ナガエツルノゲイトウ その後

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 ナガエツルノゲイトウは前に紹介した南米原産の水辺の植物だ。日本ではなじみのない植物であったが、少しずつその旺盛な繁殖力のため認知されてきたようで、インターネット上でも話題になることが多くなってきた。印旛沼特産?と前に紹介したが淀川や、北河内など関西方面にも進出しているようだ。県内でも市川の真間川で観察されているそうである。日本より早く進出していた中国では結構、見られるようで豚の飼料として使われることがあるようだ。空心蓮子草や革命草という名前もあるそうだ。
 さて、そのような状況の中、水の浄化作用に関わられている中里広幸さん(ビオパーク方式という水耕生物による濾過法を開発され、各種報告、実績のある方です)という方からナガエツルノゲイトウに関するメールを頂いた。中里さんは中国、タイなどへ行かれたとき、水辺を覆うナガエツルノゲイトウを見て、日本に入ってきたら大変だと思われたそうである。それと併せて非常に詳しいナガエツルノゲイトウに関する資料をお寄せいただいたのでここで紹介したい。本当にすごい植物だということがわかる。以下は頂いたメールから資料部分を引用したものだ。メールにはナガエツルノゲイトウの生態への影響の危険性と利点、(すくわれる点)の両面がふれられている。水辺の景観、生態に大きな影響を与えるかもしれない植物なので引き続き観察していくことが必要であろう。


1,融通性
 ナガエツルノゲイトウは、水生植物の生活型分類はもとより、陸上植物と水生植物の区別をも無意味にするスーパー植物です。
 上海や無錫等では、街路樹の根元の乾いた土に生える雑草としても最も繁栄しているようです。 
 水辺では、元々湿性植物として出発するようですが、水上に茎を伸ばし、節間の空気を浮きとして広がる抽水植物となり、節から発根して肥料が十分に吸収できるようになると浮島を形成して浮漂生活に入り、分布を広げ、取水口を詰まらせるなどの障害を起こします。
 風や流れ、波などに翻弄されて浮島が崩壊しても、各節が生き残って水辺にたどり着けば繁殖爆発するだけです。
2,乾燥抵抗性
 水生植物の多くは陸上にあげられると蒸散によって水分を失って早期に枯死するものですが、ナガエツルノゲイトウは先ず葉を放棄して茎が長期間乾燥に耐え、ひからびて枯死に至ることに強く抵抗します。
 乾燥標本を造ろうとして60度の乾燥機に12時間入れてもへたるだけで乾燥には至りませんでした。
 この性質は中国人を心底手こずらせているようでした。
 全ての茎を縦割きにして同じ処理をしても完全に乾燥しなかったので標本化は諦めました。
 同時に乾燥を行ったホテイアオイはあっけなく乾きましたので、今まで出会った水生植物の中で乾燥抵抗性は随一だと思います。
 葉を捨てて茎が生き延びる性質は芹にも共通するものですが、レベルが違います。
3,成長速度
 残念ながら長期の滞在ではなかったので成長性は比較できませんでした。
 タイの共同研究者が撮った写真によるとホテイアオイを上回るほどではないようです。
 但し揚子江デルタの水路や池をほとんど埋め尽くす勢いから見て中国人でさえ除去が追いつかないほど成長が早いと思われます。
 
天敵
 ナガエツルノゲイトウの繁殖を押さえるような力はないようですが、ハスモンヨトウが葉を食べることは確認しました。
 逆に害虫としてのハスモンヨトウを養う天然の餌場となる可能性もあります。
 
利点
 全くの余談で、出来ればナガエツルノゲイトウを根絶すべきなのですが、最終的に日本の水辺を埋め尽くすほど繁殖すると良いことも起こるかも知れません。
1,水を浄化する動物生息の足場
 詳しく調べてありませんが、ナガエツルノゲイトウは水中に酸素を送る能力が強いようです。
 それというのも、同じ場所で同じように浮漂生活しているホテイアオイとともに同重量を根茎ごと採取し、根に付いた動物数を比較したところ、ホテイアオイの方が遙かに長く多数の根を展開していたのに赤虫などの動物が全くおらず、ナガエツルノゲイトウの根には多かったのです。
 同じくナガエツルノゲイトウの根にはゼリー状に見えるツリガネムシの群体がびっしり付いていたのに、ホテイアオイにはそれが見あたりませんでした。
2,他植物との共存性
 ナガエツルノゲイトウの大きな浮漂群落には、中心にマコモがしばしば生えていました。
 また、浮漂群落を持ち上げてみると水面下の茎に沈水植物が絡んで増殖していることが解りました。
 ナガエツルノゲイトウの浮漂群落は、葉の密度が低くて水面下にも比較的多くの光を透過させ、これらの植物や動物と共存しているようです。
 浮き植栽の水面下に沈水植物や水生動物が共存していれば、水中の濁りを濾過してアンモニアなどの栄養成分を植生に供給することになるのではないかと思います。
3,連続性
 ホテイアオイははじめランナーでつながっていても早期に分離してしまいますが、ナガエツルノゲイトウは長い茎なので、連続しており、たぐり寄せることが出来ます。
 鎌に抵抗するほど強固な茎でもないので、引き寄せては切って回収することが出来ます。
 機械を使えば大規模に回収することも簡単で、将来的には乾燥処理を必要としないバイオガス原料として適しているのではないかと思います。
 また、中国の書物によれば野草飼料として栄養が比較的多く、畜産用の餌になるようです。

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<ビオパーク方式>
 ビオパーク方式とは水耕生物(植物)の根間を汚れた水を通して、様々な生物の力を利用して水を浄化するという浄化方式。小松市の木場潟という場所で積極的に取り組んでいる事例がインターネット上で紹介されている。以下のURLを参照。

農林漁業・現地情報ページ          http://www.toukei.maff.go.jp/genti/2000_08/00_085_8.html
木場潟ふれあいパーク            http://www.pref.ishikawa.jp/kasen/kiba/
蓮代寺小学校の総合学習のページです。 http://www.hakusan.ed.jp/~rendai-e/h13/mituhosi/sougo/6nenn.htm
ビオパーク方式の説明のページ       http://www.topecology.co.jp/biopark-j.htm
つくばハイテク・ショーケースのページ    http://www.apgrid.org/sat/japanese/jigyoannnai/2001event/showcase/showprogram.htm
中里広幸さんのEメールアドレス       nakazato@topecology.co.jp

<バイオガス>
 家畜の糞尿や生ゴミを嫌気的に発酵させ得られるガス。主にメタン(CH4:約60%)と二酸化炭素(CO2:約40%)からなっている。主に化石燃焼を使わずにエネルギーを得られるという利点とメタンなどを空気中に放出しないという両面があり、ヨーロッパなどでは利用例が増えつつある。メタンは二酸化炭素以上に温暖化に影響を及ぼす。また、悪臭拡散の防止、水質悪化への影響の減少にも貢献すると言われている。