宵明けの天空に -15- 教会の不正

  




海にはでっかく作り直された、真新しいフィッシュ・ジェットが5隻並んでいた。
その向こう岸には大きな船だか何だかが10隻はあるらしい。
ついにカブラークス王国を怒らせたのだろうか、町に分かるような警戒は初めてだった。

「錬金術師ってのは何だ、カブラークスからもルボータンからも嫌われるのか。」
「そう怒るなよ、忌まわしい存在と聞いて長い。アカデメイがその扉を開いたのはつい最近だ。」

魚2つ分はありそうな、黒い象が飛んで行く。

「コクリュウ1号よりカブラークス王国に連絡申す、教会の奇跡はカブラークス王国の技術と考えられる。」
「侵略をやめろ、いまから撃つ。」

兎の主砲がコクリュウ1号でカウントを始める。

ピロプロパロ ピロプロパロ
ドン ゴトン

ピロプロパロ ピロプロパロ
ドン ゴトン


僕らは目を丸くした、月で見た障壁を2枚破ったのだ。
続けてロップじいちゃんの声がする。

「海底神殿はカブラークス王国の文明で、ありますか。違うんよなあ。分かるかいね。」
「掘りおこした我々が悪い、なんほどな。分かりましょうかいな。」


フォーン ウウ

「カブラークス王国から、ソロモン王と申す。貴公の勘違いだ。」
「そのありきし文明は滅びた文明である、違うのか答えろ。」

ロップじいちゃんの嫌そうな声が聞こえた。
「率直に申し上げんよう、どこの文明ですかねい。」

「その話、ルボータン王国皇帝から聞いている、新興宗教と受けている。」

ルボータン王国皇帝が割り込む。
「そういうことだ、ロップ。答えはルボータンには神がいる。」
「カブラークス王国、改めて問う。新興宗教を使った静かな侵略ではないかと考えている。」


フィッシュ・ジェットのうち一隻から声がする。
「ラークと言う、待ちなさい陛下。新興宗教と教会の奇跡は別の話だよ。」

「教会の奇跡とは錬金術師の契約に伴うもんで、障壁の発祥ではないという話なら、分かるんけどな。」
「一連の騒動は新興宗教によるものだ。」

ロップじいちゃんからため息が漏れる。
「新興宗教にあの障壁が作れるというのかい、なんねん錬金術師じゃなくて誰よう。そこで待っとれよ。」

そのときだった。あひるとかえるが鳴り出したのである。
「ぐライアン聞こえるかい、お前言ってくれな。出番でい。」
「ぐアカデメイの言う教会の奇跡は茶番でしかない。大体、神が居たら困るのは教会なのだろう。」
「やめたまえ、ライアン君なんか関係ないよ。」

「それは新興宗教だ。神がいるのは教会だ、間違えてはいけない。」
「ぐ王国が神の存在によって治める話は、神が居たら困る教会の存在によって崩れるのですよ。」

「ルボータン王国のせいだというのか。」
「ぐしかし、アカデメイの言う教会の奇跡は茶番だと言いました。」

「何が言いたいんだ。」
「ぐ侵略の話には思い当たりがあります、彼らが悪いのです。」
「遅い。」
「ぐ絶対犯罪です、教会の奇跡とは彼らの茶番であり、その一端に過ぎません。」
「ルボータン王国のせいとは思えないが。」

「ぐ教会とて例外ではありません。」
「カブラークス王国は障壁を持っているが違うのか。どうするんだそんなの。」

「滅びた文明だよ。」
「どうなってるんだ。」


シーピーリン ジジジ

「ぐ、また通信がおかしいな。」
「何がおかしいんだ、答えは何だ。」

「ライアン君、分かったよ。」
ルボータン王国皇帝が言った。

右に左に人がすっ飛んでくる。

「ぐライアンさん、分かってますか。」
「ぐお別れだなライアン。」

「ぐ何でお前らがお別れなんだ。」


何かミサイルでも飛んできそうだ。
空も街も何ともない、ただただみんなの後片付けが大変なのだろう。
今にも死にそうな王国で元に戻れる話があるだろうか。
自分の心配をうまくできないのは空飛ぶ冒険以来だった。