宵明けの碧空に -3- 手を振ってごらんよ

  







砂漠には砂がこれでもかと存在し、
そして、海底にも砂がひしめいている。
何故、これほどまでに砂が存在しているか、
砂の秘めたる潜在能力とは何か。

儂らが知っている土は水を蓄え、
土は、たくさんの栄養とお日さまエネルギーを一杯に持っているように見える。
塵も積もれば山となる。
山はエネルギーの塊かのう。

ほんじゃあ、ピラミッドって何なのかの。


まったくな、イワシ達の魚影を見るなり大騒ぎ。
こいつらは朝から晩まで、楽しゅうてしょうがないわい。

「なんじゃい、お前ら。イワシを見るのは初めてか。」
「違うんですよう、イワシさんの向こうには先代文明様が待ち構えているんですよう。」
「イワシの味噌煮は食わんのか。」
「た、食べますよう。」
「ほんじゃあ、怖くないじゃろ。」


しっかし、まぁ
折角だから、ちょっと脅かしてみるかい。

「けんどな、あのイワシは生きてんの。分かるかの。」
「やっぱり、先代文明様が見ているってことじゃないですか。」
「じゃあ、考えてみい。先代文明さんに手振ったらどうなんでい。」
「そうだね、イワシさんに手を振ったことになるね。」

なんじゃい、トロイアときたら甘いのう。

「イワシにしたらムッとくる話ね。」
「手を振ってきたと思ったら、後ろの人だったって奴よ。」
「それじゃあ、イワシさんに手を振りましょう。」
「それは、先代文明さんに失礼になるよね。」

「ほんじゃあ、目の前にいるイワシを相手にするのはどうなんでい。」
「ん、先代文明に気付かれてしまう。いや、良いのか。」
「目の前のイワシさんと話をするのですね。」
「そゆことよ、分かってんような。よそ見をしないことだあな。」

「あいさ、頑張るのです。」
ハントが潜望鏡に噛り付き、ライアンは何だか考えている。
ジラーはイワシと先代文明についてヒッポと語り合っている。

ぶくぶぶくぶく、気体が上方へと消えていく。
儚い、儚いこの時を全力で追い続けて行きたい。
しっかし、なんじゃあ、じれったいのう。
未だ宝さがしの「た」の字も無いなんてな。

どいつも宝さがしなんてしたこと、なーいんだろな。
そういや、おいらも滅多に地図は持たなかったな。
スコップだって持ちゃせんかったけどな。
海中ってことはよ、やっぱりロマンはピラミッドよ。

ってえことはよ、ほう。やるでないかい。
なんほどな、イワシの先に待つ先代文明様よ、
こっちをご覧あるってことよ。
待ってろ、今にこのロップ、
現代文明の代表となって誰より先に解明して見せるってんでい。


フィーン、ウィンウィン
フコココ、コココ、コココココ

「何だかでっかいな。」
「嫌ね、ツナグループなんて書いてあるわ。」
「なんじゃい、社長が嫌いなんか。」
「そうじゃないわよ、いつも大袈裟なの。全く。」

「何だか遠くに紫色が見えますよう。」
「え、嘘でしょ。協会が。なんで。」

「何じゃい、奇跡は解けたでの。特に怖いもんないじゃろ。」

ジラーが口を挟んできて
「違いますよ、ロップさん。協会が居るってことは、ルボータン王国も後ろにいるということです。」
「それはどうかな、ジラー君。悪い読みではないけどね。」
「そうね、奇跡が取り除かれたのよ、もし、協会が力を求めるのなら、新しいオーパーツがそこに関係しているってことよね。」

「ツナグループだけじゃないね、ルボータン王国のマークも書いてあるよ。」
「ちょっと、良く分からないな。危険海域にでも入ってしまったのか。」
「こいつは違うんでないかい、ルボータン王国の方が要注意でい。」
「そういうことよ。」

どうしたもんかな、こまったな。ほい。

「何かよく見ると、アカデメイのマークもある気がするんだけど。」
「これはこれはお揃いで、どうしたもんかな。」

「ジラー君、通信が来ている。解析を頼む。」
「はい、いま調整しているんですが、と、ふむ。」

「何だか、ルボータン王国からじゃないみたいです。」
「え、じゃあ何処からなの。」

「ん、なんじゃいジラー。どっからじゃい。」
「どうしたのよ。」

「ライアン、ちょっと良いか。此処から北北東、角度は上弦60度。何かいるか。」
「んー、イワシかもしれない。」
「ジラーちゃん間違ってるんじゃないの、ゆっくりでいいから。」
「いえ、ライアンさん。こんなときにとぼけないで下さい。私は分かってますからね。ふん。」

なんじゃい、さすがにあせったわ。
しかし、北北東、60度。イワシの群れが泳いでおったではないか。

「んー、そうだね。ジラー君合ってるね。じゃあ、根暗の姉さん。北北西に角度は上弦40度。」
「何よ、まったく。ん、イワシよ。どこ解析してんのよ。」

「ほんなら、イワシはなんて言っておるんじゃい。」
「えーと、SOSだ。エデュケスだよ。」

「え、エデュケスですか。」
「エデュケスからの緊急救難信号だ、このままだと、オーパーツが危ないって。」

「あの紫色は何をしているんです。」
「場所はここから北北東角度は下弦70度。とにかく急いで。」

「イワシがしゃべるわけないのですよう、先代文明ですかってんです。」
「ライアン、やけに静かだな。いつも以上じゃないか。」

「救難信号のある方へ急ぎましょう。エデュケスには助けてもらった覚えがあります。」
「ハントちゃん、定位置へ。ライアン、出力上げて頂戴。ジラー、通信とって。ヒッポ、見逃すんじゃないわよ。」
「それから、トロイア、操縦。じいちゃん、記録よろしくね。」


海中はゆらり、ゆらり、くらりくらりと。
オーパーツが海の中、古代文明がありそうな。
イワシに教えてもらった、先代文明の正体は何故かエデュケスで、

きっきき、かっかか、しそしそしそしそ
きっきき、かっかか、しそしそしそしそ

記録計が忙しなく動いて、
白い砂地が見えたら、きっとそこは海底ピラミッド。

またオーパーツかい、しっかし、何でこんなに困ってばかりいるんでい。