Coherent CW (CCW) 入門

                                                                   間 幸久   JA5FP           Feb. 05 2000
 
 

1 CCWの概要

    Coherent CW (CCW)とは、送受間で同期されたモールス通信方式です。何を同期しているかというと、一つはキャリア周波数であり、二つめにはモールス符号の長さとタイミングです。具体的にいいますと、送信周波数と受信周波数は数Hz以内に合致していること、符号の基準(ドット)長が100ミリ秒でありダッシュ長及びスペース長が300ミリ秒である正規のモールス符号になっていること、符号の立上がりタイミングを一致させることが条件です。
    CCW方式を実現するハードウェアの設計上の留意点は次の通りです。

    CCWの特性は次の通りです。


 

2 CCWファミリーの歴史と現在

    CCWは、Raymond C. Petit, W7GHMがQST Sep. 1975に「Coherent CW Amateur Radio's New State of the Art?」を発表して始まりました。
    ハードウェアの実際は、Wesley Y. Hayward, W7ZOIやCharles E. Woodson, W6NEYが発表しています。W6NEYは、Coherent CW Newsletterを発行したり、来日してCCWフィルタのPCBを頒布してきました。関根慶太郎さんJA1BLVがHAM Journal No.5で詳しい解説をしました。筆者JG1EEEは10MHz帯の実験装置を作りHAM Journal No.64に発表しました。
    しかし、現在に至ってもCCWはマイナーに留まっており、2way QSOを成功させたという話は聞いたことがありません。CCWが普及しなかったのは、CCWフィルタを自作しなければならないことがネックになっていたものと思われます。厳密な周波数管理が必要な上に、送信のキーイングは定速度で打ちにくいし、受信操作もマニュアルでタイミングを捕らねばならず、総じてマニアックな側面が敬遠されているようです。
    次に、Bill de Carle, VE2IQがCOHERENTというプログラムを書きました。これは、CCWフィルタをパソコンの中で実現したということで、CCWが画期的にユーザフレンドリになりました。自動同期の機能が含まれていますので、手動で符号同期をとる必要がなくなりました。また周波数管理についても、1Hzのアップダウン制御が出来るトランシーバに対して、自動引込みが可能となりました。もちろん、キー入力はパソコンのキーボードから行えますので、定速度送信について運用者が気にする必要がありません。
    さらに、Ernst F. Schroeder, DJ7HSはPrecision CW (PCW)に拡張し、PCWというプログラムをシェアウェア提供しています。PCWでは、オーディオのAFC機能を充実させ、COHERENTがやっていたトランシーバの制御を不必要にしました。PCWを使えば、普通の安定度のトランシーバとパソコン(サウンドブラスタ付き)だけで、簡単にかつ高精度のCCWを行うことが出来るようになりました。
    Precision CWは、元々のCCWの符号速度である100ミリ秒(speed=60)の他に、150ミリ秒(speed=40)と50ミリ秒(speed=120)を用意してあり、運用者の好みで選択できます。
    PCWはCCWの一種ですから当然CCWの長所を持ちますが、CCWより優れているPCWの特性をあげると、次の通りです。
 

3 CCWの運用

    現在のところCCWの運用者は極めて少ないので、自然に出会ってQSOする機会はほとんどありません。そこで、特定の周波数を決めておいてオンエアするか、特定の相手とスケジュールを組んでQSOするかのどちらかがとられます。
    Peter Lumb, G3IRMによると、各CWバンドの下から20kHzを推奨周波数にするそうです。実際にこの周波数でCCW局が聞こえたことがないので、ちょっと不安があります。Ernst, DJ7HSの最近のメールによると、バンドエッジ30kHzとのことです。一応、28,030/21,030/14,030/7,030/3,530/24,920/18,098/10,130 kHzを注意します。
    筆者は、時々14,110/14,030/7,030kHzでCQかVVVを出しています。E-mailによるスケジュール設定も歓迎します。筆者とのスケジュールはこちらへどうぞ。
    また、当分の間JA1YAN(東京池袋)のCCWビーコンが 10.140MHzで、 6.8分毎に出ています。受信実験に使えます。
    運用上の配慮としては、しばしばドットの連続を送信して相手方のクロック同期をとるとよいでしょう。
    ソフトウェアにAFC機能があるとはいえ、トランシーバの安定度は必要です。また、10Hzステップの同調では少し使いづらいので、1HzステップにするかRITを使うかの工夫が必要でしょう。
 

4 ソフトウェアの扱い

    PCWは、Ernst F. Schroeder, DJ7HSのシェアウェアです。次のURLから30日の使用期限付のプログラムがダウンロードできます。登録はUS$ 30.00で、正規版とマニュアルが送られてきます。
          http://www.muenster.de/~welp/sb.htm#cw
    このプログラムはDOS用ですので、Windowsで動かす場合にはMS-DOSモードにし、us.batをコールして英語環境になっておきます。
    サウンドブラスタは、SB16 SbPro(互換を含む)で動作が確認されています。PCWのモールス信号はCOM1等のRTS(pin 4//25 7//9)に現れますので、これを適当に制御トランジスタ等を介してトランシーバのキーイング回路に接続します。
    PCWの設定や操作は、画面で直観的に分かります。
 

5 CCWの動作をより理解するために

    CCWはデジタル技術を用いた、究極のCWです。技術的な興味のある方は、次の参考文献をご覧下さい。

    注  CQ出版社のバックナンバーコピーサービスがあるので、http://www.cqpub.co.jpを参照して下さい。