西北旅行<3>
トルファンの屋台話
トルファンでは随分面白い日本人に出会いました。
やはりドミトリーで一緒になった方の世界を周って体験した話は面白かった。当時,彼の旅は現在進行形だったわけ ですが、ロシアやオランダで襲われて銃を突きつけられ身包み剥がされた話を聞いて中国の治安が他国と比べて それほど悪くは無いと感じ入ったものです。しかし、色々な日本人の中でも群を抜いて笑わせていただいたのが走っ ている列車を停めてしまった日本人の話です。ちょっと思い出してみましょう・・・・。
トルファンの夜、日本人にとっては物珍しい屋台のメニューに舌鼓を打ちながらトルファンに来るまでの体験談に 花が咲くバックパッカー達・・・。それぞれが持ち寄る話は実に楽しいのであるがその中の一人A君が留学生の私に こう言って来る・・・
A「ねーねー、列車を停めた日本人の話聞いた?」
嘉飛「はぁ?何それ・・・聞いたこと無いけど・・・」
A「聞いたこと無い?ならさ、聞いてやってくれよ!こいつの話」
そうしてB君が口を開き始めた・・・
私と同じように列車でトルファンを目指したB君は列車内で知り合った日本人と合流し旅をしていた。とある駅で停 車した列車の外を物売りが。その中にアイス売りがいたのを見つけたこの日本人数人は中国アイスを味見しようと 列車を降りアイスを買いに向かった。停車しているホームにアイスがなかったことからわざわざ反対のホームまで買 いに行った日本人数人は無事にアイスを買った(と思う)。しかし、発車時間が迫った列車は警笛を鳴らして出発を 合図、B君以外の日本人は皆反対ホームを駆け降りて列車に戻った。しかし律儀なB君はホームを渡るのに歩道橋 を使用・・・結果列車は走り始めてしまった!やばい!!瞬間的にそう悟ったB君は走り去ろうとする列車に走り寄 る!そしてそのまま列車最後部の手すりに捕まり出発した列車に飛び乗ったというのだ!
嘉飛「で、中に入れたの?」
B「いや、そのままへばり付いてた」
嘉飛「えええ?じゃ、走る列車にへばりついてたの?」
B「そう!」
嘉飛「・・・・・で、次はどうしたの?」
B「とりあえず中に入ろうと目の前のドアを開けようとしたけど開かなかった。でもすぐ目の前の車輌の人民が 気づいてくれた。人民はすぐ目の前にある窓を開けて入って来いとジェスチャーしたから
その窓に手を伸ばして開けてみた」
嘉飛「そこから入ってきたんだ?」
B「いやいや、窓を開けたらサトウキビが大量に置かれてて入れなかった」
嘉飛「あはははは。さすが中国!で、どうしたの?」
B「仕方ないから次の駅までそのまま粘るつもりでいた」
嘉飛「粘るって、おい!下手すりゃ死んじゃうじゃん。で、そのあとは?」
B「さっきの人民が、待ってろ乗務員を呼んでくるから・・・と言っていたと思う。
加油(ジィァヨウ)だっけ?頑張れって言っていたとも思うけど・・・」
A、C「その頃こっちはさ、Bが帰ってこないから乗り遅れたんだろうなぁ・・・行き先は同じだから荷物の
面倒は見てやろうかなぁ・・・なんて話してたのよ。そうしたら列車中が騒ぎ始めてさ、
乗務員が日本人が・・・!日本人が・・・!と喚いてるんよ。よく聞き取れないんだけど、
お前達の仲間がどうのこうのと乗務員に言われてさ・・・とにかくBのことのようだとは思ったんだけど」
B「そうなんだよね・・・騒いでるのがよく分かってさ。列車が緩いカーブに差し掛かるじゃない?
すると殆どの窓から人民が俺を見るのよ!そして何か言いながら手を振ってるんだよ!
