日本人の先祖は中国人

  中国の夜行列車に何回か乗ったが、殆どの場合身分証明書(外国人の場合パスポート)をチェックして記録する。その記録をするのは女車掌の場合が多かったが、ハルピンから満州里へ行く列車の場合は、鉄道警察官であった。この警察官が話好きの人で、私のパスポートをチェックするときに、ひとしきり私の側で話をしていき、次にはハイラルで殆どの人が降りて汽車の中がガラガラになると、また私の所で止まって話しを出した。

  話の内容は、中国の周囲の国の多くは、中国人が作った国だと言うもので、日本へも多くの中国人が行ったと言うことであった。その根拠として秦の始皇帝の時代に、ある男が始皇帝の命令を受けて、不老長寿の薬を求めて、日本に渡ったことがあったと言う。その男が連れて行った沢山の少年少女が日本人の祖先になったと言う話である。実際にこの話は中国でよく聞く話で、これを根拠に日本人は中国人の子孫だと言う人は多い。この鉄道警察官は歴史や伝説にも結構詳しく、この始皇帝の時代の男が、不老長寿の薬を探すと称して、始皇帝を騙して金を出させたとか、探しには行ったがついに戻らなかったということを話した。またその後の時代になると、大勢の中国人が樺太を通じて日本に渡ったという説であった。始皇帝の時代の話は聞いたことがあったが、後の話はあまり聞いたことが無い。このように中国を世界の中心と考える中華思想なのなのかと思って聞いていた。反論したいとは思ったが反論するだけの中国語は話せないので黙って聞くしかなかった。自ら歴史が趣味だというだけに歴史には詳しいらしく、このあたりで日本がロシアに負けた、ノモンハンのことも知っていた。

  冗談も言う人で、話に参加してきた太った女性の車掌を、彼女は蒙古族だと言い、チョット綺麗でおとなしそうな車掌を指して、彼女は日本人の血が混じっているとか冗談を言っていた。この地で見た蒙古族は確かに下膨れの顔であった。この鉄道警備員が認識している日本女性とは、美人であるのかもしれない。

  近くに寄ってきた女の車掌さんも、興味深そうに、給料は幾ら位いか、3千元位は貰っているのかと聞くので、退職前は3万元位だと言ったらづっこけていた。日本では給料も多いが、日本の物価は高いのだと説明はしたのだが、日本の実状を知らせるのはなかなか難しい。何時もの通り、中国の米の値段の5kg130円位から比較すると、日本の米は十倍以上するのだと説明をした。

  今度の中国旅行で10回以上は汽車に乗ったが、中国の車掌や鉄道警備員は結構のんびり仕事をしている様であった。ある列車の食堂車では、従業員が食堂車でチンチンに冷えたビールをの飲みながら談笑していた。乗客には生ぬるい冷えていないビールを出しているのにである。仕事を終わってからのことだと思うが、日本の職場の様子とチョット違うようであった。中国の職場はのんびりとしていて、楽でいいのかなと思った。ある人の意見では中国の汽車の食堂車は、従業員に食事させ為にあるのだと言って人がいた。本当かもしれない。