成田層の成り立ちについては別項でふれているので、ここでは、ふれない。新生代第四紀に古東京湾の底でできた層だ。当然、貝をはじめとする海生生物の化石が成田層には含まれる。成田層は古い順に清川層、上岩橋層、木下層に分かれる。貝の化石など石灰質のものは酸に弱い。これらが化石として残るためには酸におかされない条件が必要となる。成田層では、粘土質の層が適度にあるため、酸性の水の影響を受けずに多くの化石が残ることができたようだ。
北総では印西市をはじめとして、多くの化石を発見できる。化石は北総では実に身近な自然なのだ。しかし、今では、露頭のほとんどは消失しているか、保護の対象になっていて、意外と化石を採集する場所を探すのは大変だ。ただ、幸いといえるのかはわからないが、北総では住宅地のための造成がさかんだ。そのような場所では、あしもとを見ると多くの化石が発見できる。見つけたらすぐに、採集しないと造成地は住宅地になってしまう。印西市など北部では、木下層がほとんどで、清川層などは深部にある。佐倉市などでは清川層などの一部も露頭として見ることができる場所もある。多くの場所では非常に状態のよい化石を発見できるが、深部の層などではモールド(貝殻自体は溶けてなくなってしまっているが型が残っているもの)状態で、触ると崩れてしまうようなものがほとんどの場所もある。
さて、北総では場所にもよるが貝化石などは身近な存在だ。ちょっとした空き地や造成地、切り崩した崖(私有地なので入れないときが多いが)などで貝を中心とする化石が見つけられる。
まず、二枚貝で多いのはバカガイ、アサリ、キオロシアサリ、タマキガイなどだ。ときどき、ハマグリ、ミルクイ、カガミガイ、ビノスガイなど大型の貝もみつかる。タマキガイに似たエゾタマキガイも見つかる。殻頂近く内側に富士山のような形の凹部が多数、みられれば、エゾタマキガイだ。バカガイは寿司ねたの「あおやぎ」、ミルクイは「ミルガイ」だ。ミルクイは見つけるとその大きさに驚く。写真のものも殻高が十数cmあった。キオロシアサリは絶滅種で、今はいない。ところで、二枚貝の二枚の殻は右と左の殻に分かれることはあまり知られていない。二枚貝はべろのような足を出す。この形が斧に似ているためか斧足類と呼ばれる。この足の出る方が貝の前になり、それに対して右、左が決まるそうだ。ザルボウガイやアカガイ、ブラウンイシカゲガイなど肋が目立つなかまもみつかる。知らないとホタテと間違えやすいイタヤガイもあるが数は少ない。トウキョウホタテにくらべ、肋がはっきりとしている。巻貝では大型のアカニシ、バイなどがある。ときとして、小型のアカニシと間違いやすい、セコボラもみつかる。貝ではないが、ウニのなかまのハスノハカシパンも多く見つかる。
貝は見分けにくいが、肋の数、内側の模様、殻頂の形などをよく見ると少しずつ見分けがつくような気がしてくる。まず、代表的なものから覚えていくしかないようだ。
左からアカニシ、ハマグリ、イタヤガイ
左からアサリ、タマキガイ、ザルボウガイ、セコボラ
左からミルクイ表、裏、カガミガイ、ハスノハカシパン
採集地:佐倉市南ユーカリが丘造成地 2002.8、2004.1