だから俺も声をあげながら手を振って答えたんだよね、あっはっは」
嘉飛「あはははは、全列車中の注目の的だったわけね。で、その後は?」
B「暫らくして列車が速度を落し止まって無事に列車に乗れたわけよ。でさ、自分の客席に戻るのに他の車輌 を通るんだけど人民に騒がれてさ、笑顔を振りまきながら手を振って答えたよ」
嘉飛「人民喜んだろうなぁ、ただでさえ長旅で退屈しているのに客が列車に飛び乗ってしがみ付いていたなん て・・・ましてそれが外国人で日本人だったんだから」
A、C「でさ、ちゃんとオチがあるのよ。Bがさ俺達のところに戻ったらさ、乗務員のお偉いさんに始末書かかさ れたんだよ。内容は・・・<自分のせいで列車が停車し予定時刻がずれました申し訳ありません>
みないな感じかな。」
嘉飛「向こうも必死だったんだろうね。でも賠償金請求されなくて良かったね」
A、B、C「そうだよなぁ」
嘉飛(笑いをこらえながら) 「それにしても・・・俺も中国3年になるけど、初めての中国旅行で列車を停めて・・・あげく 始末書かかされた日本人なんて初めて会ったよ!伝説ですね!!」
この夏聞いた一番の体験話と位置づけたこの話は今でも忘れられず記憶しています!
もしかしたら多少話の内容が変化してしまっているかもしれないが、まぁ9年も前のことですからその辺は
ご愛嬌ということで・・・。
そんな強者が集まった屋台では皆が美味しい羊肉串(羊の串焼き)・・・シシカバブーに舌鼓を打っていた。北京や洛 陽の羊肉串も美味しいのだが小さくてちまちましているがこっちの羊肉串は大きさ的も3倍はあったから値段もいい ぶん食べがいもあった!
「嘉飛さん中国語できるでしょ?他にも何か食べ物の名前教えてよ。次に一人で使うから・・・」
そういわれて何品か思い浮かぶ品名を教えた。あれも食べてみたい、これも食べてみたい・・・皆異国の珍味に興味 はあるようだがこれ(下)だけはダメなようだった・・・
名前は知らないが要は羊の丸焼きならぬ丸煮込み・・・
ま、私も苦手なんだけど(^_^;)
そんなこんなでトルファンの夜は楽しく過ぎていったのである。
トルファン賓館のそばには日本語を流暢に話すウイグル人が多い。仲良くなると旅行の相談に乗ってくれたり、驢 馬車に乗せて辺りを回ってくれたりもします。でも、日本語をそれだけ流暢に話すということは日本人を商売相手に しているわけですからボラれる可能性もあるわけで多少注意は必要かな。
ウルムチへ
居心地が良かったトルファンを離れウルムチに行くことになった。
8月25日には葡萄祭りがあるのでそれまで残りたがったが致し方ない。
ウルムチ行きのバス停で知り合った僕を含めて三男一女(嘉翡、D、E、F)
が一緒になってバスに乗り込んだ。

クーラーの効かない車内に詰め込まれた。正直言って暑苦しい!普段の私なら窓際に陣取り外を眺めながら気を 紛らわすのだが、後部座席中心部ではどうしようもなかった。
途中で崖崩れのためか車の往来が止まり30分以上停車したままだったので、目の前の川に下りて暫らく水遊び! 雪解け水のせいか40度になる気温の中も長く浸かっていられない程の冷たさ!川の中の石をひっくり返して見ると 日本と同じようにカワゲラ等水生昆虫の幼虫がいたので、どんな魚が生息しているか興味がわいたが残念ながら魚 は見ることができなかった。

再出発した後のバスは辛かった。なまじ水遊びなんぞして快適さを味わってしまったがためにかえって車内の環境 が辛く感じたのだ。風光明媚なトルファン盆地を抜けると後はだだっ広い砂漠。土煙を上げながら進むバスは窓も 開けられないし景色も見れない。この時間帯は辛かった。
ウルムチ市街はトルファン市街と比べて実に対照的だった。さすがに省都だけのことはある。ただ現代建築物だけ の町並みにトルファンほどの魅力は感じなかった。暫らくしてバス停留所に着いた私達はバスの屋根に網を被せて 積まれていた荷物をそれぞれ降ろした。しかし、問題発生!私の荷物だけが妙に固く縛り付けられていて網から外 れないのだ。下ではバスの運転手が間も無く出発時間だから早くはずせと喚いている。
「お前等がこんな縛り付け方するから荷物が取れないんじゃないか!!」
