貴陽の鰻丼

  中国を旅行していて、油っぽい中国料理を食べ続けていると、日本料理やイタリア料理のメニューを見ただけで期待が膨らんでしまうことがある。日本で食べたあの味が味わえるのかと思ってしまうのである。しかし期待は裏切られることが多い。カツ丼、回転寿司(昆明にもあった)、ピザなどのメニューを見て、跳びついて食べたのであるが、味はかなり違っていてがっかりした。

  そんな体験を何回かしたのであるが、貴陽では誘惑に勝てずに、また日本料理を注文してしまった。うなどんと日本語で書いてある文字を見たら、これは美味いに違いないと、またまた錯覚してしまったのである。料理が届いたところで、思い出したのであるが、中国の南の方では、米が美味いはずはないことを、突然思い出した。そして恐れたことが本当になり、やはり米は不味かったのである。うなぎの方も、たれの味が日本の物とは別物であった。

  場所は泊まっているところの高級四星のホテルであるし、不味いはずはないと、思ってしまったのである。それに日本料理を食べたいなー と思っていたところでもあったので、思い切って、70元もする鰻丼を注文した。70元と言えば、今回中国に来て、一品では最高の値段でもあるし、この値段なのだから美味いに違いない、と思える理由の一つでもあった。

  そんなことがありながら、翌日は同じホテルのレストランで、西洋料理のステーキを食べた。これも60元もして高かったのだが、メニューには英語で書いてあり、文字だけを見ていると、美味そうな予感がしてしたのである。ソースはマッシュルームソースなどと書いてある。注文したら肉の焼き具合も聞いてくるのである。きっと美味いに違いないと思えてきた。しかし心配もあった。

  食べてみると心配をよそに、これは確かに美味かった。日本料理や西洋料理には、とても不味いものもあるし、そうでないない物もある。当たり前のことであるが、これが困るのである。どこでも不味ければ諦めもつくが、そうとは決まっていない。確かに北京で食べた回転寿司は、結構美味かった。外国で食べた場合の不味いという程度は、日本で言う不味いと言う場合と違って、本当に不味いのである。不味い程度の許容差をかなり大きくとっても、やはり不味いと言わざるを得ない。もともと鰻のタレなどは、かなり特殊な日本独特の味であるので、あの味を中国の貴州省で食べられると期待したのが、そもそもの間違いであったのかもしれない。