騙され易い中国人

  中国人のツアーに参加して、中国人と四日間を一緒に過ごしたのであるが、中国人も日本人と同じく、結構おみやげ物を買う。お土産屋では中国人の好きな翡翠のペンダント様の物などを、熱心に値切って買い物をする。こういったお土産屋では、言い値で買う中国人はいないようである。四川省の九寨溝の珍しいもの物としては、牛の角で作った耳かきを売っていた。これは大して高い物ではないのだが、私の隣のおばさんは、それを10本纏め買いをして半値に値切ったとか言って、ツアーバスの中で皆に自慢していた。他の人もそれぞれがお土産を値切って安く買えたと、報告しあっていた。誰もが値切りながら買い物して楽しんでいる様である。しかし中国人は買い物の際には値段に厳しいし、偽物ではないかなどと結構うるさいのである。

  ところが、買い物に厳しい中国人であっても、ころっと騙されるところがある。ツアーの途中で強制的にお土産屋に立ち寄るのであるが、宝石の類を売っているお土産屋があった。宝石と言っても中国人の好きな金とか翡翠などが多く、ダイヤやプラチナの類は無かった。そこでは天然水晶の製品も売っているのであるが、天然水晶の製品の一つとして何故か、サングラスが大量に並んでいた。私がこのサングラスは天然の水晶かと聞いてみても、確かに天然のものだとの答えであった。サングラスであるから黒い色が付いているのであるが、このガラスは光に当てながら、回転させると明るさが変化する。店員はこの実演をしながら、ほれこのとおり天然の水晶だと言うのである。私の知識からすると、これは偏光ガラスであって、天然のものではなく、日本ではサングラスや、カメラのレンズのフィルターに使われているものである。サングラスのデザインは同じ物ばかりで、ガラスの部分が全くの平面(メガネの玉が曲面になっていない)であって、重そうなものであった。日本のサングラスから比べると、相当野暮ったいものであった。

  このサングラスは高いにも関わらず、天然物だと信じて買っていく中国人は多かった。もしかしたら中国人は天然物には弱いのかもしれない。同じツアーでは漢方薬(中国語では中薬という)を沢山並べてある店にも、ツアーバスは止まった。ここにはチベット族が住む高山で採れるという、高価な漢方薬の原料が沢山並んでいた。これ本当の天然物ではある。しかし薬であるからあまりお土産にはふさわしいものとも思えないのだが、高価な薬草の類を買っていく中国人は多いのである。

  私の観察によると、中国人は、どうも"天然の物"とか、"体に良い"とか、"薬"などのキーワードには弱い様である。であるから何か怪しげな物を売りつけるときには、このキーワードを使うことによって、用心深い中国人も騙せすことが出来るかもしれない。