中国では毎日が縁日

  中国ではぶらぶらしている人が多い。これは人が多いことが理由の一つかもしれないが、それだけではないような気もする。仕事をしながらもぶらぶらしている人も多いようだ。私が住んでいた集合住宅の5階から下を見ると、店番の人と近所の人が前の通りに出てトランプをしているのがよく見えた。仕事をしていないお爺さんお婆さんも外に出てよく散歩している。食堂の前では、お爺さんが椅子を出して、そこに座っている姿もよく見かける。暑い季節には夜になると家族がそろってぶらぶらと散歩に出てくる。中国人はあまり家の中に引きこもっていない様である。日本などよりずっと外へ出歩くらしい。

  日本の住宅街では、昼間も夜もひっそりとしていて人通りが少ない。日本では昼間は働いている人が多いし、老人は家に居てもあまり外に出ない。しかし中国は違う。私が住んで居た家の近くにはスーパーがあって、その店の前が広場になっているのであるが、そこにビアガーデンが出来て、広場の周囲に各種の食べ物の出店が並び、毎日が縁日のお祭りのようであった。この賑やかさはビヤガーデンのお蔭とも言えるが、ビアガーデンが無い所でも賑やかなのである。人が集まりそうな街角と言うのがあって、そこには用が無くても、毎晩人が集まって来て賑やかであった。

  しかし人が集まりそうな所には、羊の串焼きを売る屋台などが、自然と集まって来るのも確かである。その大規模なものが夜市と言われるもので、このような店が集まるところは、それこそ毎日が縁日のお祭りの様に賑やかなのである。その賑やかさが毎晩続くのである。縁日の期間だけというわけではない。この様に中国人が家に引篭っていないで、よく外に出る習慣は、中国の家が狭くて夏は暑いと言う理由だけではなさそうである。確かに北京の夏は暑く、家も狭くて風通しが悪い。しかしそれだけが原因ではなくて、日本とは違った生活習慣によるものだと思う。このことから見ても、中国では人と人との付合い、が濃いと言えるかもしれない。

  しかし私がほんの少しアパートに住んでみたところでは、単に隣人と言うだけでは、日本人よりはかなり冷淡な付き合いの様に見えた。人との付合いが濃いから隣人とも親しく付合うということではなさそうであった。

  夜になると外に出てぶらぶらするのが、中国の夏の夜の風物詩であるが、その中にシャツの裾を捲り上げて、腹をさすりながら歩いている人が多いのは何故なのだろうか? これは夜だけに限る訳ではく、昼までも見られる光景である。丸く突き出た腹を撫ぜながら歩いている人をよく見かた。私の腹も最近は丸く突き出てきたのであるが、中国人の真似をして、腹を撫ぜながら歩いてみると、全く中国人に同化してしまった気分になってくる。中国では腹を出したり上半身裸でいる男の光景は確かに多いのである。北京の夕刊紙を見ていたら、国際都市である北京であるのに、赤裸の男がぶらぶらしているのは恥ずかしいと書かれていた。北京の郊外の私営バスの運転士は、裸で運転していた。しかし私が不思議に思うのは、赤裸の腹を撫ぜながら歩く人が多いことである。