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13. トライコン

 住友化学を55歳で定年退職をした。そのあと、三次元ブローという特殊な成形法を持つエクセルに工場を見る役をしに行った。小さな中小企業ではあるが、この会社の技術を使わなければ自動車のエンジン回りの部品が出来ないということで、トヨタをはじめそれぞれの自動車メーカーと直接取引のできる会社だった。アメリカにも自動車メーカーが出ていくので、これに伴って工場を持つというとても活力の旺盛な部品メーカーだった。私が群馬の工場長をしているときに、国税局から、こんな小さな会社がアメリカに子会社を持っているなんて、なにかよからぬことをしているのでは、と査察に入った。当初数名が3泊4日で帳簿を克明に調べたが、結局悪いところを見つけられず、1週間引き延ばして調査をすることになった。目星をつけて国税局が入ったので何も見つけられなくては、引き下がれなかったのだ。そこで、自動車メーカーからの依頼で製品開発をしているものを、研究開発と言うことで税金を払っていないものがあるということにして、極僅かの税を追徴という形にして国税局には、ご苦労さんとした。

 また、群馬県の中小企業の振興のための技術開発に優れた会社を表彰するという話があり、これにも応募して、その奨励金を頂いた。特殊な成形技術で利益を上げているとてもユニークで、仕事のし甲斐のある会社であったが、アメリカの会社の社長が、交通事故で半身不随の大けがをしてしまい、どうしてもそのあとを見てほしいということでインディアナ州のビンセンスに勤務することとなった。この工場では、特殊に成形技術でトヨタにも一次ティアーとして部品を納入する会社で、夢があったが、工場の維持のために通常のどこでもできる製品を大量に下請けするかどうかで、会社の経営者と意見が折り合わず、結局アメリカを引き上げてしまった。

 日本に戻り、まだ、60と言うこともあり、ハローワークで仕事を探しているときに、トライコンという、TSテックの子会社がメキシコに工場建設をするということで、その工場長を探しているという話があり、これに応募をした。アメリカとメキシコの国境で、スペイン語が必須ではないが、この仕事にスペイン語のできる人が採用された。ところが、募集をしていた会社の社長から、親会社のTSテックがホンダに付き合って新しい工場を作り、此れと一緒にトライコンも新しい工場建設を予定しているので、そのFSを是非してほしい、との誘いがあった。エクセルでのアメリカでの工場運営と生活の経験がものを言ったよう だ。こうして、アメリカのネブラスカにあるトライコンに行くこととなった。

 しばらく、新工場立地のFSをしていたが、アメリカの景気が落ち込みこの話の雲行きがおかしくなってきた折、トライコンの主力の製品工程であるウレタン発泡成形の責任者が、糾合会社に引き抜かれて辞めてしまった。代わりをするものがすぐには手配が出来ないということで、なんとかしてこの場を凌ぐために変わりをしてくれと頼まれた。この工程は、50種以上の金型を回転しながらワンサイクルで、加熱発泡成形をするという工程で、二つのロボットを使い各製品ごとにプログラムで、金型に二種類の材料を投入するというものだ。ロボットの動かし方も分からないまま、とにかく製品を作ってくれという。にわか勉強のロボットの運転であったが、とにかくそれまでのやり方で製品を作るしかない。しばらくはそんな風にして何とか製造はしていたが、そのうち、ロボットの動かし方が分かってくると、製造裡歩留まりを向上させるために、そして、不良品の改良のために、材料の投入スケジュール、金型への投入の角度などを、製品の形状に応じて変えてやるなど、合理化に取り組んだ。と同時に、原材料の管理についても、製造計画を作り、これを予測して、購入するなど、それまでとは全く違ったシステムを作り上げた。一番の合理化は、原材料の使用量を生産計画に応じて、無駄をなくして購入するようにした。材料のジイソシアネートは、テキサスから購入していたが、運送に時間がかかり、これを切らしてはいけないと、毎月、製品の生産量にかかわらず、定期的にトラックで購入していた。従って、材料がまだタンクの中に残っていて、トラック一台分が必要なくても、トラックが輸送して来るごとにこれを購入するというやり方をしていた。全くバカげた材料購入をしていたのだが、アメリカ人の担当者は、アメリカの会社が損をするわけではなく、日本の会社が損をしてもまったくお構いなしという態度だった。こんなバカげた話はないと、材料タンクの残った量を毎日チェックするようにして、輸送日数の分だけの材料が残っている所で、材料を購入するようにした。材料チェックの手間はかかったが、こうして、材料の無駄が亡くなり、月に数萬ドルの合理化となった。これも、ロボットの管理と生産計画に基づく、しっかりとした材料管理が出来るようになったからだ。こうした管理もコンピューターでプログラムさえしっかりしていれば、いくらでも細かい計算も、かつまた精度よく実行できるので、立ち上げまでの努力は必要であるが、でき上ってしまえば、あとはどうやって結果を利用するかだけだ。他人のやる仕事には時間がかかるが、コンピューターはいとも簡単に計算してくれる。

