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国名・地域 | クジラとの関わり | 内 容 |
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ミクロネシア | クジラは悪い魚 | カロリン諸島サタワル島ではクジラやイルカはサメ、ウミヘビ、エイなどと共にイキンガウ「悪い魚」という。
ガウは「悪い」の意味。クジラやイルカは人間に近いカテゴリーに属するといわれている。 |
島の男と結婚したイルカ | 伝説によると、島に来た2頭のイルカが皮をぬいで水浴びをしていました。
その姿は人間の女に見えました。 島の男が来たので1頭は逃げましたが他の1頭は逃げ遅れてしまいました。 島の男が水浴びしているイルカの皮を盗み、包みに入れて隠しました。 戻れなくなったイルカはその男と結婚し2人の子供をもうけました。 ある日のことです。天井から虫が落ちてきたのでそこを探すと家の梁に包みが隠されていました。 包みを開けてみるとそこには自分が脱いだ皮が入っていました。 その皮を着たイルカは、海に帰る前に自分の子供たちにこれからは決してイルカを食べてはいけないとさとして島を去りました。 それからはイルカやクジラは人間と同じと考えられ島の人たちはイキンガウを食べないそうです。 イキンガウを食べることは人間を食べることと同じと云われています。 | |
クジラは人間に似た種類 | ソロモン諸島のベロナ島ではクジラやイルカを総称して「タホガア」といい、魚をあらわす「イカ」に含まれるそうです。 「イカ」の中でクジラ類は「ペゲア」に属し、べゲアは「人間に似たもの」の意味といわれています。 | |
漂着クジラは悪病をもたらす | ソロモン諸島のティコピア島では海岸に漂着したクジラは海の霊が具現したもので島に悪い病気を
もたらすといい、食料とはしないし土中に埋めるそうです。 クジラがストランディングすると島の人は武器を持ちクジラを威嚇する振る舞いをする由。 | |
北アメリカ | シャチの背ビレに人が乗っている |
アメリカ・インディアンのトリンキッドやヌートカではシャチの背ビレの部分には人間が乗っているとみなされとのこと。
又シャチの体の一部分が人そのものであると考えられてシャチの木彫りやデザインにあらわされています。 |
ホッキョククジラの霊は若い女 | アラスカ・エスキモーのあいだではホッキョククジラの霊は若い女性であると信じられ、霊は頭部にすんでいるとされ、 海に戻った霊はまだ生まれぬ仔クジラを探してそこにすみ込むというそうです。 | |
香港 | クジラは聖なる魚 | 香港の水上生活者はユイ(魚)という動物の中に魚類のほかにクジラやイルカなどの海産哺乳類や貝類・爬虫類も含めています。
ユイはいくつかの種類からなりセン・ユイ「聖なる魚」といわれるカテゴリーに入ります。 セン・ユイ「聖魚」にクジラ・白いイルカ・暗色のイルカ・チョウザメ・ノコギリエイ・ウミガメなどが含まれます。 セン・ユイ「聖魚」には巨大な・海と川や水と陸などの領域を行き来する・神聖である・異常な・あいまいな形態や習性をするものが含まれる。 寺院にまつられたり、功徳を得るために捕獲したものを再度水中に放流したりして食べることはない。 |
中国 | クジラは龍の仲間 | クジラの上位カテゴリーは架空の龍でありこの仲間にはドラゴン・クジラ・ワニ・アリゲーター・アルマジロ・トカゲ
・ヤモリ・カエル頭のトカゲ・オオトカゲの9種類が含まれる。
中国ではクジラは大魚で人を呑込む恐ろしい存在だと考えられていたそうです。 イルカは白っぽいバイジーと黒い江豚(スナメリ)の2種がいて、江豚は湖北省まで遊泳し洞庭湖にはいるといわれ洞庭湖周辺に住む人々はスナメリを「湖神」として崇拝し捕獲しないし、揚子江でも捕獲しない。 |
