船橋から大和田まで


船橋から次ぎの大和田宿までは、宿間では最も長いコースです。成田名所図会には3里9丁と記されています。

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成田街道入口

船橋大神宮を出て、ゆるやかに坂を上った左手に西福寺があります。墓地の奥にある宝篋印塔と五輪塔は、鎌倉後期の作とされ、県の指定文化財になっています。

街道を真っ直ぐ東に行くと、やがて成田街道入口の丁字路に出ます。船橋市前原西1丁目、現在の成田街道(国道296号線)の起点です。トップページに掲げた道標写真は、この場所にあります。それぞれ字体を変えて三面に「成田山道」と書かれた石柱の上に、八角形の輪宝(これは古代印度の武器の一種で、後に仏教に取り入れられ転輪聖王の七宝の一つ)を載せた道標で、高さは約2.5mもあります。明治12年に信成集という講中が建立したものです。



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ここから真っ直ぐ進めば御成街道、上総東金へと続く道です。
さくら、なりた旧街道は、ここを左折して北東方向へ、酒々井まではほぼこの国道296号線の上を行きます。

左折して50メートルほど行ったバス停の後ろに、屋根のかかった石仏群があり、その中で一番大きい不動明王像の台石に、大きなしっかりとした文字で「右なりたみち」と彫り込まれていました。石仏にはそれぞれ花が供えられていて、いまでも普段大切に崇められていることがわかります。この石像は安永6年(1777)建立の古いものです。



kaidou-fukei小金牧

前原から大和田までは、単調な道程で、広大な原野が延々と続いていました。江戸幕府は軍馬を確保するため房総地方に三つの牧場を設けていました。その一つが下総の葛飾郡から印旛郡にかけて存在した小金牧で、その一部が、現在の前原から薬円台にかけての一帯でした。

成田参詣の旅人達にとって、単調とは言っても野馬の群れ遊ぶ原野を歩くのは楽しかったのではないでしょうか。むしろ車の往来が激しい今の成田街道の方が私にはずっと単調に思えます。takinodai-dohyo

御嶽神社の前を通り、バス停滝台の道路脇に半分埋もれた道標を見つけました。正面に成田山と書かれた石柱で、ここから酒々井までの道中に岩田長兵衛という人が建てた5基のうちの1基と思われます。それにしてもこの道標はあと何年健在でいられるでしょうか。

薬円台

船橋市薬円台は、江戸時代に薬園があった所です。8代将軍吉宗の指示で丹羽正伯と桐山太右衛門が開発しました。当時はこの丹羽正伯に因んでこの地を正伯新田(しょうはくしんでん)と呼んでいました。


新京成電鉄薬円台駅入り口を過ぎてまもなく船橋市立郷土資料館があります。薬円台の歴史などが詳しく展示されていました。習志野原という名称は明治になってからのもので、明治天皇が近衛兵の演習観閲に見えた折に、天皇ご自身が「習志野ノ原」と命名されたことを知りました。資料館脇の公園にその記念碑が建てられてあります。

更に街道を進むと陸上自衛隊習志野駐屯地があります。右側は鉄条網の塀が約1kmも延々と続く演習場があります。空挺団も居るとのことで、迷彩服を着た自衛隊員とすれ違いました。おかげで、現在まで原野のまま残されている貴重な地域であるとも言えます。


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道標2基


八千代市に入ると、すぐ新木戸という三叉路に出ます。左は鎌ヶ谷を経て木下に行く旧道です。そこの道路脇に建っていたのが左の成田山道標です。半分に折れたのをセメントで繋げてありました。正面の文字以外はよく読み取れませんでした。
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京成バス停、米本入口付近にあったという指差し道標は、現在所在不明でしたが、そのレプリカが、八千代市立郷土博物館に展示されていたので拝借しました。

それが右の写真です。画面でははっきり見えないかもしれませんが、「成田ミち」の文字の上に指を差した手の浮き彫りがあります。文政3年(1820)品川宿の和国屋建之とありました。

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大和田宿

長い道程を歩いて大和田宿到着です。ここは現在の八千代市大和田新田、当時は宿駅として賑わったのですが、今は電鉄駅からも離れていて開発も手付かずに、それだけ旧街道の面影を残しています。

宿場の最盛時には、隣の萱田村まで家並みが約1kmも続き、旅篭屋が5軒あったといわれます。前出の八千代市立郷土博物館の展示によると、文政3年(1863)5月21日から6月18日までの宿泊客は、521組・1436人で1日平均55人あったとの記録があります。かなりの数と思われます。

街道に面して、長妙寺があります。ここには江戸の大火で火あぶりの刑となった八百屋お七の墓があります。また、成田参詣記に出てくる時平社のこんもりとした森が残っています。

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