 

  そんな風にして工場の生産合理化には随分と貢献したのではないかと思っている。

トライコンの第二工場では、スタンピングにより、ホンダの自動車部品を製造していた。ここでも生産計画は有るものの、生産管理が出来ていない。毎月どの材料をどれだけ買うかを手計算でやっていた。この工場の生産管理のプログラムの作成依頼を頼まれ、急遽これに取り掛かった。製品ごとに、材料構成、生産工程、生産能力などを入力し、製品の注文数に応じて、生産スケジュール、材料発注、発想の手配までが出来るようにした。こうすることで、10ライン以上の製造ラインが無駄なく、フル稼働できるようになり、これも大いに役立った。

 とにかく、従業員のアメリカ人は、指導者としての役割には好んで仕事をするが、実務のできる人が、日本の企業に等なかなか人材が来ない。ましてや、会社のあるネブラスカ州はベトナムからの難民の受け入れ集となっており、実際の労働者は、彼らが主力となっている。

こうしたことが。日本からアメリカに出て行っている会社の実情であることを良く知っておく必要がある。

 

14. 数理天文学の世界

 住友化学の中央研究所から、千葉の製造所に転勤となり、ポリエチレンの製造現場で、モノづくりの現場で研究所にいた時よりも、もっとスケールの大きな研究が出来、自分でも新しい世界が開けたような気がした。HCP-IIIというポリエチレンの製造法は原理はほかの研究者がしたものだったが、これを1、000リットル以上もの反応器で重合するという途方もないことが出来たのも、当時普及し始めたコンピューターを自由に使えたからではないかと思う。そんな仕事をしていたのに、数年もしたら、また、研究に戻された。しかも、ポリエチレンの製造方法に関するもので、全くの素人では手も足も出ないし、基礎研究をしても本格的な製造にはそれ以外もやるべきことがいくらでもあることを身に浸みて感じていた。そんなこともあり、もう研究者としては、やってはいけないと半ばあきらめの境地であった。

何をしようかと考えたが、なかなか答えが出ず、自分で好きなことを始めたが、その一つが、数理天文学であった。たまたま、神田の古本屋で見つけたものであるが、天文学については、少なからず興味を持っていたが、これを計算の世界から分析し、天体現象を証明しようというものであった。むずしい式が、いろいろと書かれているが、その解は、過去に実際にあったことであり、事実ははっきりとしている。だから計算さえしっかりできれば、将来のことも予測できるはずだ。そんな気持ちでこれを会社に行く仕事の前に毎日2時間ずつ、この本を丸写しにして、天文学のことは判らなくても計算だけは分かるようにしていった。

天文学への入門書

こんな風にして、丸二年も毎日コツコツとやった甲斐があったのか、天文現象のうち、太陽系の惑星の運動、月と地球の関係、そして、小惑星の運動などが分かるようになった。天体の運動は極めて厄介であるが、このころ普及し始めたパソコンを使えば、とにかく複雑な計算も難なくやることが出来る。天体の観測についても、自分がこの地球上のどこにいるかが分かれば、夜分にその惑星がどの方角の、角度がどれほどの所に見えるのかが計算で分かる。動きの速い惑星にしても、過去、未来にたがわず、その見え方を知ることが出来る。いくつかの惑星について計算をしてやれば、惑星直列も正確に予測できる。太陽と地球と月の関係を計算すれば、日食、月食が、何処でどのような現象としてみることが出来るのかが分かる。

 日本では、コメットハンターが数多くの彗星を発見しているが、これは、それらしい星を見つけたら、この星の動きを、代替一週間程度の間をあけて、その位置を測定し、此れから、その星の運動を表す、5つか6つの定数を決めて、スミソニアン天文台に報告する。この定数が、これまで知られている彗星のものと異なれば、初めてそれが彗星であることを

認められ、その彗星の名前を付けることになる。最初の発見者のほかに二番目、三番目の発見者の名前を付けることが認められている。この星の運動の定数を決めることが極めて複雑で、日本にはこれが出来る人が限られている。小生もパソコンを使ってこれが出来るようになったが、これも数理天文学を勉強したおかげだ。