ベトナム | 王を助けたクジラ | ベトナムではクジラ類はカー・オン「魚の主」と呼ばれる。カーは魚、オンは翁のこと。
昔はクジラは普通の魚でした。1800年、シ゛アオロン朝が南海から逃げてくるときに死ぬほどの嵐にあい、2頭のクジラが王様の船を支えてくれて救われたそうです。 王様はクジラにナム・ハイ・ナンという名前を与え、それ以来クジラが漂着しても殺したり、食べたりしないとのことです。 漂着したときは村長は王様に報告して葬儀用の絹とお金を賜るといわれる。又海で漂流しているイルカを見つけると陸に曳いていき手厚く葬りました。 悪天候が続くとイルカが死んだためとされ、イルカを探し埋葬する習慣もあったそうです。 |
クジラは恐ろしい怪魚 | 大昔、大きな魚が棲んでいました。その長さは50丈以上、尻尾は船の帆より大きく、口は10人を一度に呑込む大きさでした。
泳ぐと大きな波を起し船を沈め、人を丸呑みしてしまうので漁民は恐れ「怪魚」と呼んでいました。 | |
クジラに呑込まれる話 | 昔、村に姉妹がいました。あるとき妹は姉に海へ突き落とされました。
海に沈んだ妹は浮き上がろうとしてもがいていると鯨が現われ呑込まれてしまいました。 妹は持っていた包丁でクジラの腹を切るとクジラは死んでしまい浮きあがりました。そこでクジラの腹を開いて外に出ました。そこは島の近くでした。 木を切り家を建て、持っていた火打石で木を燃やし体を温め、お腹がすいたのでクジラを焼いて食べたそうです。 | |
日本 | 神魚:カミヨ | 岩手県大槌町ではリクゼンイルカを「神魚・神代」と云い「カミヨイリカ」とよぶとのこと。 |
クジラは「フンベ」 |
アイヌ語のクジラの総称はフンベ・フンペといい、海獣一般をあらわし7種類があります。
豊漁を支配するクジラ・ミンククジラ 「ノコルフンベ」 真のコイワシクジラ・イワシクジラ 「シノコルフンベ」 尻のほうに背ビレのついたクジラ・ナガスクジラ 「オアスペウフンベ」 ナガスクジラの仲間 「クッタルフンベ」 尻から油の出るクジラ・ナガスクジラの仲間 「オケクスフンベ」 騒ぐクジラ・コククジラ 「オサカンケフンベ」 蝉のクジラ・マッコウクジラ (マッコウの頭がセミに似ているから) 「ヤキフンベ」 アイヌ語でシャチは「神の鯨」カムイフンベといいます。 イルカの仲間は総称で「タンヌップ」「タンヌイ」という。シャチはほかのクジラとも区別され別格扱いです。 | |
欧米 | 鯨に呑込まれたヨナ | 聖書「ヨブ記」。ヨナは神の命令を守らず、布教をせずに舟に乗り逃げ出します。
沖では嵐になり、その原因がヨナであるとされ乗組員がヨナを海に投げ込みました。そこに大きな魚(クジラ)があらわれヨナを呑込みます。 ヨナは大魚の腹中にいて、3昼夜目に島につれて行かれ岸に吐き出されます。 この逸話は鯨やイルカがキリスト自身、その死と復活をあらわすといわれている。 ※クジラを食べることは「人を食べること」、主であるキリストを食べることになり日本の鯨食文化とは相容れませんね! |
ヨーロッパ | 鯨の背中のミサ |
「聖ブレンダン航海譚」。アイルランド・ケルトの聖人ブレンダンがカシの木で舟を作りアイルランドから
西方の幸せの国を求めて旅立ちました。 航海の途中、色々な怪物に遭いながら、とある島に上陸します。 ところがその島は怪物の背中だったのです。 怪物は鼻から泡を吹いて人間を食べようとするので、 ブレンダンはミサをおこない怪物の怒りを鎮めました。クジラ島のお話。 |
ナスカ | 遭難者の魂を運ぶ鯨 | ナスカの地上絵。ナスカのクジラ絵は62メートルと大きく、このクジラは海で遭難した漁師の魂を背に乗せて運ぶと信じられていたそうです。 |
北アメリカ | 人の為になるクジラ |
インディアンにとっては、クジラは人間に食料として役立ち、宗教的にも重要な位置を占めている。
