宵明けの天空に -5- 何でも屋

  




空を泳ぐ魚、天を駆ける象。
しらしらと薄い雲がようやく流れ切ったころ。
何か方法はないのですかと言っていたハントが黙りこくっていた。
フィッシュ・ジェットは向こう側から黒い雲がやってくるのを見つめていた。
鏡の中にも似た神ノ木で僕らは考えあぐねていた。

「ライアンさん、ちょっと話を聞いてください。」

ハントが手のひらをひらひらさせている。

「分かりますか、あの星が。」

ぐーにした手の中を覗けとでも言うのだろうか。向きを絞ってくれた。

「あの星は動かないんです、北極星です。」
「今から、ハント最大の発見を伝えますから聞いてくださいね。」
「実は何か周っているんです、北極星が動いたのですよ。」

「どれなんだろうか、僕には遠くて見えないぞ。」
「私は目が良いのです。」
「星が動いたなんてロップじいちゃんの話でも聞いているのかと思ったぜ。」

ジラーが来てくれた。

「ちょうどいい、そこでですね。あの星を月の破壊された装置から隠したいのですよ。」

「そんなの地球に帰ってから出来っこないだろ。」
「どうするんだ、そんなの。」

「その星の実を制御できませんか。」
「アカデメイの力が無ければエネルギービイムは受けられないだろうよ。」

何だか、ジョンさんが近づいてくる。

「やりますか。」

僕は困惑していた。
風がひゅるりと胸をくすねて行った、嫉妬なのだろうか。
燻ぶった煙がフィッシュ・ジェットから出ている、連戦続きで、ボロボロになってきた。
僕はまた、飲み込んだ。

「やってみるか。」

ハッチさんが首を叩いて言う。

「そんなもんかね、それよりも美しい処だなここは。」
木の根の間に注目している。

「ここはどうやって浮かんでいるんだか。」

ヒッポも来た。
「その星の実はエネルギービイムの干渉を受けないんじゃなかったっけ。」

その通りだった。

「飛ぶしかないようだな。」
ジラーが覚悟を決め始めた、こうなるとこの魚は手が付けられない。

いや、しかし程度を越しているのだった。

「私も地上へ向かわないと。」

「お前ら死んじゃうかもしれないんだぞ。僕はもう十分だよ。」

驚いてジラーが言う。
「分かっているよ、奇跡だっていうんだろう。そう何度も起きないよな。」
すかさずハントも言う。
「そうですよ、おかしいですか。」
それからヒッポが言うのだった
「おかしくないよね、ライアン。」

顔が見えてないのだろうか、眼鏡を拭いて答えた。
「そうだな、おかしくないよな。うふふ、あはは、いやー参ったな。いや駄目だろう。」

「ほら、行きますよ。」
ハントが横から顔を出した。


何でも何度も確かめるのだった。涼しい顔で北極星と言ったハントの移り身。
これでフィッシュ・ジェットが動かなくなったら、死んじゃうんだぞ。
僕は泣きそうだった。

自分は今、ようやく自分は自分のままで良いと思えたのであった。

神ノ木の夜。
星空を見上げ、僕はふと思うのだった。
「あんなに周ったら星になってしまうぞ。」