メートル以上になるのではといわれる。
サウジにバベルの塔が復元されるのかもしれない。 |
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( 写真は、Arab News 、その他資料より抜粋 )
R-PTC
( Rabigh Plastic Technical Center ) |
サウジ側の要請は、当初トレーニングセンターであったが、諸藩の情勢に鑑み、テクニカル・センターを建設した。
樹脂加工産業の基盤となる世界の最先端の科学技術情報の収集と知識の習得ができ、かつ、サウジの石油化学産業の操業、ならびに、樹脂加工業の育成に貢献するための、主として啓蒙も目的とするセンター。 e-learning では、日本の大学の講義のほか、アメリカのMIT, Stanford 等の大学の講義をうけられる。 世界で始めて、3-D 画面を用いた仮想プラントシミュレーターを導入、など |
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( R-PTC 説明資料より抜粋 )