宵明けの大空に -1- 海底神殿からの脱出

  




ど、どうしましょう。
ライアンさんがライアンさんじゃないなんて。

「ハント。1人だけ助かろうなんて、甘いんじゃない。」
「な、何を言うのです。ヒッポさん」

「ぐどうしたの、ハント。」
「ぐうう、ヒッポさんの偽物がいるのですよ。」
「ぐそんな気がするね。」
「ぐライアンだ、人体に作用する以上技術じゃないかな。」
「ぐそりゃそうなのだろうけど、みんなどこにいるんだ。」
「げジラー君正しいよ、みんなは何処にいるのか。その考えは正しい。けれどその根本を探ると、これは誰か相手が作り出した、何らかの技術なんだ。違うかな。」

なるほどと言えます。
ということは、何か装置が有るのだろう、きっと。
私は、気付くことができた。

海底神殿はずっとずっと冷えていた。
青い影を残す柱を背にして、偽物と思わしきラークさんがこう続ける。

「君たち帰らなくて良いのかい。」

「ぐライアンさん、あれラークさんですよ。」
「ぐどういうことだハント。」

私は自分の耳を引っ張る。
「ぐライアンさん、こっちはほとんど偽者です。ラークさんじゃないです。」
「ぐ何だ、根拠はどうして。」

「ぐライアンさん、勇気を出して言いますから、こころして聴いてくださいね。
ラークさんは悪い人じゃないですか、きっと。ライアンさんなら信じてくれるかもしれない、見透かされていたのですよ。「自分で考えなさい」の悪用ですよ、これは。」
「ぐハント、何時になく強気だな。何か分からないでもないというか僕の弱いところをついたという話だけれど。」
「ぐおいおいライアン、みんな泣くぞ。」
「げラークさんが悪い人ってことはどうなるのよ、考えたことあるの。一切考えられていないんじゃないの。」

「ぐライアンさん、「嘘」って知っていますか。ラークさんが「嘘」をついている。これ、気付きたくありませんか。」
「ぐそりゃ、あれがラーク先生だとしたら困るよ。嘘をつく様な人じゃない。」
「ぐだからって、ラーク先生じゃないというのか。」
「げ流石にそれは無理があると思うよ。」

「ぐしかしだな、そうするとみんなも引っ掻けたのではないか。」
「ぐライアンさん、レベル落とした会話止めてください。私たちも嘘をつく事がある、それだけです。」
「ぐハント、レベル落とした会話ありがとう。けれど、僕も嘘をつく事がある。」
「ぐライアン、それは嘘じゃないか。見てみろ、喧嘩するなって誰1人言わないじゃないか。ん、んんっ。」

「げそれよ。」
「げそれだ。ライアン君、羨ましいくらいに疑わない。一緒。気にしなくていいの。」
「ぐえ。」

「げなんほどな、ヒッポ何かあるだろうに、言ってみい。」
「ぐん、ん、ん、ライアンらしくないよそんなの、全部疑って悩んでこそライアンじゃない。」

ライアンさんが少しポカーンとしている。
「ぐ実は悩んだ結果がある。あれは悪意だ。」
「「ぐげ全く、馬鹿たれ。」」

「ぐじゃあ、気付いたってんですか。ラークさんの嘘に。」
「ぐああ、何がなんでも僕らが悪いとか、とかく、あなたはこうしなければならないとか。私のために我慢してくれるね、とか、ちょっと待っていてとか。
ぐこれを突破するから、愛になったんだとかっていう話か。」

ラークさんが続けている。
「待ちたまえ、国が滅びても良いのか。」

「ぐそうですよ、分かりますかライアンさん。それを言わずに私たちが我慢してきたのは、ラークがそんなの絶対分からない、証明できないと息巻いてるからなんですよ。」
「げ全く、勝ちなさいよ。」

ラークが鼻で笑った、
「ふっ。」

ライアンさんが鼻息を荒くして言った。
「ぐ装置は何処にある。」
「ないよ。」
「ぐじゃあこの通信はなんだ。」
「ライアン君、君のせいじゃないのかい。」
「ぐライアン、何を言っているんだ。」
「ぐあんた、なにも知らないんだろ。」
「知らないよ。」

「ぐまあ、僕の人生が証拠なんだけど。」
ライアンさんが冷静になって、私も冷静になった。

そして、ライアンさんが現れたのです。
「やあハント、出来たよ。」
「ライアンさん、何ですかそれ。」
「うん、これはな、嘘を見破る装置とでも言っておこうか。効果は後で分かる。」
「ん、そんなの自分で見破らないでどうするのです。」
「頭が固いなハント、僕もずっと引っ掛っていたんだがね。まあ、これのお陰で話せるよ。」

「やい、ラーク先生だかなんだか。」
「止めなさい。」
「あれ、皆さん。しかも、ラークさん。」
「ハント、答え。」
「気に入らないですね。」
「早く逃げるぞ、相手は悪意があるんだ、
僕らに喧嘩を売らせるのも目的だよ。」


こうして、私たちは海底神殿を脱出したのでした。
なんだかな。

ただ、良く考えると、分かったのです。