第3話

 

ある日、私は、地球でこの星の事をどのように発表するか考えていた。
すると、私の乗っていた船に、カメラがあることを思い出し、急いで取ってきた。
カメラをとってくると、ポコミンの散歩(毎日していた)を兼ねて外に出かけ、不思議な植物類を、写真に撮っていった。
この星の植物には七色の葉をつけた木、ト音記号のような形をした葉をもつ花などがあった。
これらの珍しい植物を写真に撮っているうち、ポコミンがカメラの視野の中に入ってきて、ニッコリ笑った。
どうやら写真を撮ってほしいようだ。
ポコミンを撮ってやると、うれしそうに動いていた。
すると突然、体が引っ張られるような感覚が起こり、体が前に進んだ。
自分の意志とは無関係に、進んだり、右に曲がったり、左に曲がったりしている。すると、ポコミンが私の前に出てきて、前に進み始めた。すると、私の体も引っ張られるように前に進んだ。
どうやら、ポコミンには、物を自在に移動させる力もあるらしい。
ポコミンに≪引っ張られて≫からしばらく経つと、私たちが一度も行っていない、しかも信じられない場所にたどり着いた。
その場所は、大都市の跡だった。
≪跡≫だから、ほとんどすたれて、古びて、生物なんていなかった。
腐りかけているところもあった。
ポコミンは、その都市を案内するかのように私を引っ張っていった。
学校があった。ビルがあった。駅があった。銀行まであった。
中に入れる建物もあれば、危なくては入れないのでポコミンが≪引っ張らない≫建物もあり、建物がなく、崩れていたところもあった。
しばらく引っ張られていると、ただの更地に出た。
そこには、色のないつぶれたゼリーのようなものがあちこちにへばりついていた。
ポコミンは、私の目の前で、目をつぶって、ぺちゃんこにつぶれた。
しばらくすると、ポコミンはまたふくれて、元の状態に戻った。
私はこの意味が分かった。
ポコミンという生物は、死ぬときにペチャンコにつぶれて色を失うのだ。
そして、おそらくポコミンは、この都市を築き、住む、知的生命体なのだ。すごいパワーを持っているし。
そして、私は、おそらくこのポコミンは、最後の生き残りの一匹なのだろうと思った。
ポコミンは、この日、自分の正体をあかしたのだった。

私は、その後、≪あの日≫まで、一歩も外に出ず、ポコミンを散歩に連れ出すこともせず、自分の見たことを論文にする作業に追われていた。
ポコミンは、散歩ができない時に見せる不満そうな顔もせず、私のとなりで書いている論文を眺めていた。

最終話へ

第2話へ

小説ページへ

ホームへ