コヒーレントCW(CCW)についてのノート(訳文)

    このノートは、読者がコヒーレントCWを運用するアイデアをお教えするために、G3IRMが書きました。誰でもが知っているとおり、モールス符号は文字と数字及び句読点を表すドットとダッシュで構成されています。基本単位は、送信速度に従ってあらかじめきめてある長さのドットです。高速度では短いドットになります。手送りのモールス符号や半自動や自動キーで送られた符号そのものは、必然的にランダムで、文字が正しく送られたとしてもスペースはかなりちがった長さになります。

    コヒーレントCWの標準速度は、Ray Petit W7GHMがこの方式を設計したときに、12語/分を採用しました。実際にはドットの長さを100ミリ秒に固定することにしました。符号間隔も当然に100ミリ秒に、ダッシュと文字間隔は300ミリ秒に等しくなりますし、他の全ての間隔は100ミリ秒の倍数になります。このタイミングは今日でも使われ、COHERENT及びPCWの両方のプログラムでコヒーレントCWができます。RS232インターフェイスを介して2台のコンピュータを接続し、COHERENTを走らせている1台とPCWを走らせている他の1台との間でも両立性があるので、完全な通信が出来ます。オンエア通信には、トランシーバを接続するだけでよいのです。

    コヒーレントCWは、完璧に単位長に基づく正確なタイミングに依存します。いま互いに時間的に独立した2つの矩形波が、別の発振器から出されており、マーク長とスペース長は全て100ミリ秒だとして、両方の発振器が同時に動作を始めかつそれぞれのクロックが全く安定であれば、長期に現状保持状態になることは明らかです。元々のハードウェア式のコヒーレントCW方式はこの原理に基づいていましたので、送受双方に高安定度の基準発振器とトランシーバが必要でした。そのような機器を準備することの難しさが、コヒーレントCWが一般化しなかった大きな理由です。

    今日のコンピュータ プログラムは、上記の事情を変えてくれました。適度の安定度のトランシーバがあれば周波数標準は必要なくなりましたが、システムに安定度のより良いトランシーバとコンピュータが使われれば、より良い結果がでることになります。

    先程の2つの矩形波に戻ります。これらは、ドットと符号間隔が既定長のドットの集まりのように見えます。このようなドットの連続を送信する一方の局を設置すると、受信端のタイミングが別の矩形波と一致したときだけ正確に受信できます。完全なタイミングが両端にあると仮定すると、正しい受信を阻害するのは両矩形波の位相関係だけです。もし一方の矩形波の立上がりが他方のそれと全く同時に起きるならば、信号は同期している(コヒーレント)といい、後の送信も一致します。元々のPetitのハードウェアフィルタを使うとこの動作は、送信局がドットの連続を送信する時に受信局において位相制御器をドットが正しく区別されて受信されるまで調整することで実行されます。ひとたびこれが合うと、タイミングが完全であると、両局は長期の保持状態になります。送信されたドットやダッシュは、通信の相手方で受信されますし、スペースはどんなに長くとも単位長の倍数ですから、スペースの後のドットとダッシュは受信機のクロックの立上がりでやはり始まります。これがコヒーレントCWの働き方についての簡単な説明のあれこれですが、この方式に含まれている原理に関するいくつかのアイデアを紹介しました。繰返しますと、正しい運用を確保するには全ての発振器が極めて正確かつ安定でなければならないということに尽きます。

    2つのコヒーレントCWプログラムが手にいります。初めのものはCOHERENTといい、Bill de Carle VE2IQが書いており彼自身から入手できます。もう一つは、PCWというBillのプログラムに手を加えてErnst Schroder DJ7HSが書き直したもので実験者というより運用者向けのものです。これはこのディスク上でPCWという名前のプログラムです。

