宵明けの天空に -4- 決戦、ルボータン王国

  




「象を確認しました。」
ハントが言う。

「先回りするんだ。」
僕は不可能を言った。

ハントが不快そうにこちらを見る。
「無理です。」

ロップじいちゃんの説が正しかった。
しかし、海底神殿にもあるとは、藪をつついて蛇を出したのと変わらなかった。
しかもご丁寧に持ち帰ってきたのだ。

カブラークス王国がまとまる理由は教会にあったのだ。
ではルボータン王国は無防備なのかといえば、ルボータン王国はお金が綺麗なのだった。
ルボータン王国は神と王様のいる国である。
科学研究者は神秘的なものと向き合い暮らす。

神はみんなの心に居て、善悪の基準となったのだ。
それをルボータン王国皇帝の名において執行して、不幸せはなかったのである。

だが、カブラークス王国は違う、科学を重んじることで神様を否定し、
善悪の判断を科学に委ねたのである。
法律が善悪の全てを握っているといっても良かったのである。

ルボータン王国における異端はカブラークス王国が弾く、
カブラークス王国ではルボータン王国のように監視された生活はない。
だがルボータン王国の生活はカブラークス王国の法律と言ってよかった。

僕らは異端だった。
ルボータン王国がカブラークス王国に預けたのだ。
問題は民衆の心だった。
異端を指さすものがあれば、アカデメイがそれを上回ろうとする。
王国であれば更にその先を行こうとする。

絶対安全の国において、最先端科学は物を言っているのだった。
最先端科学はルボータン王国においてそれを越えるものはなく、
カブラークス王国においては監視の対象だったのだ。

教会の奇跡とは茶番であり、煙たいと言っている、そういう事だったのだ。

フィッシュ・ジェットは象を追いかけていた。
「ナンダ、ツイテクルノカ。」

象からでっかい声がする、

「ライアン、いくよ。」
ピコン

象にビームライトを照射した。
「マアイイ。」
「最大出力照射。」

「しっかし、何が分かったんだろうね。あの坊主。教会と王国の関係くらい、アカデメイで習わないのかい。」

全ルボータンが嫌な顔をした。

「よし、ヒッポ。帰ろう。」
「帰るの。」
「茶番だったんだよ。」

「随分と調子がいいじゃありませんかライアンさん。」
ハントが嚙みついてきた。

「一緒に調子に乗って楽しかったな。」
「ライアンブルーじゃない方法で何とかしましょうって、ずっと言っているのに。」
「そうだぜライアン、聞かなきゃわからないのかよ。」
「分からないじゃないか。」
「異端だな。」


「高度7300、23000、57000、あー言っているのに。」
僕らは神ノ木に吸い込まれた。

神ノ木の根っこに刺さるのは2回目だ、めずらしいことなのだろう。
「また死んだのですか。」
「訳がないだろうよ。」
「ヒッポは初めてか。」
「やさぐれたライアンがみっともないよ。」

ジョンさんが飛んできた。
「今度は何を作ったんですか、ルボータン王国も甘くないでしょう。」
「どうやって帰りましょう。」

「今度はその魚を修理して帰ってくださいね。」

首飾りの光る玉がうずいていた。
ロップじいちゃんがどんな思いで神之木に来ていたかと思うと、
自分の心配が先だなと思ったのだった。


「ハント、この先どこ行きたいんだ。」
「ライアンさんの思う通りでいいですよう。」

「じゃあ、老け込むんじゃないぞ」



魚が刺さってるかと思えば、ちゃんとあった。
何か良く出来てる。
いつまでに何をどうしたら。
みんなの演技が光っていた。