 

すこし対象が異なるが、人工衛星の軌道計算も同じようにしてできる。そのよい例が、アマチュア無線で通信だ。無線の愛好家が協力してアマチュア無線用の人工衛星、富士1号を打ち上げた。その高度はあまり高くなく、従って周期は短くなる。通信はこの人工衛星が視野に入った時にこの衛星に向けて電波を飛ばし、この衛星が中継して返信されるものを送ってきてくれる。それをまたキャッチする仕組みだが、この衛星が何時視野に、どの方角、どんな高度でとんでいるのか知らなくてはならない。人工衛星の軌道計算をしてこれを捕まえなくてはならない。そんな計算も数理天文学の応用でできる。家の屋根の上に可動式のアンテナを設置し、これを人工衛星の見える方向に動かしてやる。こんな通信をして楽しんだものだ。

 天文学を勉強して、最もしてやったりと思ったことがある。それは、天文学では、時を表すのにエジプトの時代のある時点からの経過時間を秒単位で表現し、そこから天体の動きを求めることになっている。このため数値計算をする時には、有効数字が12桁必要になる。ところが、通常のコンピーターでは、8桁までしか表せないのである。従ってこの桁数で計算すると天体の動きに誤差が生じてしまう。そこで天文での計算では、コンピューターに倍数制度で計算するようにしなくてはならない。つまり、8桁X2=16桁まで正確に計算するように宣言しておく必要がある。こうすることにより、パソコンで天体の動きを検証できるし、また、予測できるのである。例えば、惑星の直列など、将来起こる可能性があるかなしかの議論が出来るようになるという訳である。こうしてパソコンを利用することにより、天体の動き、彗星の軌道計算、星座の動きまで、将来どんな具合になるかを知ることが出来る。

 

 

 

15. 地震予知の問題

日本は、地震国である。過去に非常に大きな地震、この上ない被害にあっている。こうした地震を予測できないかと誰もが考えるのだが、どうも地震の起きる原因が分からない。日本だけでなく、これまでに世界各地で、とてつもないほど大きな地震が度々起こっている。幼い頃、私が育ったのは伊豆半島の付け根に当たる三島と沼津の間にある小さな村であったが、このころ度々地震があり、どうしてこんなに大地が揺れる地震が起こるのだろうと不思議でならなかった。そんなこともあり大学で学部に進学するときに、地球物理学を専攻しようと考えたこともあるが、我が家にはまだ受験生もいて、とてもそんな悠長なことを考えている暇はなかった。何としても早く大学を出て自分で生活をしていけるようになることばかりを考え、結局、当時石油化学が躍進していたころでもあるし、化学産業に貢献できればと化学を選んだ。ところが数理天文学に興味を持ちコンピューターが普及し、素人でも天体の動きを自分で計算できるようになり、たまたま、太陽と月と地球との関係から、月食や二色が身近に感じられるようになり、そんなことから、地震の起こる原因は地球だけの問題ではなく、太陽や月の動きが影響しているでは、地球の中のマグマの動きが太陽や月と地球との位置関係にあるのではと考えた。天体の位置関係からすれば、太陽と地球、地球と月までの距離は絶えず変動している。しかし、局所的にみれば、太陽と月と地球が一直線に並べばその力は最大になる。そうした現象がよく表されているのが、潮の満ち干、つまり、潮汐力だ。そこで、地震の起きた場所、時間にその場所で潮汐力がどのようになって居るのかを過去に地球上で起こった巨大地震の一つ一つを検証した。しかしながら、これまでの地震では、必ずしも満月、或いは新月の時に地震が起きやすいとは限らないことが分かった。

 

 

マグマの粘土や力の加わる方向など、まだまだ不確定で分からないことばかりだということが分かった。是非、専門家のご意見を聞きたいところだ。

 

16. 河川の氾濫予測

2019年の10月に襲来した台風は、高い山、大きな河川もない千葉県に河川氾濫の被害を引き起こした。関東には、台風の上陸など滅多にないので、危機管理が不十分ではなかったかと思う。息子が県の土木課に勤務しており、その苦情対策で大忙しとの事。本来であれば、事前に対策をたてて住民の安全を確保することに専念してほしいのだが、河川の氾濫予測が十分でなく、何をするにしても後手ごてになってしまうとの事であった。

河川の氾濫は、川に流れ込む水量が土手を超える時に発生するので、この水量が分かれば、氾濫が起こるかどうかが分かるだろうとの事で、現在では、降雨量についてはアメダスで報告されているので、これを利用すれば、水量の計算はできるはず、そんな思いから、アメダスのデータから河川の水量を求めることにした。