    両プログラムによって、高安定発振器は必要性が消えました。自動同期が含まれたので、位相制御が必要なくなりました。プログラムがコヒーレントCWの連続ドットを受信すると、自動的に同期します。コンピュータのクロックと最高のトランシーバでさえ少しはドリフトするので、周波数ドリフトの自動修正の手順が両プログラムに書かれています。COHERENTでは、これは対応するトランシーバの周波数アップ/ダウン制御ラインにコンピュータからパルスを送ることで、実現しています。TS850やTS450など最近のKenwoodのモデルでは1Hzステップで制御ができるように理想的ですし、他社のモデルもまた対応しています。そのようなトランシーバを持ち合わせていない人に合わせて、DJ7HSがソフトウェアが実行する自動同調を作りました。PCWプログラムを使えば、アップ/ダウンのラインは必要ありません。

    DJ7HSは、プログラムを使うに必要な注意書とスクリーン上のヘルプを提供しています。プログラムはCWだけでなく、送信に関しては全く同じなのでコヒーレントCWも、送信できます(ただし、3種類のスピードだけ)。コンピュータをトランシーバのキー入力に単純に繋ぐだけです。コンピュータの出力はRS232レベルであることと、トランシーバのキーイング ラインに繋ぐインターフェイスが必要であることは忘れないで下さい。バイポーラFETが1個だけ十分です。トランシーバのマニュアルを見て下さい。このプログラムは、VE2IQインターフェイス ボードが受信機出力とコンピュータの間に挿入されている場合は、コヒーレントCWの受信にだけ使われます。

    どんな受信機でもコヒーレントCWをCWと同じく受信できるのですが、前者は時間が絶対的に正確であって"完全な"モールス符号である点が違います。このことは、誰もが普通のCWが出ていると思いやすいことになります。もしCWとして受信するように設定してあるならば、もちろんコンタクトが出来ます。コヒーレントとして運用することを知らせたければ、その効果を得るために貴局のコールに何らかを含ませる必要があります。ドットの連続(%を押す)に続いてCQ CCW DE コールサイン を出せばよいのですが、さらにドットを出してもよいでしょう。この操作で、他のコヒーレント局が同期をとり貴局を呼ぶことができます。ドットの連続を送信しなかったならば、呼出局がドットを送り貴局が同期をとることになります。

    コヒーレントCWをやっていてもCW局から呼ばれることを、意識しておかねばなりません。彼らは、CCWの意味を知らないか、貴局が変なやり方でCQを出していると思うか、あるいはCCWの何たるかに興味を抱くかのどれかです。彼らに教えてあげる機会です。

    どんな形式の信号を受信しているのか判断が難しい他のデジタル モードと違って、コヒーレントCWは、完全なタイミングと複数のドットの前置によって、存在が分かりやすいのです。でも、執筆時点ではアクティブな局が多くはありませんので、対象局を見付けるのが困難でしょう。しばらくの間は、コヒーレント運用者の練習は1つの周波数を使って行われてきました。いくつかの周波数も試されました。一時期、通常のQRP周波数の1kHz上の周波数が、QRP運用者がコヒーレントCWの一番の恩恵者になるであろうし彼らの関心を惹こうという考えから、使われました。これは、当たっているとは言えません。各バンドの下端から20kHz上というのが、現在の推奨周波数です。どの周波数が選ばれたとしてもいくらかの混信はありますが、コヒーレントCWはその正確なタイミングと狭帯域によって聴取される機会が多いことは確かです。目下のところは、これらの周波数を使いつつ、Digital Journalによる変更の通知に気をつけて下さい。筆者は他の雑誌等が何らかの変更を掲載しているかを注目しておきます。

    貴局がコヒーレントCWをお使いになり将来もっとアクティビティが高まることを期待しています。

    アクティビティの詳しいことや他の関心事は歓迎して、Digital Journalのcoherent columnに掲載します。筆者宛にお送り下さい。

                        Peter Lumb, G3IRM
                        2 Briarwood Avenue
                        Bury Saint Edmunds
                        Suffolk IP33 3QF
                        United Kingdom
 
 

[訳注]
・訳者         間 幸久   Feb. 05  2000    問い合わせは訳者のホームページ
・原典         NOTES on COHERENT CW (CCW)
                     Peter Lumb, G3IRM Feb. 1995
・出処         DJ7HS download page   http://www.qsl.net/dj7hs/ccwnotes.htm