血液型の推移シミュレション


(1)はじめに


 ABO式の血液型は、赤血球の膜の表面に結合している糖鎖の先端が、個々人が持っている
転移酵素の種類によって、構造が変わっていることから区別しています。

 具体的には、アセチルグルコサミンが結合しているとA型、ガラクトースが結合していると
B型、両方結合しているとAB型になり、両方ともないとO型となります。
ですからO型はゼロ型といったほうがいいのかもしれません。

 日本人の血液型はABO方式では、

    A型 39%、B型 22%、O型 29%、AB型 10%

とのことです。

 この割合は、1000年後にはどうなるのでしょうか。特にAB型は少ないので、やがてはなく
なってしまうのでしょうか。


(2)遺伝される血液型


 ABO式血液型に関する遺伝子はA、B、Oの3種類ありますが、関係する染色体は2個しか
持てません。したがってすべての組合せは

$\qquad $ AA、AB、AO、BB、BO、OO

の6通りとなります。

 通常A型と表現されるのは、遺伝子型ではAA型とAO型、B型はBB型とBO型があります。
そこで、O型はOOと表記します。

 日本人の遺伝子型の割合はネットでいくつか調べたところ、およそ

$\qquad $ AA型 8%、AO型 31%、BB型 3%、BO型 19%、OO型 29%、AB型 10%

でした。ただし、いずれも出典は明らかではありませんでしたので、おおまかな値としました。


(3)遺伝される子の血液型


 まず、両親の各遺伝子型によって、子の遺伝子型はどうのような可能性があるか調べます。


(i)  AA×AA  100% AA型

(ii)  BB×BB  100% BB型

(iii)  OO×OO  100% OO型

(iv)  AA×AO、AO×AA
$\qquad $
(v)  AA×BB、 BB×AA
$\qquad $
(vi)  AA×BO、 BO×AA
$\qquad $
(vii)  AA×OO、 OO×AA
$\qquad $
(viii)  AA×AB、 AB×AA
$\qquad $
(ix)  AO×AO
$\qquad $
(x)  AO×BB、 BB×AO
$\qquad $
(xi)  AO×BO、 BO×AO
$\qquad $
(xii)  AO×OO、 OO×AO
$\qquad $
(xiii)  AO×AB、 AB×AO
$\qquad $
(xiv)  BB×BO、 BO×BB
$\qquad $
(xv)  BB×OO、 OO×BB
$\qquad $
(xvi)  BB×AB、 AB×BB
$\qquad $
(xvii)  BO×BO
$\qquad $
(xviii)  BO×OO、 OO×BO
$\qquad $
(xix)  BO×AB、 AB×BO
$\qquad $
(xx)  OO×AB、 AB×OO
$\qquad $
(xxi)  AB×AB
$\qquad $

(4)仮定


シミュレーションするにあたって、次のような仮定をおきます。

(1)血液型に男女の差はない。つまり、同じ母集団分布に従う。(これは正しいようです)
(2)両親の遺伝子型によって遺伝される子の遺伝子型は、どれが選ばれるのも同様に確からしい
(同じ確率で選ばれる)とする。
(3)稀にある特異なケースは考慮しない。(必要がない)
(4)世間でいうところの、血液型による相性は考えない。すなわち父親、母親は任意抽出される。


(5)方法


ソフトはExcel VBAを用いました。
一様乱数を3個用い、1つ目と2つ目で、父親と母親の遺伝子型を決めます。
例えばこれがAA型とAO型だった場合、子どもの遺伝子型は、3つめの乱数 wが
  w<0.5 ならば AA型とし、w>=0.5 ならばAO型とします。

これを10万回繰り返して集計し、各遺伝子型の比率を求め、第2世代の分布とします。

次に、得られた第2世代の分布をもとに、再び10万回計算し、第3世代の分布を求めます。

これを100世代繰り返して、得られたデータをグラフにしました。
なお、計算は20秒もかかりません。さすがExcelです。

$\hspace{5em}$

これからわかることは、

 100世代、およそ3000年経っても血液型の比率は大きく変化しない

ことです。

何となく安心しました。
というより、大きな集団における遺伝子の割合は安定しており、これを

  『ハーディ・ワインベルクの法則』といいます。

この法則が破れるのは、
(1) 外部からの要因として、民族の大移動
(2) 内部の要因として、特定の血液型を持った人が新種のウイルスにより死亡
(3) 何らかの原因による優性的突然変異

などが考えられますが、SF小説ではありませんので心配する必要はないですね。



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