宵明けの青空に -12- 魚の連絡網

  










暇だ、街外れの地はすることがない。
「暇だね。」
「暇だな。」

ジラーも暇らしいね。

「何をしようか。」
「いや、留守番の本質は待機さ、暇に耐えなくては。」

ジラーはさすがの優等生なんだけど、
留守番に耐えるとか止めようよ。

「適当な枝でも拾って、スプーンでも作るかな。」
「いいな、それ。」
「でも、ジラーは待機だよね。」
「俺にも拾ってきてくれよ。」

陽が傾き始めた頃だったかな、
スノーさんから貰ったカエルが鳴き出したのは。

「げハントさん、げハントさん、聞こえますか。」
「えーと、ハントならスノーさんのところでお手伝いだよ、こちらはヒッポです。」
「げアルバです。げもう、何から報告していいか。」

「今、何処なの。」
「げエデュケスにいます。」
「おお、エデュケスについたんだね。」

「げそこで、げお父さんと再会しました。」
「え、お父さんでジョンさんと。」

「げそうしたら、げライアンさんが教会と衝突してしまって。」
「ちょっと待って、ライアンは無事なの。」
「げ無事です。けど、ご飯が美味しくないって。」
「いや、まあそうだろうね。」

ご飯の話をしている場合じゃないだろうとは思ったけど、
後々、この話の深刻さが分かった僕らはスノーさんのところにお邪魔するのだった。



「ううう、外は寒いよ。」
「そうだな、何せ遮るものが少ないからな。陽が射さなくなると寒いこと寒いこと。」

区画2-Bが見えてきたので、ハントを呼んでみた。

「ハントー、用事だ。出てこいー。」
「ライアンから連絡だよー、ハントー。」

ガチャリ
暫くして、ハントが出てきて。

「お留守番ありがとうございます、ライアンさんはご無事ですか。」
「いや、それが。」
「ご飯が美味しくないらしい。」

「ライアンさんはグルメでしたっけ。」
ハントが分かっていない。めずらしいこともあったもんだね。
「違うんだハント、教会のせいなんだ。」

「まさか。」
「困ったことだ、ライアンは何を食べても味がしないらしい。」

ハントが悩んで言ってた。
「どうしたもんでしょう。」
「悪い知らせばかりではないんだ、アルバがジョンさんと会えたらしい。」

僕らは知ることのできた有りっ丈をハントにも話した。
扉が薄く開いてスノーさんが心配しているのも何となく気が付いていたんだけど。

「そうだったのですか、こちらも色々とスノーさんのお手伝いをしてたくさんのことを教わりましたよ。」
そのときだったね。

ズイーン、ズイーン、ズイーン、ズイーン
物凄く大きな音がした。
トロイアさんが物凄い速さで駆け付けてきて言ったんだ。

「、、、を飛んで行かないのかい。」
「な、なんですか。」
「、と、が手を組んだんだよ。、はもう、なんかそっちのけになるに決まってるよ。」
「僕たちは、から逃げる、をしてあるから、早く。後のことは、、で話そう。」

ハントが焦って言った。
「ええと、錬金術師の皆さんは、マシンで海から逃げるそうです。」
「私たちは空を飛んでいきましょう。つまり、協会が迫っているんですよう。」

「え、まずいね。」
「ほら、もう行きますよ。」


スノーさんとトロイアさんとのお別れも早々に済ませて僕らは魚に飛んで入ったのだった。


ハントが合図を出してくれる。
僕はマッチを擦ってシリンダーに落とした。

スコン

2番のシリンダーにふたをしてっと、

ズコン
ズキュ、ズキュキュ
ガカガカ、ガカガカ、
ガカ、ガラン

ギュキャキャキャキャ、ガロガン
ズギャキャキャキャキャキャ、ガロガン

ズキュルドュルグン

ガシコンック、ガシコンック
ガシコンック、ガシコンック

上手く動いたので

笛を吹き、機関室の鐘を4回鳴らす。
ピィー
ガンガンガンガン


ハントが飛び乗ってきた。
「あいさ、浮き上がりましたよ、操縦室で話しましょう。」
僕はヒーターのチェックをしてから、操縦室へ向かったんだ。


それからは大変だった、何せ情報が多かったのである。
僕らは情報整理に忙しかった。


僕らが聞いた話はこうだったな。
ロップじいちゃんはアルバのひいおじいちゃんらしく、
パロじいちゃんがビットひいおばあちゃんに言付けを地上まで頼まれていたのだった。
その言付けは、ロップじいちゃんは鳥の夢を叶えに月へ行った、とのことで。

そして、エデュケスでラーク先生からオーパーツを受け取り、
神ノ木への行き方を教わった帰りに、
ライアンが教会から攻撃を受けたとのことなんだ。


ハントはスノーさんたちと何をしていたかと言えば、
アカデメイと錬金術師達の一部は密かに繋がっていて、
既に逃げる準備をしていたとのことでのその手伝いをしていたのだった。



「じゃあ、僕らは何処へ行こうか。」
「勿論、月ですね。決まってるじゃないですか。」

「どういうこと、何で月なのさ。」
「ヒッポ、トロイアさんの話覚えてるか。」
「うん、誰かが何かをぶっ壊しに行った話でしょ。」
「そうですそうです、それですよ。」
「ロップじいちゃんの話に似ていないか。」
「帰ってこなかった話だね、そうか。」

「まさか、ロップじいちゃんが錬金術師たちの為に月に何かをぶっ壊しに行ったって言うの。」
「何で月なのさ。」
「そこなのですよ。私がかくれんぼするなら、月の裏に隠れます。それくらい見つかりにくいのですよ。」

「それだけじゃないぞ、教会の奇跡というのは技術で解明できない事ばかりだ。」
「それじゃ教会の奇跡との関係は見いだせないんじゃないの。」
「ロップじいちゃんが飛んで行ったのはいつ頃だか覚えているかヒッポ。」
「少なくとも僕らが生まれるより前だよ。」

「そうだ、さっきのカエル連絡で時計塔が経つより前だと聞いただろう。」
「じゃあ、この街に大きな時計ができるより前ってこと。」
「そうさ。つまり、教会の奇跡の鍵はオーパーツが握っている。」

「ちょっと待ってよ、それじゃ僕らよりずっと進んだ古代文明があって。それを教会がたまたま見つけたって話なの。」
「そうじゃないですかね、そして王国に取り入って錬金術師から技術を搾取してはその進捗を調査している。そう思えてならないのですよ。」

「でもハント、待て。まず。エデュケスに行こうか。」
「ジョンさんたちの魚はルボータン王国の海にあるって言ってたね。」
「なるほど、乗れないじゃないですか。」
「私たちの出番という訳ですね。」


眠りから覚めた魚は、月を見上げていた。
月とこの地球を渡すには、
何万年分の文明という距離がある。
何万年分の文明が何十万年分の文明に挑む。
僕らの目は輝いていた。