宵明けの碧空に -11- VSタイムトラベラーズ

  








教会の人々が間に入って言ったのだった。
「待ちたまえ君たち、君たちに立場の違いがあるのは分かるよ。」
「けれどね、そんなに危ない話題を臆面もなく、この場で話すのはどうかと思うんだ。」
「特にラークさん。」
「ふん。」

シーピーリン、ジジジ
テレビのつくような耳鳴りが走った。

ラークが苦々しそうな顔をする。
「君に何が分かるというんだい。」
「違くないのです、私が言いたくないのは、あなたが間違っていないということなのです。」
「ん、トロイアちゃん。何を言ってないのよ。」
さっきの言葉はハントの言葉なのに、なぜかトロイアさんを呼ぶスノーさんの声。

「なんじゃい、どうするつもりじゃい。」
ロップじいちゃんの目つきが鋭くなった。
「だって、トロイアちゃん、ライアンが間違っているなんておかしくないでしょ。」
スノーさんの声が響いている。
何とか声が聞こえるような気がするのだが、何だか違和感ばかりである。

そのうちにラークの姿が見えなくなった。
僕らは気付いたようで気付けていなかった。
「どうなっているんだ!」
そのときヒッポが言うのだった。
「ライアンは間違ってるよ、だって、いつも何にも悩んでないもの。」

これを聞いてみんな気が付いたようになった。
もしかしたら、僕らがしゃべっている相手は他にいるのではないかと。
どうやら、トーキングマシンと話しているようだった。

そのときだった、
「よく気が付いたね、君たち。」
みんなにラークの声がする。
「しかし、ここまでだ。」
気付くと海の中のはずなのに、昆虫の鳴く音がする。

「どうなっているんだ。」
「どうも、世界が正しいな。」
ジラーが滅茶苦茶なことを言っている。

そのときヒッポが何だか嫌そうに、リュックをごそごそし始めた。
「あるかなあ。」
何か言っている。
ヒッポが取り出したのは、あひるとカエルだった。
みんなに手渡す。

「ぐなになに、何が起きてるのよ。」
「げどういうこと。」
「ぐ何で言葉が滅茶苦茶になったのよ。」
「げ頭でもハッキングされたっていうの。」
「ぐどうも僕らの言葉がおかしいのはラークのせいだね。」
「げちょっと待ちなよ、何だか違う気がするよ。」
「ぐもしかしてラークさんが一番しゃべることが出来ていないのではないかな。」
「げまさか、教会の奇跡ではありませんよね。」

「ぐあれ、言わなかったっけ。」
「げ技術で説明できないからと言って、超能力のせいにするとどうなるっけ。」
「ぐ全部、超能力で説明できちゃうよね。」

「げつまり、超能力は超能力だけで説明できては困るのですよ。」
「ぐこの世の多くは繋がっている、つまり、超能力も技術で少しは説明できないと困ると思わないかな。」

「げということは、今のは技術で説明できるところもあるということですね。」
「ぐでは、一体どんな技術が使われていると、言うのでしょう。」

そこにきて、教会の人々は答えなかった。
おそらく、理由があるからに違いないのだが。

「げよく、考えてごらん。教会の奇跡も技術で説明できる部分を持っているよ。」
そしてスノーさんが立ち上がって頷いた。

「ぐライアンちゃん、ジラーちゃん、そのあひる貸しなさい。それからハントちゃん、そのカンテラ貸しなさい。」
「げ面白いことを思いついたわ。」

スノーさんはカンテラを皆の真ん中に置き、
あひるとカエルをそれに向かい合わせては、
近づけ、離していた。
「どうよ、ラークさん。」
すると、ラークが現れてこういったのだった。

「なんてことするんだい、もう知らないぞ。」
ラークが耳を抑えて何かもごもご言っている。
「スノーさんすごいな。」
ジラーが何か言っている。


ロップじいちゃんが言う、
「ぐジラー、いま、誰がすごいって言った。」
「げえ、ラークさん。」

「ぐ何よそれバリアなんてすぐつくものなのかしら。」

ライアンとしてもがっかりな結論ではあったが、
ロップじいちゃんの指摘はさすがだった。

「なあ、まさかタイムトラベラーではないだろうな。」
「なに。」
「ジラー、記憶あるか。」
「いや、ないな。」


どうもラークはタイムトラベラーでもある気がする。
どうなっているんだ、滅茶苦茶だ。

ラークが耳を抑えてもごもご、もごもご言っている間に、
我々は考えることができた。


もし、タイムトラベラーなるものが居るとすれば、
タイムループなるものが存在すること、

そしてタイムループが発生するということは、
その世界分岐先において、エネルギー損失がその世界滅亡まで、
発生することになり、
そのタイムトラベル物質の質量は本人の同定に役立つという結論に達した。


そうしてタイムトラベラーを確認できるということがわかったが、
ラークだという確認が取れなかった、どうすればよいのだろうか。

ハントが何気なく言った。
「ぐライアンさんを殺そうとしているタイムトラベラーはラークという話とラークというタイムトラベラーはライアンさんを殺そうとしている。これが一致していれば、この話は真になるのではないですか。」


「ラークみっけ!」

そして僕たちが、見たラークは全くの別人の顔立ちをしていた