レム・レム -8- 希望のそよ風

  

「少年、今日はどうする。」
「キミドリ先生、働くとかしないの。」
「おじさんは科学者だ、仕事がないのは確かだがな。」
「急に老けたね。」
「そういうのよくないな。」

病院の前を歩いてキミドリ先生が若干、早足になる。

「病院は嫌なんですか。」
「お医者さんはスパイでもある、患者さんの相手をしながら国の動向を探っているのだよ。」
「へえ、そうなんだ。」

「寒気がするね。」
「そうだな少年、このなみなみシートを使え。」
「何これ。」
「これを使えば、風邪もシーショアさ。」

「どう使うの。」
「エアコンに差し込め。」
「風が悪くなるよ。」
「一緒さ。」

キミドリもここまでか、科学も、もう終わりなのだろうか。
何だか今日は曇り空だった。
少年は気付くだろうか、キミドリはエアコンに差し込んで欲しそうだった。

「これも魔法がかかってるの先生。」
「このホテルもスパイくさいが、まあいいだろう。」
えい。

「この建物にはミラクルが足りない。そういうことだ。」
「デジタルくさいね。」
「ジェットエンジンでも見に行くか少年。」

どこでも行くけど、あぶないのは嫌だよ。
この戦い何にもならないのもありか、少年はそう思っていた。

そしたらだった。
「少年、夢を見せるのは犯罪なんだ。」
「何それ。」
「私は本当に科学をしているんだ。」
「インチキですよ。」
「全く。」
「捕まりませんね、先生も。」