宵明けの大空に -9- 新しい春の風

  







ちょっとした階段の先に、平らな渡り廊下があった。
直ぐさま下りの階段を降りると、
そこは元の位置から3mも離れては居なかった。

なんじゃそりゃ。
脚立とでも言うのだろうか、巨大な脚立。
しかも、固定されていて取り外せないという。

なんやねんこれ。
人工物の中でも類を見ない、特別意味を成さない仕様。

もしかして、これがアートなのではないだろうか。
いや、使おうとすれば使えるでしょうけど。

近くにある見出し看板にはこう書いてある。
「この橋は隣の国との橋渡し、友好の証として建てられましたとある。」

なるほど、隣の国との橋渡しだったのか。
ああ、何で歩いて越えられる国境に橋をかけたのだろうか。

よくよく見ると、手すりにえぐり傷の様な、
塗装の窪んだちょいと仕組みを拗らせたような跡が付いている。

「手が込んでんな。」

辺りはまるで春に彩られた野原だった。

「全く商売にならない話だ。」

木陰で休みつつ、発注伝票の済を振り返る。

「敵が勝ってちゃしょうがないじゃないの。」

静かさにムカつくことはない、しかし、やられはやられである。

「ルボータンの見逃しかい、絶対あっては困んのよ。こっちは国で食ってんのよ。」

発注伝票には、こう書いてある。
「お祈り用アミュレットの飾り、18万個」

そして、済が付いていない。
「遅すぎる。買いが悪い。」

分かるか、諸君。
ハッチ・アゥストラダ・ワン 私はお金にならないよ。

ったく、この看板も大きさが国で定めた寸法と違うから発注なんだ。
そろそろ取りに行ってあげようか。
取りにいかないと、無くなっちゃうもんね。



新しい春風が吹いた、準備不足ではご飯も喉につかえる。
人々は人々に取り付いてはゴミと変わらず。
道理ですよ、道理。
私が人々に取り付いて離れないのは、弁えが肝心だからなのですよ。