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サウジの自動車市場の話

サウジでは、国家財政の体質を石油依存から脱却しようという動きがある。とりわけ、昨今の原油価格の低迷は、この政策の早急な実行が必至となっている。そこで、サウジが注目しているのは、自動車産業だ。サウジアラビアでの自動車生産が究極の目標であるが、その実現のための道は決して平坦ではない。

サウジでの工業生産の基盤が確立されていない。

自動車の組みたてのみならず、部品の生産体制が出来ていない。

十分な資材と労力がない。

国内の自動車市場が確立されていない。

などが考えられる。自動車産業がグローバル化しているなか、自国だけの消費だけでは、自動車産業が成り立たないことは確かだ。

そこで、サウジアラビアの自動車市場について考察した。

サウジアラビアの自動車市場

  2006年での、サウジアラビアの自動車市場は、約50万台だ。その後の成長、ならびに、自動車市場を湾岸諸国、そして、アフリカまで拡大したにしても、現在の新車市場は、60万台程度。現在は、そのほとんどは輸入車である。日本からの輸入が半数以上であり、逆に日本側からすれば、サウジが一大マーケットになっている。車種別に見れば、カムリやレキサスといった高級車を販売しているトヨタ社、そのほか、GM系列のオペル、シボレー車が売れているが、いずれにしても、大型、高級車が指向である。サウジ人にとって、車はステータスであり、また、広い国のなかで、小さな車を乗らなければならない条件はない。

Car  Show Stage

 

 In a car we can find out a lot of parts made by plastics, however in actually so many kinds of plastics are used and it is not so easy to understand  which parts are made by plastics, and what kinds of plastics are used for them.

   R-PTC  displays the car parts made by plastics using two cut cars, and different-colored lamps attached to these parts show which parts are made by plastics and what kinks of plastic are used for them. We can also learn the future figure of the factory of automobiles.

 

 

 

 

 

 

使用されている樹脂ごとに色違いのランプをつける

車の展示場といえば、完成車を展示してあるのが一般的。また自動車部品の工業会では、部品と、一部、車に装着された状態が分かる実車の展示物があるが、我々のセンターでは、樹脂部品に限定して、その部品に使用されている樹脂ごとに違う色のランプが点灯するという、世界でも始めての展示形式のものを考えた。なにしろ、世界で始めて、世界でここにしかないものというのを売り物にするというのが唄い文句になっていたからだ。将来、ラービグで製造された樹脂が車の部品の材料として使用されているということが若者に理解してもらえれば、車に興味を持っている若者も、車の部品作り、そして、その材料である樹脂製造業、化学産業にも興味を持ってもらえるとの考えがあった。

車に使用される樹脂は、外装部品、内装部品、それに、機構部品で、樹脂に対する要求性能が異なる。その理由、そして、その形状、を見た目で理解してもらおうというのが狙いであった。そこで、部品の名前が書かれたパネルにスイッチを取り付け、このスイッチを押すと、車に装着されたその部品に、夫々に使用されている樹脂に応じて、色の違うランプがつくというものだ。たとえば、バンパーというスイッチを押せば、バンパーの上に取り付けられた豆ランプが赤く光る。また、ヘッドランプというスイッチを押せば、そこに取り付けられた豆ランプが橙色に光るというもの。外装部品というスイッチパネルには、数十の部品の名前が書かれたスイッチがセットされている。内装部品のスイッチパネルにも同様にさまざまな内装部品のスイッチがつけられている。内装部品のランプの色を見ると、どうしてこの色のランプが着くかがよく分かる。つまり、内装部品は、人間の居住空間と同じ条件になっており、こうしたところの設置される部品の材料は、我々の生活空間で使用されている樹脂が主流になる。これにたいして、機構部品の場合には、非常に高度の性能が要求され、その樹脂を使うメリットは、性能と価格のバランスでということになる。こうした、知識が将来の車作りに必要だということをこの展示場では学んでもらうことが目標だ。 

車の部品の展示には、二台のカットされた車を使用しているが、このほかに、モジュール部品の展示と言うことにも注力した。将来、サウジで車作りをする時に、組み立て工場の形態としていま、最もすすんだ生産形態だからだ。つまり、数十万はあるといわれる車の部品は、その一つ一つを製造して、一つの産業として成り立つためには、しっかりとした技術レベルに基づく産業基盤が必要だ。そうした形になるには、サウジのものづくりの現状は余りにも現実離れしている。そこで、考えられるのが、BRICSといわれる発展途上国で、その国の技術レベルに応じて取り入れられた生産方式のモジュール化だ。これは、車の部品をあらかじめまとめた形で組み立て、これをセットで車の生産工場に納入するというものである。将来、サウジで車産業が成り立つためには、その一段階として必ず、こうした生産体制の工場が現実化されるとのことからのコンセプトの提案をしたつもりである。主要なモジュールとして、フロントエンドモジュール、コックピットモジュール、そして、ドアモジュールなど。これらをSJAHIが分解してくれた部品を模擬的に組みたてて展示しようというわけだ。

この展示場には、さらにここの部品も展示している。そんななかには、イタリア出張の際に街中で拾ったホイールキャップや、ジェッダの町で手に入れたエンブレムなどの樹脂部品がある。また、壁には、将来の自動車工場の姿としてモジュール化された工場の実際を紹介したもの、車の部品の合理化技術などのパネル展示、そして、実際の車の組み立て工場の状況を見る事のできるビデオコーナーなどを設置した。

 こうして車の展示場が完成した。この展示場を作るために要した費用は、およそ50ほどのスイッチがついたパネル4個、しめて100万くらいではなかったかと思う。すべて手作りにしては、大活躍の車の展示場となった。まさしく、「窮すれば、通ず。」そのものだ。

 

余談

車の展示場はいざ公開すると、サウジ人にはとても人気があった。とにかく、スイッチで部品の場所と、使われている材料の樹脂の種類が分かる。外装部品に使われている樹脂は、どんな物で、何故そこに使用されているかなど、大変な興味を持つて見てくれる。ある時、ペトラビの社長が、この車の展示を見て、「ペトラビの生産している樹脂が使用されている部品はどれか、分かるようにしてくれ。」との要望を出してきた。早速、パネルの上にボードを載せ、これを抑えれば、ペトラビで生産しているポリプロピレンが使用されている部品が、一度に点灯するようにし、このスイッチを「○○・スイッチ」と、社長の名前を付け、ことあるごとにアピール。社長も大喜び。これまた、大好評となった。

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