宵明けの大空に -15- ルボータン王国の本当

  




教会の扉を開くと、中には色んな人がいた。

「ライアン君、よく来たね。」

ジョンさんが上機嫌で出迎えてくれる。


「はい。」

僕は招聘状を胸に緊張しながらジョンさんの後へ付いていった。

奥には祭壇、手前には階段。

海底神殿で出くわした、ルボータン王国皇帝らしき人が僕を見ないで言うのだった。

遠い目をして言うのだった。

「ライアン君、君はルボータン王国を舐めていないかな。」

「いえ、そんなことはないです。」

なんか、ジラーみたいな答え方。

ハントもいてまじまじとこちらを見ている。


ルボータン王国皇帝が取り出したのはステッキだった。

「見てごらん、鳩が出るから。」

呆れたように皇帝が言う。
そして一振り。

ワハハ、ロホホ

バサバサ

鳩が出てきたのだった。

僕はぎょっとしなかった、そういうものなのだろう。
そう思うからだ。

「だから、言っているのだよ。君は舐めていると。ほい。」

皇帝が飴玉をプレゼントしてくれた。
りんご味だ。

「食べなさい。」

分からないけど僕はそれを頬張った。


皇帝はステッキを僕に向けて、

「君がどれだけ頑張ったか分かるかい、ったく。えい。」


僕の左側面、左顔が風に巻き込まれた。

バハハ、ロホホ


僕はぎょっとした。

多分、髪の一本がカラスへと変わったのだ。


「ルボータン王国は宇宙とも一体だよ、君はどうして呼ばれたのか分かったね。」

「む。」

「鈍い。その子を送って差し上げなさい。」


紫の服を着た騎士が集まってきた。

だがやっぱり分からない。



「待て、その子は鈍い。」



スチャリキ



騎士が止まり、教会が静まり返った。



「君の必要は、みんなの必要と変わりない。」

「それは。当たり前でありながら、奇跡でしかないんだ。"おめでとう"という言葉で表現するつもりはない。」

「よく頑張ったね、これからも励むようにして下さい。」

「分かっているね、頑張るんだよ。」

「もう、頼りないな。」



僕は分かった、頑張ればよいのだ。
でも何か。これで休んでいい気がした。


ジョンさんがニコついている。

「空の民は宇宙と地上の間に生きています、頑張りましょう。私たちもいます。」


何か休んじゃいけない気がする、心からお祈りされている。
困った、お供え物の気分だ。



「エル・ロップ殿、こちらに。」

「分かります。」


「ライアン君、君が気を付けて帰るんだよ。」

「帰っても、気をしっかりね。」



ジョンさんが扉を閉めた。
何か騙された気がする、何か気になる。
何か変だ。
でも、帰ろう。そう思ったのだった。

ハントが耳打ちする。
「ライアンさん、旅って何処行くのですか。」

僕は背中がぞっとした。