ミニプラント
現在の化学プラントの運転は、設備は大型化、装置は自動化、運転はコンピューターによる制御と言ったように、非常に高度化されている。と同時に、現場で実際に装置に触れる機会も非常に少なくなっている。こうしたプラントの運転は、平常時には何の苦労もなく運転しているようであるが、実は、その裏では非常に高度の知識が求められる。こうした運転技術を身につけるのは一朝一夕には行かない。現場で何年も実務経験をつんだ上でないと、いざと言うときに活躍できるオペレーターには育たないのだ。こうした状況で、住友化学でも大江工場には、安全教育のためのミニプラントが設置されている。実際のプラントの制御システムを取り入れた模擬プラントで、これでさまざまな事故を想定した運転技術の訓練が行われている。
サウジの我々のセンターは、最先端技術の導入という課題はあるが、しかし、直近の技術者育成には、現場での運転技術の要領を短期間で習得してもらわなくてはならない。こうした背景から、我々のところにもミニプラントと称して、簡単な蒸留塔をモデルとした装置を設置することにした。当初は、それまで実際に大江工場で使われていたもののコピーを作る予定で在った。しかし、この計画を知り、ただ単なる現存のモデルのコピーでは、あえて新しいものを作る意味も薄いし、これでは折角の新しいものに兆戦するというチャンスをみすみす見逃してしまうことになる。そんなこともあり、思い切って、それまでステンレスで作られていた蒸留塔を、思い切って、中が透視してみえるプラスチック製のものにしようと提案した。当時、世界各地の水族館では大型のアクアリウムには住友化学のメタアクリル樹脂があちこちで採用されており、話題性は十分にあった。又、蒸留塔の中を実際に見ることは現実には不可能で、これを見ることができれば、蒸留という化学プロセスの実体をイメージすることができるし、また、その原理を用意に理解することが出きるからだ。こうした蒸留塔は、化学プラントの建設会社の研究所に、制御システムのデモ用に製作されていたようであるが、我々は、中に人が入ることが出来る程度に大きなものをと考えた。とにかく、世界一という形容詞が必要なのである。ただし、結局は製作の費用や技術的な問題も有り、予定の650φの塔は450φとなった。それでも、世界一大きな、中の状態を透視出来る蒸留塔が出来上がった。