またシャチはクジラを追い込んでくれるし、人間に食料を運んでくれる崇拝される動物であった。 アイヌや日本人のエビス信仰と同じです。 |
ギリシャ | イルカは人間の友達 |
ギリシャ神話の中ではイルカは人間の友人であり、水死した人の生まれ変わりと考えられていた。
イルカに乗った少年の話、陸に運ぶ話、少年が死ぬとイルカも慕って陸で死んだという話がある。 アポロンがイルカに変身したり、イルカの跳躍は漁師にいい天気をもたらすなど人間にとって親密そのもの、イルカ=人と考えられ、イルカを殺したり食べたりはもってのほかでした。 ※ギリシャ神話・聖書など日本文化は簡単に受け入れて貰えません! |
極北地方 | 女神の指から生まれたイルカ | イヌイットのあいだではイルカは女神の切り落とされた指から生まれたと云われている。
美しいセドナとよばれる女神は人間の形をしたウミツバメの男に求愛され結婚しました。 ところが ウミツバメの男の云った「結婚すれば何でもかなう」と言ったことは大嘘で彼女は大変苦労をします。 心配したセドナの父親が舟で助けに来て舟に乗せました。ウミツバメの男は怒って嵐を起し舟を沈めよう とします。 父親は身の危険を感じ、わが身を守るために娘を海に投げ込みました。 娘は必死に船縁につかまるので持っていた斧で娘の指を切り落としました。 この切り落とされた指からセイウチ・アザラシ・クジラが生まれ、セドナは海獣を支配する神になった というお話です。この神を怒らせると人間に飢饉が起きるといわれています。 |
日本・アイヌ | 人間にクジラをもたらす話 | 神の世界から人間の世界に海の幸がもたらされるアイヌの神話「ユーカラ」がある。
ある日、神々は親子連れのクジラを一本の矢で貫き捕らえました。その半分を切って神々が取り 残りの1頭半を人間世界に与えました。 それを見たカモメがどうしてあの卑しい、悪い人間に海の 幸を与えるのだと問いただしました。神はそれに応えました。 クジラを貰った人間世界の人たちは神のように手を高くさし上げて礼拝し泣いて喜んでいる。 「私達の村で飢饉があって食料に窮しているときに哀れんで村に生命を与えて下さり有難うございます。 お礼に酒を少し作って、小さな幣を添えて大神様に感謝しております」と。 この光景を見た神自身が人間の喜び・感謝している場面に感動しているということです。(釧路・白糠に伝わる伝説) |
日本・アイヌ | 飢饉を救う話 |
シマフクロウの私はある日飢饉の話を聞いた。私は沖を統括する神であるシャチに伝言してサマイクル村に次々とクジラを寄せてやった。
そうしたらサマイクル村は良くなったがポノキキリマの村では餓死していると聞く。 そしてサマイクル村では感謝して酒を作って、真っ先に私を拝んでくれるので私はサマクイルに いつまでも目をかけていると。 |
シャチ(カムイフンベ)の別名 |
物をとるクジラ<イコイフンベ>。 宝物・見る・神<トミンカルクル>。 神・見る・神<カムインカルクル>
海の幸であるクジラを浜に上げる神<イソヤンケクル>。 それ、すなわちクジラをいじめる神<イコイキカムイ>。 小さな頭目の神<モハチャンクル>。大きな頭目の神<シハチャンクル>。 われらの手の上を見そなわす神<イモンカヌカルクル>。 神なる頭目<カムヨッテナ>。 神・船<カムイチス>。 神である勇者<カムイラメトク>。 沖にいる神<レプンカムイ>。海を支配する神<アトウイコロカムイ>。 入り江を支配する神<トマリコロカムイ>。われらがおそれる神<チオハヤク>。 アイヌの人々とシャチとの深いかかわりあいを物語っています。 | |
シャチと娘の結婚話 |
日本昔話通観より。天の竜神雷は音がひどすぎる、山の神の熊は食いしん坊だ、大神の山犬は
