宵明けの上空に -5- 魔法使いの夢

  






「無理しなくて良いのですよ、ライアンさん。」
「そうだな、無理をしなくていいんじゃないか。」


ジラーとハントが無理をしなくていいと一生懸命に聞こえる。


ハントが肩をポチポチ8回叩く。

「8回は飯のできた合図だからな。」

ジラーの声がした。
悲しげなハントの顔が見える。

「無理しなくて良いのですよ、ライアンさん。」
「そうだな、無理をしなくていいんじゃないか。」

そう言って3人でご飯を囲むことにした。

どうするんだろう。僕が一番鈍いのかな。
4回テーブルをコンコンと叩いてみた。

「発進はないですね。」
ジラーもうなずいている。

ただ、またハントが8回僕の肩を叩くのだった。

「8回は飯のできた合図だからな。」
ジラーの声がする。

ジラーは悲しそうなハントを肩車した。
「いぇーい、ライアン。教会の奇跡を追い詰めたぞ。分かるか、この悲しみ。」
「そうですよ、ライアンさん。」

また、8回肩をハントが叩く。

「8回は飯のできた合図だからな。」
ジラーの声がする。

「じゃないと分からなくなっちゃったのが君だ。」
「そうですよ、ライアンさん。色々通じるんですけどね。」
「このまま教会の奇跡をほおっておくと、大変なことになるぜ。」
「どうします。」

「どうするんだ、ライアン。」

ジラーとハントがにやにやしている。

「犯人を捜すの。やだ。」

「おっけーい、やだー。」
「それでいいのですよ、さすがライアンさんですね。」

僕らは僕ら、何かそれで良い気がした。


「ライアンさん、次は何処へ旅に行くのです。」
「そうだね、カブラークス王国へご馳走を食べに行こうか。」
ジラーが僕の真似をして言う。

「何しょげているんですか。」

また8回肩を叩かれる。
「8回は飯のできた合図だからな。」
またジラーの声がする。

「たったこれだけですよう。」

「本当にシビアでイージーなシビアだよな。」




僕はほっとした。
しかし、ぶっ壊れたのだ。
冒険は嫌だなと思う。
でも、旅行の予定しか言わない2人に秘密があった。


1505年あの彼の見た魚の夢の先に、魔法使いの夢があると。
つけが回るのが早すぎる。

魔法世界ってそうなのね。