宵明けの上空に -9- ミックスソフト

  



散々、雨が降って。
ぬかるんだ道を避けては歩く。
巨大なもくろみはちょっとした綻びのことだったのだと思う。
しかし、それでも説明がつかない話に私は興味があるのだ。



ルボータン王国事務教会担当様へ
行政執行役員ハッチ・アゥストラダ・ワンより

お祈り用アミュレットの飾り、18万個の件、領収署の発行があります。
しかし、受注から7年経っており、不審です。
受注元である装飾職人には代理人がおり、お金の受け渡しは完了しましたが、
本案件、詳細お聞かせください。

王国への文句など一生書くことないと思っていた。
まさかね、私が自己犠牲なんて払うわけないのにね。

けれど、これから私が行くところは特別だ。

「ライアン君、ライアン君はいるかね。」
「はい。」

「私をカブラークス王国へ連れて行って欲しい。」


ガレージに冷房の音が響く。

「フィッシュ・ジェットに乗りたいのですか。」
「そうだよ。」

ハントがむくりと起きて言う。
「ハッチさんも寝ていた方が良いのではないですか。」

「そうはいかない。几帳面なものでね。」

ジラーも言う、
「カブラークス王国の方が危険かもしれませんよ。」

「それも違うんだ、ルボータン王国から始まったからだ。」
「ソロモン王に会いに行くんだよ。」

ハントが仰け反る。
「本物のキチガイじゃないですか、何ですかあなたはソロモン王の友達なんですか。」

「子供じゃないんだ、説明させてもらう。」
「アカデメイから学生にお触れが出た、この時点で君たちは捕まっていなくてはいけないはずだ。」

「その件ならライアンさんが受賞して終わったじゃないですか。」
「君たちをどうしても捕まえたかったのは教会も王国もアカデメイも学生もなんだよ。」

「何の話です。」

訝しいよね。冷房が寒く感じるくらいに寒い話だろうね。

「その時点で捕まっていたらならば処刑されていたんでしょうな。」

「酷い。逃げて正解だったのですね。」
「そこでだ、金が狂った。一つ私に付き合ってもらおう。」

「何でよ。」
「君たちが逃げたから、追いかけた。追いかけるにはお金がいる。そこに不正なお金が追加されてしまったんだ。」

「私たちのせいなのですね。」
「まあね。追加された不正なお金は先生方のポケットマネーと一緒にされて溶けちまったんだな。」

「アカデメイの先生方はカブラークス王国全土を雇っているとは知らず。」
「カブラークス王国はルボータン王国国民からの指示なんて思わないだろうね。」

「そのことを伝えに行くのさ。止めないでくれたまえ。」
「景気が良いのはカブラークス王国のヤクザを雇ったからという意味ですか。」

「ヤクザにありったけ積みかけたルボータンマネーが、何故かアカデメイの先生方のあがりになるけどお金じゃないとか。」

「お祈り用アミュレットのお金が怪しいってお金じゃないってことですか、そんなの確認要りませんって。」

「そうそう、この話は君たち次第さ。だからフィッシュ・ジェットに乗せてよ。」
「ライアンさん、絶対カブラークス王国には行っちゃだめですよ。」
「行かない訳にもいかないだろうよ。」


何も白黒じゃなくて、灰色とかでもなくて、
遊びを入れる、
大人のつつましさよ。
現実は言った人が損じゃないか、君たちは青いな。