宵明けの青空に2 -3- コンサートシティ

  





「すごい、すごーい。」

ハントは両手放しで大喜びだ。
夜空のいっぱいに声が拡がって、その瞬きに僕らは揺れていた。

「ライアン、あれじゃないか。」
ジラーが巨大なタワーを指さす。
何気ない全てに見とれていた。
美しいと確信ある輝きと僕らは勝負していた。、

「これだよこれ、こいつが何だか変なのさ。」
タワーの足元を小突いてはジラーはもたれかかっている。
「番組ってのはプログラムって云うんだよな、答えは歌が巧いせいなんだぜ。」
何かが分かってる口ぶりのジラーが頼もしかった。

「音が外れていたら問題はないのだろうか。」
「そりゃそうだろうな。」
「じゃあ、あのそわそわしている子とか怪しいんじゃないか。」
「それなら俺らで歌ってみようぜ。」

どうするんだ、いつになくジラーは最先端だ。
「音痴が歌ってたら、避けられちゃいますね。」
「分かってないな、あの子を変える心はないのか。」
「そういう心が大事なのか。」

何だか分かった気がする。
「なあ、ジラー。上手けりゃいいのか。」
「何言ってるんだライアン、音楽は熱い心だろ。」
「上手い心ってオチでもつけるんですか。」

僕らは顔を見合わせた。
ジラーが笑って言う。
「上手い心っていうのは、うまいと言わせる心なんだぜ。」
「ほう。」
「なるほど。」

僕は何を言ったのだろうか、もしかしてそういうことなのか。
「じゃあ、研究者が悪いのか。」
「あの子を救うためには下手に歌えばいいんですか。」
「いや、上手く歌えばいいのさ。」


街は小さく笑っていた、僕らは試されているようだった。
暗がりが少し寒くなってきた。
未だにピカピカしている街で、僕らはうたを始めようとしていた。
上手い下手だという新しい試みだった。