宵明けの青空に2 -8- 平和への祈り

  



爛々と輝く街を抜けて、どよどよとコンサートシティが揺れている。
若干、興奮しているのかな、こらえ息が口から漏れる。
「マジカル・プリンセスのステージが始まりますね。」
「まだ1時間はあるだろうな。」
僕はステージ脇のモニターに目をやると、

「こんにちはー、チームオリエントです。」
「僕らは世界の平和にスマッシュ、します。」
「例えば、今日はフライバードでスマッシュだちょーん。」
「空は鳥が飛ぶから美しいのさ、グレイチーズ。」

「寒い。」
「僕らの偽物だね。」
「何やってるんです、ライアンさん。今日は緑なんか着てこないでくださいって言ったでしょう。」
麗しの姫たちはまだ出てこない、
嫌な予感は続く。

照明がいったん落ちて、瞬いた。
「やあ、こんにちは。」
「世界の平和にスマッシュ、チームオリエントのナイヤンです。」
「みんなもスマッシュしよう。」

会場はどよめいている。
ステージにはまだ姿はない。
「もしかして、ナイヤンさんの本物ですか。」
「違います。」
「お隣良いですか。」

「「どうぞ。」」

「平和にスマッシュなんて駄目ですよ。」
僕は平和を祈る構えをしていた。
「儲かると思いますか、僕たち。世界を平和にできますか。」
「え。」
「僕たちお金出してやってます。」
よく見ると、チームオリエントの3人だった。

「何で平和にしないのさ。」
「君たちの平和への祈りが甘いからだ。」
「スマッシュなんて、駄目だろうよ。」
「君たちの良いところはよく研究しているよ。」

「君たちこそ平和にスマッシュしたように見えるけど。」
「そんなことないよ。」
「妙な殊勝を入れるな、私にはそう見えた。」
「僕らを消すことないだろう。」
「それはそうさ、マジカル・プリンセスだってそうなんだよ。」

パーン 会場にギターが響く。
「またね。」

チームオリエントは帰っていった。
ハントは泣いていた。
「何ですかあいつ、何が分かるんですか。」

疑わしいなんてなかったが、気に食わないと言われているのが分かった。
異端なのはこの街では僕らだった。