相手が聞き取れないことをいいことに私もぶつぶつ言いながら網を解こうとする・・・が方結びで幾重にも縛られた網 はいっこうに外れない。すると同伴したD君にちょっと運転手達から見えないように動いて欲しいといわれたので身 体を荷物に被せる形をとるとD君はポケットからサッとナイフを取り出し私の荷物に被さっている網の結び目をブチ ブチッと切ってしまったのだ。おかげで私の荷物は無事に降ろすことができバスも時間通りに離れていった・・・。
ありがとうD君!おかげで助かったよ・・・・っていいのかなぁ(^_^;)
さて、宿探しをしながらウルムチ市内を歩いた我々はいきなり洗礼を受けた。ベンチに腰掛けたFさんがいきなり スリにあいそうになったのだ。ベンチの後ろからウイグル族の少年が鞄に手を突っ込んでいたが気づかれた少年は 勢いよく走って逃げ去った。幸いにも何も取られなかったようだが。
紅山賓館に宿を求めた我々一行はドミトリーを希望したがすでに満員でベッド無し・・・仕方なく二人部屋を二つ取る 事に。ジャンケンでFさんと相部屋になってしまった私はなんとなく部屋に戻りにくく、久しぶりのバスタブつきの風呂 にも入れないまま夜中までD君に付き合ってもらいよもやま話に花を咲かせた。D君が部屋に戻ると暫らくタバコを 吸いながらソファーで時間を潰し夜明け前に寝ているFさんを起こさないように部屋に入り就寝・・・。
その約一時間半後、
「それでは嘉飛さん、お世話になりました。またご縁がありましたら会いましょう」
とFさんは5時半くらいに荷物をまとめて旅立っていった。彼女が出発したので気が緩んだ私は一気に爆睡モード へ。起きたのも昼近くであった。しかし、一人部屋に一人となってしまった私は別の部屋へ強制移動、そして大連に 留学している日本人のGさんと一緒になった。部屋を移った直後この旅一番の悲劇が・・・部屋の料金を払った直後 財布を紛失!失くしたのかも掏られたのかも一切不明、損失金額はなんと約1000元・・・・はっきり言って血の気が 引きました(T_T)。出発前から何かとありましたがここまで来ると自分の馬鹿さ加減にあきれます・・・。
その日は翌日の天池へのバスツアー参加予約と敦煌へ行くための列車のチケットを手配し、辺りを散策した。大 きな広場で氷で冷やしながら作っている手作り牛乳アイスを発見!妙にねっとりして素朴な甘さだった。少し前には まったトルコアイスと関係はあるのだろうか?ねっとり感が似ているようだったが・・・。夜は夜でGさんと夜のウルム チを散策しながら真っ赤に熟れたスイカや焼きたてのナンを食べたりしてすごした。パリッとしてホクホクのナンはそ れだけでも十分に美味しい!少し驚いたのが冷えて硬くなったナンをお皿代わりにして使っていたことだ。これが結 構硬くて(歯が立たない程)大きさ的にも新疆の大きめな羊肉串を置くにはちょうど良い大きさだった。
さて、翌日に天池を控えた私は部屋に戻るとウォークマンを聴きながら就寝体制に。そこでGさんが私が何を聴い ているのか聞いて来た。ゴダイゴのベストですよ!そう答えると
Gさん「はぁ?今時いないよそんなヤツ!」
嘉飛「そんなこと無いですって!この旅になかなかマッチしていいですよ。ここに来るまで2人ほど持っている 旅行者見ましたし、中にはダビングしていった人もいますよ」
Gさん「嘘言うなよ(笑)!」
嘉飛「いやいや、いいもんですよ。モンキーマジック、ガンダーラ、はるかな旅へ、
リターン・トゥ・アフリカ、ナマステ・・・アジアの旅の友ですね。
澄んだ空気の中、満天の夜空に光る星を見ながら列車に乗って
銀河鉄道999ってのもいいものですよ!」
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っと、こんなやり取りをしながら眠りについたのでした。
でも、音楽聴きながら旅すると、後々その音楽を聴くだけで旅の情景を思い出せるので
私的にはお薦めです。シルクロードを抜けて行く人やチベット、インドと抜ける人は
ゴダイゴを是非どうぞ!(^_^)b
西北旅行<4>
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