第1章 文通相手がモデル!?(2)
早速、ウィーバーの人物説明にあった「メノナイト」という聞き慣れない名称についてネットで検索。
すると、ペンシルバニアドイツ語を話す人々で、同じ言葉を話す人々のコミュニティにアーミッシュがあることがわかりました。
アーミッシュといえば、2006年10月に起きた学校少女射殺事件を憶えている方もあるでしょう。
人類愛と絶対の平和主義を信条に、文明と虚飾を嫌い、18世紀そのままの質素で穏やかな伝統的暮らしを営む、プロテスタントの一派・アーミッシュ。
この事件は、アーミッシュの人々が居住する地区の学校に侵入した男が、教諭や男子生徒を教室から追い出した後で女子生徒らの頭部を至近距離から撃って殺害したというその犯行の残忍さ以上に、殺害されたまだ13歳の少女が年下の仲間を救おうと犯人に対して「私を最初に撃って、ほかの子たちは解放して」と訴えていたことが、世界に大きな衝撃を与えました。
そんなアーミッシュと同様、徹底した平和主義で知られる人々のコミュニティがメノナイトだそうです。
ウィーバーは30歳までカナダのメノナイトに属していましたが、研究活動を志した彼は高度な知的活動を忌むメノナイトから1900年に離脱。
そんなウィーバーと、モンゴメリは1902年から文通を始めました。
ちなみに、ウィーバーは19歳まで家族の農場を手伝っていたため、20歳で高校に再入学した時にはクラスメイトよりも四歳年上の存在だったそうです。
そして、1896年にカナダ西部のノースウェスト準州アルバータ地区(1905年にはアルバータ州となる)にあるウォータールー・メノナイト・コミュニティに居たことがあるらしい。
これらの事実はモンゴメリが、1904〜5年には執筆に入っていたという『アン』の中で、
「でもこれからは、ギルバートがあんたのクラスに入るわよ。言っとくけど、前は彼がクラスで一番だったのよ。彼はもうじき十四歳になるのに、まだ四の巻なのよ。四年前、お父さんが病気になったとき、静養のために本土西部のアルバータへ行くことになって、ギルバートも一緒に行ったのよ。そこに三年もいたけど、ほとんど学校へ行かなかったんですって。これからはそうやすやすと一番にはなれないわよ、アン。」
(松本侑子訳『アン』P.170 集英社)
とダイアナに語らせている台詞を彷佛とさせます。
ウィーバーがいたというアルバータ(Alberta)州に、ギルバート(Gilbert)もいたなんて面白い♪
そして、人文科学や芸術、詩、政治学に精通していたというウィーバーは、もうひとりの文通相手であるジャーナリストで詩人志望のマクミランと同様に、あるいはそれ以上に、アンの次男坊ウォルター(Walter)の「美を愛する詩人」という設定と重なるように思われます。
絶対平和主義のメノナイトだったウィーバーと、美を愛するあまり戦争の醜さを忌み嫌ったウォルター。
ギルバート(Gilbert)とアルバータ(Alberta)、ウォルター(Walter)とウォータールー(Waterloo)・・・これらは偶然?
もしかしたらモンゴメリは、文通相手のウィーバーを『アン』とアン・シリーズの主要人物であるギルバートとウォルター、二人のモデルにしてたかもしれませんね。
書簡が邦訳されていないウィーバーが、ギルバートとウォルターの原型かも♪
これはとても面白いピースが見つかりました。