項 目 | 内 容 |
分類・鯨種 | ハクジラ亜目・アカボウクジラ科・ツチクジラ属 | |
学名・語源 | Berardius bairdii。 Berardius(フランス海軍・軍艦の副長ベラ−ルにちなんでいる。)
bairdii(アメリカの博物学者ベアードにちなんだ命名) |
英名 | Baird's Beaked Whale。 スミソニアン研究所の元所長、19世紀の米・博物学者Spencer F Bairdにちなんで命名。
「ベア−ドさんのクチバシを持ったクジラ」 |
英地方名 | Northern Giant Bottlenose Whale. North Pacific Bottlenose Whale.
Giant Four-toothed Whale. Northern Four-toothed Whale.など |
英名由来 |
(北アメリカではBottlenose Whale:「ビンのような鼻をしたクジラ」と呼んでいる)
(Northern Four-toothed Whale:歯の数から「北方の4本歯のクジラ」とも言われる) |
和名・命名由来 | ツチクジラ:槌鯨。ワラを叩く槌(ツチ)に頭部が似ているため。 |
地方名 | 千葉県では「ツチンボ」 |
特徴 | アカボウクジラ科最大の種。ハクジラの中ではマッコウクジラ(18b)に次いで大きい。 |
頭 | 前額部は著しく球状に膨らんでいる。オスはより幅広く著しい |
噴気孔 | 噴気孔の部分は凹んでいる。 |
クチバシ | イルカに似たクチバシ。上顎より下顎は前方に突出していてクチバシ先端の歯が白く見える。 |
歯 | オス・メスともに下顎先端に2本、少し後に2本、計4本歯がある。上顎には歯はありません。
主にイカや底魚などを挟むのに使い、かまずに呑み込みます。歯はメス獲得競争の武器にします。 |
体形 | 大きく、紡錘形をした体をしている |
体色 | 黒っぽい茶褐色。身体全体に傷跡・斑点がある。腹部には白っぽい斑点・斑紋がある。
傷の内、2本平行して走っているものはオス同士の争いの歯のあととも言われる。 |
背鰭 | 小さく先端は丸い。背鰭は頭部から3分の2付近にある。 |
胸鰭 | 胸鰭は身体のかなり前方にあって小さい |
尾鰭 | 比較的小さい。中間の切れ込みがある物と不明な物とがある。 |
のど | のどにV字状の溝が見られる。 |
分布 | 北太平洋北西部・北東部のみ分布。アリューシャン列島周辺・オホーツク海・米カルフォルニア
カナダ−のバンクーバー沖。日本(房総半島、北海道南西部、富山湾、天皇海山列沿い)
基本的には陸棚斜面や海山の上・周辺に棲息する。 |
回遊 | 北太平洋では岸近くの水深1000b〜3000bの等深線に沿って南から北方に回遊する。
初夏の5〜6月におよそ北緯35度の房総沖に出現している。
毎年7〜8月に房総半島沖にて捕獲されるが、金華山・三陸沖から北海道沖に北上する。
ツチクジラは北へ向かってゆっくり移動し10月〜11月頃に北海道沖・北緯42〜43度で
最大の個体数になる。再び南下するといわれている。冬期の分布はわかっていない。
日本海では主に夏、富山湾と北緯41〜42度の北海道南部で捕獲される
オホーツク海では北緯44度の網走沖水深500b以下の海域で捕獲されている。
メスよりオスの方が多いとの統計数値があるようだ。 |
潜水時間 | 深海へ20分以上の潜水をし、長い物は1時間以上も潜っていることもある。 |
生活史 | 性成熟時の平均年齢はメス12歳、オス8歳。出産ピークは3〜4月、交尾は10〜11月。
妊娠期間は17ヶ月。メスには更年期がない。
割に寿命が長く、最高寿命はオス84歳、メス54歳。オスのほうが寿命は長い。 |