足が早いので娘は嫁にやれない。 沖の神であるシャチは毎年クジラを1頭半浜に送ってくれるというので娘を嫁にやる。 私が娘をしっかりと持って高い高いをして岩の間に落とすとシャチが背ビレの上に娘を引っ掛けて 浮き沈みしながら沖へ行く。 それからはクジラが毎年1頭半ずつ岸に乗り上げるようになった。 | |
魚を追い込むエビス |
ニシン場ではクジラがニシンを沿岸に追い込んでくれるので漁民はクジラのことを「エビス」といいクジラは海の幸をもたらす有難い存在である。
アイヌが作ったシャチの土偶などがこれを示している。(上記イルカの画像) | |
鯨を神の国へおくる儀礼 |
噴火湾アイヌ。人間の世界にやってきた鯨を人間が利用してしまうとその鯨を神の国に送り届け
なければならない。 クジラ送りの儀礼は「フンベサパアノミ」と呼ばれ、沖に向けて清めたクジラの 頭骨を置き秋と春に行われる。 噴火湾沿岸には頭骨を放射状に並べた遺跡がある。 | |
異類婚(クジラ・クマ) ヒトとシャチの結婚 |
日本昔話通観より。ワシが一人暮らしていると女が二人薪を取りに来た。 そこでワシは「頭のシラミを 捕ってくれ」と女にたのんだ。そうしたら女はビックリして逃げていった。 ワシは腹が立ち「一人は烏の夫をもち、もう一人はネズミの夫を持つようになる」といった。 数日して又二人の女がやって来たので今度もワシがシラミを捕ってくれる様に頼むと今度は シラミを捕ってくれた。 ワシは大変嬉しかったので「一人は沖の神(シャチ)を夫に、もう一人は山の 神(クマ)を夫に持つだろうと」といった。 女達はワシが言った通りにシャチとクマの夫を持った。アイヌではシャチとクマは神様です。 | |
ギリヤーク | 海の幸をもたらすシャチ |
ギリヤークの世界では海の神・山の神がそれぞれ海と陸の動物を支配している。 海神の従者であるクジラの形をした怪物のカサートカが海獣や魚を陸に追い上げる役割をしている。 このカサートカはシャチのことである。※日本のアイヌと同じ話です。 |
ポリネシア | 神から生まれたクジラ |
太平洋ポリネシアでは色々な神がいてクジラも多く登場します。クジラは神から生まれたものとされる。
神話の中でクジラは人間に食べられること、クジラを食べた人間を別の人間が食べるという想定になっています。 |
ニュージランド | 神から生まれたクジラ | マオリの神話。男神と女神が結婚して生まれたのがクジラといわれる。 |
マオリ | 食べられたクジラ |
マオリの別話。ティニラウという男神が海中に住んでいて魚を従者としサメとクジラを伝令者としていた。
男神は自分の息子の命名式があり、神官のカエを呼びました。 そして自分の持ち物であるクジラから最上の肉を切り取って神官に供しました。 神官はクジラの肉が美味しかったので帰りの乗り物としてこのクジラを貸してくれるように男神に 頼みました。 男神は、神官にこのクジラは浜に上がると窒息し死んでしまうので浅瀬に着いたら そこから先は自分で歩いて帰りなさいと言っておきました。 ところが神官はこのクジラの肉をもっと食べたかったのでクジラを浜に揚げて殺して料理して食べてしまいました。 料理の匂いが男神の所に漂ってきたので男神は40人の踊り子を神官のところへ派遣し調べさせました。 踊り子達は踊り始めました。 しばらくすると口を閉ざしていた神官でしたが踊の面白さに笑って口を開けて しまいました。開けた口の歯にはクジラの肉が詰まっていました。 踊り子達は神官や島の人々を呪術を使って眠らせ神官を島に運び帰りました。 それから、捕らえられた神官は殺されて逆に食べられてしまったそうです。 |
ベトナム | 仏僧がイルカになった話 |
ベトナムの昔話。修行僧が人食いの子(アクライ)のいる家に泊まり、説教してアクライを改心させました。
