本項では、学力レベルを三段階に分けて、数学(算数)に限定した学習法をご紹介していきます。
もちろん、生徒ごとに弱点とその性質は異なるため、厳密に言えば、学習法はさらに細分化されますが、学力レベルごとに多くの共通点が見出せるのも事実ですので、ここでは以下の3グループについてご説明したいと思います。
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ランク |
テストの得点 |
A |
80点前後 |
B |
60点前後 |
C |
50点以下 |
※以上は、中学校での定期テスト(中間/期末テスト)を対象とした区分けとしております。
小学生の場合は、単元末に行われるワークテストでの得点を対象に、ランクごとに10点を加算してご参照下さい。
◆Cランク◆50点以下
まず前提として、
全ての生徒に最低60点以上の得点は可能です。
つまり、Cランクの生徒は、“本来獲得できたはずの点”を取り逃していることになります。
例えば、40点しか獲得できなかったとすれば、20点以上もの獲得できたはずの点を“損している”のです。
では、減点の原因は何か?
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それは、“単純ミス“に尽きます。
通常、テスト内容の6割程度は、計算問題などの基礎的な問題で構成されています。
Cランクの生徒は、似たような問題で正解/不正解の違いが生じている場合が多く、不正解部分も正解できていた可能性があります。
そして、その不正解部分を“正解していた”と仮定して得点を計算してみると、たいていの場合、60点前後になります。
当然、このランクの学習法としては、ミスをなくすための学習ということになります。
但し、これは
“注意力を上げる訓練をする”という意味ではなく、
“ミスが生じにくい解き方に変える ” ということです。
ミスはいくら注意していても、数を軽減することが難しいのが実状です。
すでに生徒たちも、ミスをしないように注意して取り組んではいます。
例えるなら、交通事故の多い道があるとします。
通常、いくら注意を促したところで事故は減りませんし、ドライバー自身が注意していたとしても事故はなくなりません。
では、どうすれば交通事故は減るのでしょうか?
・・・それは
“道路自体の構造を直すこと”です。
見通しを良くする/カーブミラーや信号を付けるなどして、そもそも事故が起きにくい道路に造り変えれば良いのです。
これは、勉強にも同様のことが言えます。
ミスが多いのであれば、本人の注意力不足を指摘するよりも、“解法そのもの”に難点があり、改善の余地があると考えるべきなのです。
つまり、問題の解き方をこれまでのやり方から変え、どんな状況下でもミスが生じにくい解法を習得させることが状況の改善につながる有力な一手となります。
Cランクの生徒がBランクへ昇華するために必要なことは、『現状の力で解けるが、解答精度が低い問題』を“完璧に正解できるレベル”にまで到達させることです。
このランクの生徒は、『やっても無理』という諦観に支配されていることが多いですが、これは実現性を感じない目標設定や漠然とした励ましに対して拒絶反応を示しているだけです。
しかし、“現状で理解できていることの精度を高める”という取り組みなら、難しいことへの理解を求められる訳ではないので、『それならやれそうな気がする』と一定の勝算を見出すことができます。
当塾では、取り組む内容をあえて制限することにより、目標を現実的かつ具体的に設定することで、まずは“第一歩”を踏み出させることが重要と考えています。
◆Bランク◆60点前後
このランクの生徒は、ミスによる減点が目立つ訳ではありませんが、ミスが全くない訳でもないので、Cランクと同様に“(解法の見直しを含む)解答精度の向上”も学習内容の一部となります。
しかし、基本問題だけに取り組んでいては、実感できるほどの得点アップは実現できません。
当然、文章問題などを含む“標準レベル”の問題にも取り組むことになります。
但し、このランクの生徒に対しては、“理解すること”に多くの時間は費やしません。
飽くまで、頻出問題をタイプべつにカテゴライズした上で、タイプごとの“解法パターン”があることを認識し、反復練習によりそれを体得することを優先します。
つまり、まずは『何故、そうなるのか?』という“理屈”を深く理解するよりも、『このタイプの問題は、あのパターンで解法すれば良い』と反射的に対応できるようにします。
そして、ある程度、頻出問題への自力解答が出来るようになった段階で、改めて、『何故、そうなるのか?』という理屈を、解法手順を追いながら“補足”していきます。
一見、乱暴にも思える方法ですが、解法できない段階で理屈を説くよりも、実はこの順序の方がすんなりと理解が及びます。
例えるなら、知らない土地で説明される道順より、良く知っている土地で説明される道順の方が理解しやすい(記憶しやすい)のと同じです。
これまでの経験上、完全な理解が得られるまで“理屈”を説くことに時間を費やしていると、結果的に完全な理解が得られない上、練習不足なども生じてしまい、テストでの得点も叶いません。
中途半端に理解してテストで不正解になるより、理解は一端後回しにしてもテストで“正解できる対応力”を習得することの方が重要です。
誤解しがちですが、
『理解する』=『問題が解ける(正解できる)』ではありません。
仮に理解していても、訓練を重ねなければ対応力は身に着きませんし、やがて理解した内容自体を忘れてしまいます。
例えば、野球のルールを知っていても、実際にプレイしたことのない人に野球は上手にできませんが、ルールは漠然と知っている程度でも、毎日グラウンドでプレイしている人は野球が上手ですし、結果的には、ルールも“実感を伴って理解する”ことが早いのです。
7 ~ 8割程度の正解率を目指す範囲では、頻出問題をタイプ別に捉え、各解法パターンを訓練すれば十分に実現が可能です。
ここでもCランクでの学習法と同様、現状での無理な学習を強いることなく、着実に得点アップを実現していきます。
(因みに、カテゴライズできないタイプの問題も存在しますが、これは“頻出問題”ではなく、難易度も高い問題となるので、このランクの生徒に着手する必要はありません)
◆Aランク◆80点前後
このランクの生徒は、現状での力で解法できる問題の解答精度は高く、目にする機会の多い頻出問題への対応力は有しているため、Cランク/Bランクとは学習の捉え方が異なり、“自己解決力の強化”が核となります。
80点以上での得点アップは、標準レベルの問題や(難易度が高くても)頻出問題だけに着手していては実現できません。
つまり、これまでの学習内容を的確に使い分け/併用しながら、如何に“初見の問題”へ対応できるかが勝負となるため、視点の異なる複数の問題集を同時進行するなどして、様々な問題に取り組む必要があります。
このランクの生徒が鍛錬すべきは、パターンの見えていない問題にて、設問文から適切な情報処理を行い、使用する公式や解法のイメージをいち早く掴むことです。
これは、犯罪捜査の“プロファイリング”と似ています。
設問中の情報(=様々な手掛かり)から傾向を見出して、頻出問題など(=類似する過去の事例)と重ね合わせながら解法手順(=捜査手順)を構築し、解答(=犯人)に迫る過程は、まさにプロファイリングそのものです。
つまり、これが何を意味しているかというと、仮に初見の問題であっても、仮にどんなに特殊な問題であっても、理論的な思考によりある種の法則を見出すことで、必ず切り崩していくことが可能だということです。
因みに、Aランクの生徒に対しては、指導が過度な干渉にならないよう注意が必要と考えています。
学習の目的が自己解決力の強化ですので、生徒自身が解法に行き詰った時だけ必要最低限の助力を行い、生徒本人が考える時間を阻害しないよう心掛けております。