宵明けの紅空に -1- 戦争間近

  



四方が凍り付いた感覚、これが闘いか。
いや、僕は海底神殿で遭遇したインチキに似たものを感じていた。
青い炎がぼうぼうと燃えて、身を焦がしてゆく。
その中で冷静に僕らは聞かれたり答えたりしていた。

「こんなに揃っているのに。」
ルボータン王国皇帝は不思議そうな顔をした。

「儲かったな、しかし本当に潤ったわけではないのは何故だ。」
カブラークス王国のソロモン王が皮算用を繰り返す。

「何だ、戦争が止まったぞ。」
「寒いな、一言でも通ったら戦争が始まるぞ。」

「インチキなんてね、非道に比べたら何でもないのよ。」
「何言ってるんだハント、悪徳が悪行を招くんだろうよ。」
「ライアンさんは何にも分かっちゃないさ、みんなに相槌打ってるのは私が見てましたからね。」
「ハントは僕を使って戦争を止めたかったに過ぎないんじゃないか。本当のことを言ってみろ。」

「私たちの王様は戦争すらも切り札にするんですか。ライアンさんも言いますねえ。」
「たまには人のことも言うさ。」


戦争が止まってしまったように見えた。
それは良いことだった。

教会が何かをつぶやき始めた。
「神よ、文明社会の秩序を乱すあの者たちに罰を与えなくてはなりません。」
そう言って何かを握りしめている。

フィッシュ・ジェット3号が動き出したのだ。
「俺ね、分かるんだよね。こういうのが必要だって。」
そう言って安全コードをプチンと切ったのだった。

フィッシュ・ジェット3号は波をかき分けて飛んでいき、
障壁に飛び込んでいった。
パラシュートを開いて無事か、機体はエネルギーへと変わっていった。

それでも、戦局は変わらなかった。
戦争にはならなかったのである。
そうして、懸念が回ってきたのである。

「神が許したのでしょう。」
この一言が間違いだった。

ルボータン王国皇帝がやってくる、
「私も確かめながらだがいいかね、神が許さないではないのか。」
「何を言います、戦争などあってはいけません。」
「神のいる時代は終わりだ、私は戦争をする気はなかった。」
ルボータン王国皇帝が言った。
「戦争を予見するならともかく、画策するとは。」

街からも多くの人が捕まっていった。


「ハント、もう大丈夫だ。次の旅へ行こう。」
「そうだけどさ。」
「分かってください。」

「一旦、家に帰ろう。」
「大正解。」
「帰りますよ。」


僕らは帰り道ジュースを買った。
一気に飲んでパーっと帰ったのである。
何もない、ないよ。終わるんだよ。
教会の奇跡はね、終わったのさ。