アクライはお礼に何かを捧げたいというので僧は腸だけ捧げれば充分といいました。 アクライはその話を誤解し自分の腹を開けて腸を僧に差し出しました。旅を続けていた僧はその腸が腐り、 物凄い匂いにたまらず海に捨ててしまいました。そこに仏が現れ僧に不誠実だとなじりました。 僧は海に潜って腸を探し回り浮き沈みを続けていたので遂にイルカになってしまいました。 イルカは僧のような頭をしており修行のために休まず泳いだり潜ったりいつもしている。 イルカは怒ると舟を沈めたり網を破ったりし、ほめると面白い芸をする。 イルカの良し悪しは人間次第だという話です。 |
インドネシア | ブタが海に入りイルカになった |
ある日、ブタは先祖から貰った大切な黄金の指輪を失くしてしまいました。そこでブタは森に指輪を探しに
いきました。するとブタは「イノシシ」になりました。
いっぽう人間の家にいて地面を掘っていたブタは今までどうり「普通のブタ」になりました。 海に入ったブタは「ネズミイルカ」になりました。インドネシア語でイルカのことをイカン・バビ(豚魚)という |
イスラム | 大地を担うクジラ |
神話では、大地が創造されたときに、クジラが海を揺さぶったとされています。
アラーは一人の天使を天上から下界に送り、天使は肩にクジラを担ぎました。天子はそこに立つために 硬い足場が必要でした。 アラーは足場の岩を作って、アル・ユルツームという10万の頭がある雄牛の角の 上に置きました。 またその雄牛はフートというクジラの上に立っていました。このクジラはよろめいたり、 身動きすると地震が起きるので動くことを許されなかった。 このクジラはあまりにも大きく「もし海のすべての水が、クジラの片方の鼻孔に集められたとしても、それは 砂漠にまいたからしの種のごときものだった」 「イブリス」という悪魔はクジラにその重荷を振り落とすように誘惑をしようとしました。 このためアラーは救助のために小さな生き物をクジラに送って片方の鼻孔から入り込ませ、脳にまで行かせ ました。 大きい魚はうめき、アラーに祈った。そこでアラーはその生き物に去ることを許した。 しかしそれ以来、小さな生き物はクジラの前に立ちはだかり、身動きするよう誘惑されるたびに、また戻るぞと脅かしたという。 |
中国 | 嵐を巻き起こす巨大クジラ |
古代の中国人はユ・キアンという伝説的動物が海を支配していると信じていました。 ユ・キアンの神は 龍に乗って魚の体と人間の手をもっている鯤(コン)といい、北の海から来た長さ数千里の超特大のクジラでした。 怪物のような鯤(コン)は時々怒り、鵬という巨大な鳥に変身して海面に現われて恐ろしい嵐を巻き起こしました。 |
ベトナム | クジラが死ぬと嵐になる |
漁師は、クジラは船乗りを守り、難破船の水夫たちを安全に運ぶために水の神が使わしたものと
信じている。 漁師は死んだクジラやイルカを見つけると岸に連れて帰り、発見したものが喪のターバン を身に着ける。 喪の後ターバンは焼かれ、埋めた骨は掘り出され、高貴な人の墓地に預けられる。 クジラやイルカが死ぬと3日間雨が降り、風が吹き荒れるといわれる。 何日も続くときは生き物の1頭が 死んだためで、これをしずめるためには探して埋葬しなければならない。そうすれば嵐が止むと云う。 |
アフリカ | クジラの死は悲しみ |
アンゴラのある地方ではクジラは海の支配者の霊魂とされ、漁師が海岸に乗り上げたクジラを発見
すると、住民は宮殿に集まる。使者が来てその土地の人々は喪に服す。 海の帝王が海岸で死んだからと みられ、クジラの死は悲しみを引き起こすことになる。 |
イヌイット | クジラを助けた神 |
イヌイットの神話、人の姿をした神のビッグ・レイベン。ある日ビッグ・レイベンは、岸に乗り上げたクジラ
にであった。 彼は神にクジラを海に帰すのを手伝って欲しいと頼みました。神は、森の中の月光が 特別にふりそそぐ場所を教えました。 そこのキノコを食べれば一人でクジラを引く力が与えられる といいました。ビッグ・レイベンは云われたとおりにしてクジラを救いました。 |
