炭酸ガスの削減効果
建設工事の型枠用素材として合板を使用しているが、合板の使用においては、
転用回数が少ない。
リサイクルが出来ない。
焼却処分による炭酸ガスの発生。
森林資源の減少による、間接的な炭酸ガス濃度の上昇
など、多々問題がある。
そこで、合板型枠の代替材料として開発された樹脂型枠を使用した場合の炭酸ガスの発生量の削減効果について考察した。
ここでは、比較的、樹脂型枠への代替が容易なマンションの戸境い壁への適用を念頭において、以下の手順で物件ごとに削減される炭酸ガスの量を推定した。
削減効果の算出
1.
物件で戸境壁の面積を図面より算出
2.
これから樹脂型枠を適用できる部位の面積を求める。
基本的には、間口、柱、などの狭い部位には適用しない。
3.
梁の部分にも適用可能であるが、これはオプションとして可能性をのこし、計算外とする。
4.
転用した面積に応じて、合板を使用した場合と樹脂型枠を使用した場合の炭酸ガスの発生量の差を算出
5.
合板ならびに樹脂型枠については、夫々の製品についてのLCA解析により求められた炭酸ガスの発生量を、転用回数を加味してコンクリート壁の単位面積当たりの値を用いた。
6.
さらに、合板の場合には、森林資源の伐採による炭酸ガス固定作用の停止もあるので、樹脂型枠を使用することにより、どれだけの森林資源が保護されるかを算出した。
また、入力データは各物件の間取りの代表的なものを選択し、これを全戸数の平均的なものとし物件全体の炭酸ガス発生量の削減効果とした。
以下、具体的な適用について説明する。
(1)
物件の選択
主として型枠の転用回数の多い都市型マンションを対象とする。ここでは、グレーシア川崎大師(西日本鉄道グループが開発、施工建設会社 長谷工)
(2)
図面より、平均的な代表間取を選択。建設戸数、間取形状など考慮
3LDKタイプを選択。図面より、占有面積、間口、ならびに、奥行きを求める。
図面に記入がない場合には、占有面積から計算により算出
(1)
コンクリートの打設面積を出すために、柱の寸法、ならびに、間口での壁についても想定面積をだす。
(2)
これより、間口 5.7m、奥行き 12.5m
柱数は4本、
(3)
階高は、2.7mとし、梁は、0.6mとくに図面にはないが、仮定値として入力
(4)
その他間口の壁はなし
(5)
これから、
スラブ面積、 72.23
u
梁面積 15.
u
柱部分 21.6
u
戸境壁面積
52.5 u
その他
0 u
合計
161.33 u
(6)
これから
(7)
戸境壁の比率は、 32.5
%である。
(8)
樹脂型枠の代替が可能な面積は、
奥行きから
12.5÷0.6= 20.8
従って、整数 20が樹脂型枠の枚数となる。
樹脂型枠の打設面積は、2
x 7版であるので
両壁で 20
x 2 x 0.6 x 2.1 = 50.4 u
が、削減した合板の枚数の打設面積
(9)
合板の打説面積あたりの炭酸ガス発生量は転用回数を加味して、4.84
Kg-CO2/uであるので、 一戸あたり4.84
x 50.4 = 243.94 Kg-CO2/戸が
減少したことになる。これは、全戸数レベル、つまり物件あたり
136.12 t-CO2の炭酸ガス発生量の減少となる。
(10)
一方、合板の代わりにしようする樹脂型枠の場合には、打設面積あたり、0.178
Kg-CO2/uの炭酸ガスの発生をともなうので、物件全体では、5.01
t-CO2となる。
(11)
これにより、両者の差が、合板の代わりに樹脂型枠を使用した場合の炭酸ガス発生量の削減となる。
(12)
この値は
136.12 – 5.01 = 131.11 t-CO2
と言うことになる。
(13)
一方、合板の製造のために使用される原木は、熱帯雨林の伐採により調達されている。熱帯雨林の1haから得られる合板の枚数は 、21,800枚と想定され、また、この面積の森林が吸収する炭酸ガスの量は、244
t-CO2 である。
(14)
したがって、合板の枚数は、打設面積と転用回数から求められるので、これから合板の代替がどの程度の森林資源の保護となり、その保護された森林がどの程度炭酸ガスを吸収しているかを知ることが出来る。
この物件の場合には、保護されて森林の面積は、 ca,
2390uとなり、これにより吸収される炭酸ガスの量を求めると
58.29となり、
これだけのものが、合板から樹脂型枠に代替することにより、大気中の炭酸ガスが減少する。
(15)
したがって、
合板を樹脂型枠に代替することで、131.11
t-CO2 の炭酸ガスが削減され
森林伐採の保護により、さらに炭酸ガスが、 58.29
t-CO2 削減
される。
ちなみに、これらの効果を総合すると、樹脂型枠の使用により、189.4
t-CO2 の炭酸ガス削減効果があるといえる。`
以上の検討結果をまとめた物が、次のレポートである。
具体的な物件をベースにこうした効果を確認し、しかるべき部署にPRを進めて行く。