宵明けの青空に2 -1- 教会のうた

  





「何ぽけーっとしてるのよ、おスケベさん。」
何度見ても、いい。

ハントがポスターの前でピースする。
「おうたなら、私が歌ってあげましょう。」
「いいぞ、ハント。シロックのシウマイでも聴きたいね。」
「ヤマネコのヤマトマンもいいな。」

「今度はなにを作るんですか。」
ジラーが振り返った。
「青竹という発明があってな、踏むだけで極楽よ。」
「また、スケベ。嫌ですね。」

僕らはかろうじてルボータン王国にいた。
もうわがままなんて言えないのだ。
しかし、その逆を突こうとしていたのは3人ともだった。

僕らは目立ちたがりだった、
マイクスタンドを立て、目の前に青竹の敷かれた椅子を置いたのは僕だった。
ジラーはギターを持ってきて一生懸命練習している。
ハントは何やらオルガンを弾いて歌っている。
「まさか、ライアンが歌いたがるとはな。」
ジラーが宣言している。
「マイクは譲らないぜ。」
結局、椅子に座ることになるとは思わなかった。
ジラーがアレルヤコーラスを歌う、

アカデメイからの教えが一瞬頭をかすめた、
「音を外した者は処刑、宮廷音楽家の道は険しい。」
今、僕はジラーの声で逝っちまいそうである。
僕は、教会の奇跡の再来を感じていた。

「ジラー、その歌僕にだけ歌えるか。」
「愛してるぜ、ライアン。」

マイクを持つとジラーは面白すぎた。
ジラーがステージからこっちに来て、マイクで突ついた。
「ちゃんと聴いてるのかよ。」
「ああ。」
「また、教会の奇跡だな。」
「分かるのか、それなんだけれども。」

ジラーがマイクスタンドを置いた。
「神様を信じないと処刑だったな。」
ハントが心配そうに覗き込む。
「ルボータン王国にはそれも無いですけどね。」
「死刑のことか。」
「信じるねえ。」
「音楽も信じないんですか、本当にお前らはあほたれですよ。」

ガレージが揺れた。
「味を占めたお前らは、国外追放だ。わはは、とか。」
「王様。」
「ウマエ王国に行って来なさい、誰が死んでいるか分かったら帰ってこい。」
「はい、これ。」
「これがあればウマエ王国に入れる、当分帰って来るな。」

行ってこよう、こころがはっきりした。
ジラーとハントはショックで喋ってくれなかった。
さみしくなった俺の番。
人が悪いよみんな、どうせ隠れて音楽しているんだろうよ。