体長 | オス: 11.9b。メス: 12.8b。 新生児: 4.5b。 メスの方が大きい
マッコウクジラ等のハクジラはオスが大きいが、ツチクジラは唯一ヒゲクジラに似てメスが大きい。 |
体重 | 最大体重は12d。 |
食物 | 主として1000〜3000bの深海性・底棲性の魚類・頭足類・甲殻類を食べている。
中型のイカ、ガンギエイ、タコなど、胃の中にサバ・サンマ・イワシも入っている。 |
個体数・群 | 濃密な群を作る。3〜30頭くらいの群。50頭くらいの群もある。大群は短期間に分散する。 |
日本の生息数 | 房総から三陸の太平洋で約4200頭。日本には太平洋・日本海・オホーツクと3系統群がある。 |
漁場 | 西部北太平洋では親潮と黒潮の接触水域に分布が見られる。カルフォルニア
沖でも暖水と還流との波動域に分布が見られる、棲息域は大陸斜面の海域
海山によって水深が数千メートル以内になっているところに限定されている。
房総漁場は大島沖、房総沖、常磐沖の3ヵ所、年により偏りがみられる。 |
漁期 | 主に7月から8月末までの2ヶ月間で日帰り操業をしている
捕獲数は、年間54頭うち26頭が千葉県・和田町に陸揚げされる。 |
漁具 | ノルウェー式・50_捕鯨砲を船首先端にを搭載、ロープがついた捕鯨銛を打って捕そくする。 |
漁船 | 約50dの小型沿岸捕鯨船。乗組員は5人から7人が乗船。 |
隻数 | ツチクジラ捕鯨は4隻が操業している。千葉県和田沖「31純友丸」、和歌山太地「勝丸」
宮城県鮎川沖「28大勝丸」「75幸栄丸」 |
基地・解体場所 | 日本では千葉・和田浦、北海道・網走(函館)、宮城・鮎川、和歌山・太地の四ヶ所
捕獲したら操業は終わり,すぐに基地に帰港する。ツチクジラはすぐに解体せず、港に
繋いだまま15〜16時間寝かせる。そうすると和田独特たれ作りに適した柔らかい肉に
なるといわれている。 |
どこで売っているの? | 千葉県ではツチクジラの漁期7〜8月頃、赤肉はスーパーの鮮魚売り場で売られています。
鮎川のものも見られます。 |
どんな加工をするの? | 房総地方では刺身用お肉の他に、くじらのタレ・燻製として加工されるものが多い。
生姜醤油で煮た「時雨煮」「佃煮」、「竜田揚げ」「ユッケ」「カツ」「刺し身」「ベーコン」でも食べる。
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タレの加工方法 | 加工方法:肉を食パンくらいの大きさ・厚さに切り、一日〜二日塩水・醤油・味りんなどの調味液に漬けて、
それを「す」と呼ばれる平たい網の上に一枚づつ広げ数時間天日で乾燥しジャーキーの様にしたもの。
途中二度裏表ヒックリ返す。最近はソフトなタレが好まれる由。
垂らして干すから「たれ」というとのこと、語源はハッキリしないようです。 |
骨格の展示館 | 「海の博物館」の中庭に1996年和田で捕獲されたツチクジラ雄・体長10.5bの
全身骨格標本がある。
千葉県立中央博物館にはツチクジラの他にマッコウクジラや沢山の骨格「スケルトン」が
天井から吊るされ皆様に会えるのをまっています。 |
世界の利用・捕獲 | 東部北太平洋では1960年代・1970年代までは米国とカナダで捕獲していた。
西部北太平洋ではロシアと日本が捕獲している |
ミナミツチクジラ | 別種、南回帰線より南沖合の南極の周りに分布しているツチクジラ
。特徴:ツチクジラと見分けはつかないが体長が2割ほど小さい。
学名:Berardius arnuxii。語源はフランスの軍艦副長Berardと軍医Arnouxにちなんだもの。
英名:Arnoux's beaked whale。 和名:「南槌鯨」。
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