宵明けの天空に -11- 魔法の杖

  




教会は神様にたどり着こうとしていた。
神の姿を借りて王国を治めるはずだった教会が、科学技術に基づいた信仰による新興宗教に食い破られたのである。

それは侵略だという。
神様という存在にたどり着いた科学、それが意味するところはカブラークス王国の侵略だった。
もしルボータン王国の科学技術がそれを説明しているのならば、神様はもっと不思議な存在でないと国を守れないだろう。
僕らの神様が分析されてしまったのだ。


「街の人は逃げなくてよいのでしょうか、しかし大声を上げるのも変ですね。」
「皇帝陛下の言うことは当たりみたいだな。」
「まさかルボータン王国が滅びるなんてな、信じられないよ。」
「ルボータン王国とカブラークス王国の関係しか見てないけどな。」

「ジラー、神様が科学技術で説明できるってどういう意味なんだろう。」
「それって良いとか悪いとかの道徳心が科学技術で説明できるってことだろうさ。」

「神様はルボータン王国製の防御技術か。」
「そんなのあるんですかね。」
「神様を探そうって言いだしたのはハントだぞ。」


心行くままに、健全なる精神を信じていた。
しかし、自然科学の追究は、王国の滅亡と関係があるのだろうか。

「ライアン、ルボータン王国がないな。」
「こころが滅びたのか。」
「これが、自然科学の追究が行き過ぎた結果なのでしょうか。」
「それはしょい込んだな、何処まで作ったんだかね。何て言っても無いから困るんだろう。」

「あったら、困るのではないですか。」
「ないから困るんだろう、いい人悪い人はあるにしてもね。」
「ライアン、あったら困るって何。」
「それは敵の発想かもね。」


もし神様が居たらどうするんだ。
教会は僕らを守っていたにも関わらずだ。
力を持たない僕らが文句を言っていた。
教会の奇跡は信じてはいけない、相対の逆発想だったのだ。