Saudiの王位継承権はどうなる?
サウド家がサウジアラビアを建国してから、85年が過ぎた。ほぼ一世紀が経つ。この間に、石油資本を元にゆるぎなきサウド王朝を築いたという考えもあるが、しかし、またその一方で、、まだ一世紀しか経っていないという見かたもある。これまで初代の国王から原国王まで、7人の国王が統治してきているが、その国王は、初代の国王とその息子たちだ。つまり、まだ、二世代しか統治をしていない。サウド家がゆるぎない王朝として存続していくには、これから先、すなわち、第三世代のプリンス達が、激動の世界情勢の中でどのようにこの国を治めていくか、その能力、裁量が問われている。
現政権は、国王がスディリーセブンの一人サルマン国王、そして、第一皇太子は、サルマン国王の実兄である故ナイーフ殿下の息子、すなわち、甥に当たるムハンムド・ビン・ナイーフ殿下だ。ムハンムド殿下は既に70歳の高齢であるが、内政問題に手腕を持ち、その実績は衆目の認めるところとなっている。兄君のサウド・ビン・ナイーフ殿下はサウジの主要州である東部州の知事でもある。二人の殿下はスディリーセブンの中でも名門家のナイーフ家の出身。
余談であるが、ムハンムド・ビン・ナイーフ殿下が第一皇太子となった背景には、イエーメン紛争がある。現国王が第一皇太子時代、前国王のアブドゥラー国王は、第二皇太子に初代国王の35男のムクリン王子を第二皇太子、すなわち、次〃国王に指名した。ムクリン王子は、優秀なジェットパイロットでもあり、有能な技術者としても知られていた。前国王は、サウジ政権の若返りと、サウド家の政権がスディリーセブンの一族に集中することを恐れたのではないかと思われるが、こうした人事を取り、また、自分の息子たちも次々に政府の要職につけた。アブドウラ前国王はこうした皇太子の指名は、国王の一存で決められる事のないよう、逆にこの指名が覆されるる事のないように、初代国王の36人の息子たちの家系からなる忠誠委員会を設置し、国王の決定はこの委員会の全員一致での承認がないと有効ではないとした、。こうして、ムクリン王子が、サルマン現国王の即位に従い、第一皇太子に就任した。
ところが、ムクリン王子にとって不運な事件が起きた。イェーメンのフーシ派による内乱である。実は、ムクリン王子の母君は、イエーメンの王族の出なのである。内戦は、サウジとイェーメンの国境をまたがっていた。フーシ派を鎮圧するには、サウジ自身の一部を鎮圧するという形になる。紛争はなかなか収まらず、結局、サルマン皇太子は、その責任を取って第一皇太子を辞任した。真偽の程は分からない。こうして、当時、第二皇太子に指名されていたムハンムド・ビン・ナイーフ殿下が第一皇太子になった。と同時に、サルマン国王は、寵愛の自分の第7王子であるムハンムド・ビン・サルマン殿下を、自らが掌握していた空軍の司令官に指名するとともに第二皇太子に任命した。勿論、この人事は忠誠委員会の満場一致で承認された。が、この人事により、メッカ州知事など政府の主要な地位についていた、前国王の王子たちの地位が一掃された。この人事の陰には、サルマン国王のしたたかな手腕と、政治に陰を落とす宗教の力がうかがえる。
空軍の指令官となったムハンムド・ビン・サルマン皇子は、早速、イェーメンを爆撃し、フーシ派を鎮圧した。そして、その功績が大体的に報じられた。こうして、ムハンムド第二皇太子は、その後、着実に権力把握のための階段を登りつめていくことになった。
ムハンムド・ビン・ナイーフ殿下も、そして、次々の国王になる予定のムハンムド・ビン・サルマン殿下もいずれもスディリーセブンと呼ばれる一族の殿下である。スディリーセブンは、初代国王の七番目お后ハッサー姫の子供たち7人だ。この兄弟の結束は固く、50年も前から、将来のサウジの指導的な地位に着くといわれ、スディリーセブンの名前で呼ばれていた。スデイリー家も、もともとは、ナジド砂漠のベドウィンの一族でサウド家がラシード家とサウジの中央部の派遣を争う以前に、ワッハーブ派に服従しアラビアの宗教統一に多大の貢献をしてきた。その後、サウド家はそのワッハーブ派と盟約を結びアラビア半島を征服した形だ。したがって、スディリー家はラシード家(第6代国王の母君の出身部族)とは、サウド家内の地位が異なる。このような背景にあるが、スディリー家の結束が、国家警察を把握している第二代国王のサウド家、国防、外交に強い3代国王のファイサル家、近衛兵を握っている第6代国王のアブドラー家、中央情報局に圧倒的な影響力を持っているバンダル家、経済界・産業界の重要なポストにあるタラル家、外交に強いつながりを持つナワーフ家、宗教関係に通じているマジド家など、サウジの政権は、これらの家系の力のバランスの上に成り立っているのであり、他の家系との間に何らかの影響を及ぼしてくるのは想像に難くない。
ビジョン2030に向けて、サウジが始動を始めた。その時代にサウジの政権がどのような形になって入るかは想像が難しいが、いずれにしても、この第3世代のサウド家のプリンスたちが、世界の政治の舞台、そして、経済の世界でどのように国を始動していくかは、余談を許さない。