宵明けの大空に -8- アカデメイの思惑

  





コンコン

「どうぞ。」

「レオン先生の教え子、エリマ・ドラゴ一同です。」

「よく来たね。」


学生たちが入ってきた。

「何かあったかな。」

「近年、教会の奇跡と称した不良技術が流行っており、原因が不明ではありますが、錬金術師になびくものが増えております。」


教会の奇跡、確かに月の裏側まで行ってロップが仕留めたはずの何か。
全く、起きていることからすると、スケールの違いに途方に暮れる。

「それは、ロップさんがライアンたちを連れてやっつけたよな。」

「ウル総長先生、増えているんです。」

確かに増えている気がする。何とも言い難い。
彼らにロップの説を託すわけにはいかない、街が穴ぼこだらけになってしまう。

「まあね。教会の奇跡と言われるだけある、教会の言うことをよく聞くしかない。王国だけは敵に回すわけいかないのだ。」

「しかし、私には不良技術に思えてならないのです。」


鋭い勘である、しかし彼もまた何かしらの問題を抱えたからこその鋭さであろう。

「それって、あれだな。」

「何ですか。」

「ロップさんがライアンたちを月の裏側に連れてやっつけたことも筒抜けなんだな。」

「アカデメイ内部に悪さを働くものがいるのですか。」

「そういう意味じゃない。」


「ウル総長先生、お知らせです。先ほどカブラークス王国のソロモン王とエデュケスのラーク先生と、アカデメイ理事の長の話し合いが終わりました。」

「学生の前で何です。全く。」

「はい、すみません。」


「君たちは教会の奇跡に困ってはいないのかね。」

「いえ、私たちは錬金術師ではありませんから、そのようなことはありません。」

「そうかい、なら自分の心配をしたまえ。」

「失礼を致しました。」


違和感を感じた、何を話しても通じない感覚を覚えた。良くない。

「君たち、ちょっと待ちたまえ。ロップの説を知っているか。」

「いえ、何も。」

「教会にはこちらから話をしておく、錬金術師の疑いはないと。」

「安心します。」

「しかし、不良技術か、錬金術師になびきそうなグループはどの辺りかね。」



ロップもライアン君もいい加減だろうか、私だって何ともないわけではない。
ジラー君、ハント君についても報告が欲しい。

また、私は若干焦りを感じていた。
そろそろ、旗を戻しておきたいのだけれどな。