第5章 モンゴメリのありのままの恋愛(3)
モンゴメリが16才の7月に書いた日記にこんな記述があります。
「今夜ソファーにすわっているとき、ウィルから指輪を返してもらった。でも明日『永久』にあげると約束した。ウィルはまた私の巻毛をひと房欲しいと言った。断るふりをしたけれど、考えを変えるかもしれない。
滑稽でしょう? これが将来何か特別な関係に発展するのかしら? いいえ、もちろんそんなことはないわ。私たちはただいい友だちでいるだけ。これまで会った男の子のうちでウィルがいちばん好きだけど、愛していないことはわかっている。彼はちょうど兄弟か、愉快な仲間のようだ。」
(『モンゴメリ日記』桂宥子訳 p.159)
好意を寄せるボーイフレンドがいて、確かにちょっと大胆な行動もとっていて、でも「兄弟か、愉快な仲間のよう」って書いています。
ウ〜ン、これってアンとギルバートの関係と似てませんか?
『友情』や『愛情』でギルバートがどんなに友達以上の視線を送っても、アンに拒まれ続けていた描写と同じニュアンスじゃないでしょうか。
やっぱりモンゴメリって、自分で思ってる以上にアン似の乙女だったのではないのかなぁ。
とここでふと、とあるBBSに書き込まれていた女子高生の言葉を思い出した私。
レオナルド・ディカプリオ主演の映画『タイタニック』に感動した女子高生は、確かにこう言っていたのです。
「でも、主人公たちが演じる愛の表現シーンはなくてもよかったんじゃないかなと思っています。 なまじ全体の印象が美しかっただけに、あの場面にとてつもなく違和感を感じてしまったのですよ。」
16〜7歳の頃って結構こんな感じなのかもしれませんよね。
まだ恋愛に憧れていたくて、具体的なものは特に欲していない純な年頃・・・。
モンゴメリがアンとエミリーのどちらにより近いのか、そもそもアンとエミリーの違いはどれほどのものなのか、私にはよく分かりません。
モンゴメリ自身は、ウィーバーから 'Of course Emily is another Anne.' (エミリーは当然もう一人のアンですよね。)と書かれた手紙を貰って、'Well, she may be but if so I have entirely failed in my attempt to "get her across" to my readers.' (そうなってしまったかもしれませんが、それはうまく表現できなかった私の失敗です。)と答えています。(『ウィーバー宛書簡』p.114-115)
しかし、エミリーの設定をアンとは異なるものとして置いた(つもり)にも関わらず、全体として同じような人物像として動いたということから見ても、この二人に共通する部分にこそモンゴメリという女性の本質が表現されているように感じる私です。
というわけで、本当のアンとモンゴメリを知るために、ジグソーパズルのピース集めは続く♪