鯨の定義・収斂現象とは

クジラをズバリ定義すると?
1 哺乳類です。
1) 体温が一定の「恒温動物」です。
2) 母体内で新生児が育つ「胎生」です。
3) 「母乳」で育ちます。
2 一生を水中で過します。
1) 砂浜や岩礁や海氷等の地上物がなくても出産できます。
   (アザラシ・アシカは出産のために陸地か氷が必要です)
3 鼻の孔が頭の上にあります。
1) 進化上鼻の位置が背のほうに移動し「頭頂」にあります。ただしマッコウクジラの鼻は頭頂左先端にあります。                 
  また、クジラは他の哺乳類と比較して頭の骨が望遠鏡(テレスコープ)のように重なっていて伸びることから                 
  「テレスコーピング」と云われています。                 
  このテレスコーピング状態はヒゲクジラやマッコウクジラでも同様です。
2) このため鼻の下が非常に長くなっています。
  (水生の海牛類であるジュゴン・マナティーの鼻は顔の前部にあります)


それでは「ハクジラ」と「ヒゲクジラ」はどこが違うのでしょう?
「ハクジラ」は 「ヒゲクジラ」は
1) 「犬歯型(円錐形)の歯」を持つ種が多く、ヒゲ板はありません。        
  歯数が少ないか、埋没、メスには歯がない種類もいます。
1) 歯の代わりに上アゴに「ヒゲ板」をもっています。
2) 「鼻孔」は一つです。ただし内部では二つに別れています。 2) 「鼻孔」は二つです。人の鼻を逆向きにつけた感じです。
3) 頭部が丸く、頭部に「メロン」を持つ種類が多い。 3) 頭部は平べったく、上顎は鳥のくちばし状です。
4) 腹部に長いスジ(ウネ)がありません。 4) 腹部に長いスジ(ウネ)があります。
  ただしセミクジラ類にはありません。
5) 殆どが「小型」の種である。
  種類は多い。
5) 殆どが「大型」の種である。
  種類は少ない。
6) 回遊のリズムがない。
  ただしマッコウクジラのオスは大移動します。
6) 索餌期と繁殖期に南北の回遊をします。
7) 「左右非対称」の種が多い。 7) 「左右対称」の種が多い。
  ただしナガスクジラはクチ周辺とヒゲ板の色が非対称です。



海生(棲)動物・クジラの「収斂現象」とはナニ?

海生哺乳類にはクジラ目、海牛目、食肉目の鰭脚類、ラッコ、カワウソ、ホッキョククマ等がいます。
似たような哺乳類に川辺に住んでいるカモノハシもいます。
「収斂現象」とは同じ環境下に棲息するものは似るということです。
海生・水生のものは哺乳類・爬虫類でも流線型の「魚の形」をしているものが多いと思いませんか。     
1) 魚類 :マグロ、ホオジロザメ(魚の基本形の流線型で、ヒレがあり、尾びれがあります)
2) 爬虫類 :イクチオザウルス(イルカに似ていますが小さい後ろ足があります。イルカには脚はありません)
 現在、この爬虫類は絶滅していません。
3) イルカ :ハンドウイルカ、マイルカ(イルカの基本形です。サメにもよく似ています)
4) クジラ :シロナガスクジラ(クジラは昔魚とみられていました。外形は魚にソックリです)
5) 海牛類 :マナティー、ジュゴン(顔・クチ以外はイルカ形です。ただし海牛類には背びれはありません。)
6) 潜水艦 :潜水艦もよくクジラに似ています。(飛行機が鳥、コウモリによく似ているのと同じです)
7) 鰭脚類 :アザラシ、セイウチ、アシカ(背ヒレはありませんが脚はヒレ状です) 魚、クジラ類には耳たぶはありません。
 アシカにも耳たぶはありません。オットセイには小さい耳があります。
8) ラッコ :イタチ科ですが尾は背腹に扁平状,櫂(カイ)のようになっています。
9) カワウソ :脚がひれ状です
10) ペンギン類 :泳ぐ姿は魚かイルカそっくりです。
11) カモノハシ :クチの扁平、尻尾の扁平がクジラに近い感じです。尚卵を産み、乳房はなくお乳は腹部皮膚から分泌します。

このように海・河・川等水中で生活する動物は段々と形状が似てきます。
特に魚類、爬虫類、クジラ類、潜水艦は同型といえます。これが「収斂現象」です。


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不思議な動物の収斂進化