浮世絵版画との出会い
歌麿や広重、そして、北斎など、江戸時代の庶民の楽しみの一つは浮世絵だった。浮世絵版画が私の趣味の一つだが、その出会いは、私がボーイスカウトの指導者として活動している時の頃だった。スカウトの技能訓練として、たまたま木版画の多色刷りをやってみようというプログラムを作ってくれた人が居て、その人の指導で、子供たちと一緒に私も木版画に挑戦した。それまでも年賀状に版画を利用したりしていたが、これはお遊び程度。しかし、版画の彫り方、擦り方等本格的に教えてもらうと、多色刷りでも、これが意外とうまくいく。こうしてできたものが最初の版画で、これを市民コンクールに応募したところ、これを見に来ていた人から誘いを受けて、多色刷りの木版画の会を作ろうということになった。近隣の人達と版画同好会を作り、年賀状を交換することにした。メンバーの方は、長年、これを楽しんできた方々で、オリジナルの版画、そして、奇抜なデザインと、これはもうプロの芸術の域だった。中には、日本木版画の会の会員の方も居て、これには大いに刺激を受けた。そんなことから、当初は只、多色刷り版画という事だったが、でも、せっかくやるのだから、日本の伝統的な絵に挑戦しようということに。こうして初めは、凧絵を模倣したり、雑誌から美人をモデルにしたりのデザインを題材としていたが、どうせなら、日本の古来の伝統である浮世絵の美人画に挑戦してみようということなった。
こうして、毎年の年賀状に浮世絵版画を制作することに。そこで、浮世絵に関する様々な情報を仕入れ、画材は、歌麿の美人画を題材にして、彫り方、擦り方その真似事を始めた。多色刷りの場合には、色ごとに版木を彫る。どれだけ細く線を描くかが問題。とりわけ、髪の毛の太さが彫師の腕の見せ所とようだ。こうして彫り上げたものを色の薄いものから、色刷りしていく。輪郭の黒は一番最後なので、位置合わせがうまくいっているかどうかは、最後にならないとわからないが、位置合わせは事前に調整するやり方がある。和紙の場合には、それなりにやわらかいので、着色も用意だが、年賀状の場合には、硬いので色のりが良くなるように、する前に適当に水分を与えておく、霧吹きをするのだが、これにもコツがある。また、絵の具にはにじまないように、そして、紙にしっかりと着色できるように、適度に糊を混ぜる。昔は、膠を使っていたようだ。こんな具合で30年以上木版年賀状を楽しんできたが、それでもまだ専門家からすれば、素人の域だ。すでに70を過ぎ、版木を彫るのに不自由を感じているので、最近では、昔に彫った版木をみつけ、これで、干支を合わせて復刷りの版画にしている。
こんな調子でできあがったものをまとめて紹介したい。