怪しげな茶道

  雲南省や貴州省は中国茶の産地である。このあたりの中国人向けの観光地のツアーに参加したのだが、ツアーの途中でお茶のお土産屋に、強制的に案内されることが度々あった。お茶の産地ではない西安のツアーでも同じような店に案内された。店に入ると、どこのお茶のお土産やでも、中国式茶道の実演があるのである。その茶道が何とも安直であって、お猪口のような小さな湯呑を使い、それに一番目に入れたお茶をジャブジャブかけて、そのお茶を捨ててしまうのは、何処で同じやり方らしい。多分、福建か香港あたりのお茶の飲み方を、取り入れてお茶の宣伝に使っている様であった。だから雲南でも貴州でもその茶道の方法は、その方法を取り入れて同じ様になったのであろう。

  ここの茶道は日本の茶道と違って、お茶の宣伝であるから、黙っていないでよく喋る。その説明の中には、日本にもこれと同じような茶道があると言っていた。しかしここの茶道と日本のものとは歴史においても、内容においてもかなり違うようである。お茶の飲み方が様式化されているところは同じではあるが、その精神という点においては全く別のもだと思う。しかし土産やで言っていた中国語では、日本と同じく"茶道"という言葉を使っていた。

  実演が次第に終りに近づくと、このお茶を買わないかとか、あれが体にいいとか勧められるのである。お茶の効能として、体に良いと言うところを強調する(日本で言うよりずっと)のは中国人向けには適した販売方法であったかもしれない。ここで売られていたお茶は、形や味の点からも作り方についても多彩であり、珍しいものが多く普段日本では見られない物もたくさんあった。味も美味しいものがあったが、値段は相当高かった。