といっても、どこから手を付けるかが問題だ。幸いにして、いろいろ調査をしたら北海道開発局がこうした計算について解説していることを知った。貯留関数法というのが素人の我々でも理解できそうだった。この方法をより簡潔に雨量から水量を求める方法として採用した。これを簡単に述べれば、降雨量と流域の面積から、総雨量を求め、このうち、何割かがその地域の地質、森林の状態、斜面の勾配などにより、地中に保持される。そして残りが地表を流れて河川に流れるものとしている。こうして河川に流れ込む水量が求まれば、検討する地点の河川の構造により水位が求まるという訳だ。

 

河川の断面積は、当初はGoogle Map より注目点での写真を参考にして断面構造を描き、土手の高さを推定し、流量床の断面積から水位を計算し、これが土手の高さを超える時には氾濫が起こるものとした。こうして、全国の一級河川を対象にして、豪雨時の水位を計算することで氾濫の起こる可能性を議論した。最も、国の定めた一級河川は100河川以上にも上り、これを一つ一つ自分で開発したプログラムを適用させていく。一通りこうした検討をするのに一年近くかかるのだ。

水位を比較する地点としては、主要な地点としたが、国交省が、河川流域の雨量の測定をしているとともに、要所における水位の変化もデータを公表していることが分かった。しかも、そうした地点の河川の断面についても測定がなされていることが分かった。またこうした地点の位置についてもデータがそろっており。これから、流速が分かれば、水が流れて来るその所要時間も求めることが出来る。こうしても降雨量から水位を算出することが客観的にできるようになった。これにより水位の精度が非常に向上したことは言うまでもない。

こうなると、以前に自分の作成したブログラムへの適用をやり直さなくてはならない。南九州から始めて、北海道、そして、北陸地方まで、やく一年がかりでもう一度やり直しをした。

図   適用例 2022.10.12 紀ノ川 三谷当たりでの水位の変化

全国の一級河川といっても、各河川に特異性があることがだんだんわかってきた。又。豪雨をもたらす雨雲にしても、気圧配置により変わるし、河川の流れも、その河川がどのようにしてできたのか、また、流れの向きも北から南に流れるもの、その逆のものもある、西から東に流れるものは、雨雲の動きが西から東に流れる時には、河川の流と蜘蛛の動きが同一となるので、水量が増える傾向がある。又、最近では、線状降水帯と言ったようなものまで出てきて、雨の降り方がより複雑になって来ている。さらに、河川によっては、円周をまわるように流れる川もある。球磨川、三次川などがこれに相当するが、こんな複雑な流れの解析には注意が必要だ。2020年ごろから、豪雨による水害発生が頻繁となり、洪水対策が見直され始めた。特に河川の水位の測定も、スーパーコンピーターを使用して行われているらしいが、気象庁の発表する洪水予測は、アメダスの雨量の予測をしてこれに基づき交付しているようだ。従って、的中率も5%には程遠いと言われている。

そんなこともあり、水量の制御をどのようにしているのか検討をしていると、洪水対策としてダムが機能していることが分かった。どのダムをどのように管理しているのかを知る必要があったが、ダムには洪水対策としての貯水を行う、治水ダムの他に、工業用水、農業のための灌漑用水、また、古くからは、電力会社が管理している発電用のダムなど、利水ダムと呼ばれているものが有る。こうしたダムが豪雨の時には首相官邸の審議会で決めた貯水容量にまで貯水が可能となるように事前に調節するように決められているということが分かった。こうしたダムの雨天状況を知り、ダムからの放水量が分かれば、もっと正確に水量を求めることが出来る。こうして、プログラムをリアルタイムで更新し、水位の変化を知ることが出来れば、河川の氾濫が起こることの予測を、気象庁の発表するものよりも、短時間で氾濫をおこす23時間前には、より信憑性の高いものを把握できるのだ。是非、このプログラムの採用を検討して頂きたいものである。

      

 

と言うことで、このプログラムを適用したらどうなるかを、全国の一級河川について、過去の豪雨の時の水位の変化を検証している。現在は、コロナの蔓延で、外出を控えている状態なので時間的には自由となるので、このプログラムの適用を各河川について実施している。一つ一つの河川には過去の実績と比較をし、適宜、様々な仮定について見直しをしているが、残りがあとわずかになったので、次には、リアルタイムで豪雨時での河川の氾濫予測の実際を行っていくつもりだ。