イヌイット | クジラ捕りの儀式 |
クジラ捕りの前にイヌイットは、小枝で汐吹きをかたどった木や骨・象牙で作ったクジラの小像を持って
泳ぐクジラをまねた踊をする。 赤い色の水を口に含み、これを噴出して死に瀕して苦しいクジラを演じる。 クジラ捕りの準備中に二つの歌をクジラに向かってうたう。 捕らえられてくれ、お礼に魚をおくると約束し 安楽死を与えると誓い、村の人々のためになると歌い上げる。さらにアザラシなどの動物を連れてきて くれるようにクジラに頼む。 他の唄は秘密になっており、どの銛打ちも動物の霊が夢で教えてくれた自分の歌を持っているという。 |
シベリア | クジラを呼ぶ | コリヤーク族は、今でも踊り子が仮面をつけて霊に向かってクジラを呼び寄せる。人々は犯した罪、 やぶったタブー、邪悪な考えをクジラに叫ぶという「驚きの儀式」がもたれる。 |
カナダ西部 | クジラ捕りの習慣 |
バンクーバー島のインディアン。部族で最も勇敢で地位の高い男は、自分を清めるために森に消える。
首領は聖なる池に潜り、泳ぎ、クジラのように汐を吹く。インディアンの野営地に戻り、クジラが来てくれる ことを祈り、クジラの潮吹きに似た祈りの唄をうたうという。 水平線にクジラが見えるとカヌーで海に押し出す。首領はクジラに語りかけ挨拶をする。首領たちが最初の 銛を投げる。捕獲が終わると岸に曳き分配される。 クジラを捕ったときの貢献度で分配され、ポトラッチと 云われる儀式的分配である。 分配を受けた人は首領にそれ以上のお返しをする慣わしだそうです。 漁は感謝の歌と踊で終わる。 |
オーストラリア | 人がクジラになり汐を吹く |
アボリジニ伝説。古代には夜の儀式に明かりをもたらす手段がなかった。コンドレという男だけが
火を持っていたが藪の中に隠していた。 コンドレは大きく強くけちであったが誰も火を持ってくるように 言える勇敢な者はいなかった。 コンドレの振る舞いに怒った男が、ある日後ろから忍び寄りヤリを投げて頭蓋骨を貫いた。 その瞬間、儀式に参加していた人たちは一瞬にして色々な動物に変ったそうです。 カンガルになった人、オポッサム、 魚、鳥などなど。一番大きいコンドレはそれ以降、ヤリで射抜かれた傷から汐を吹き続ける クジラになったそうな! |
アイスランド | 怖い赤頭クジラ |
ある日、男数人が船を漕ぎ出して岩礁にウミスズメを取りに行きました。 男達が家に戻ろうとしたときに 一人の男が消えていなくなってしまいました。 妖精の女がその男の子を身ごもっていたので他の妖精 たちは魔法でその男を誘い出し虜にしてしまいました。 妖精たちは、その子供に洗礼を受けさせるなら岩礁を離れても良いといい、男はそうすると誓って船で 本土に帰りました。 日曜日の礼拝の日に皆が集まりました。教会にゆりかごがあり、紙片が添えられていました。 そこには「この子の父が、この子の洗礼を受けるよう取り計らうであろう」とかかれていました。 この子の父だという男は現れません。宣教師は1年間行方不明だった男に嫌疑がかけられましたが、 男は知らないと突っぱねました。 立派な貴婦人が現れ、ゆりかごを外へ放り投げて言いました。 「教会はするべきことをしなさい」、そして 男には「お前は海で最も性悪なクジラになって多くの船を壊すだろう」といって女は消えました。 女が呪った男は気が狂い、彼は海に走り出し海の崖を飛び越えたちょうどその時彼は海で最も性悪な クジラに変わり「赤頭」として知られるようになりました。 そのクジラはとても邪悪で破壊的で船何隻分もの 男達をおぼれさせたのでした。 アイスランドの漁師は、船を転覆させて人肉を喰う赤頭クジラだけを恐れました。しかし他のクジラは生きる ために必要でクジラは殺しましたが、クジラは人間には友好的だと漁師達は考えていたそうです。 (ジャクリーヌ・シンプソン、1972年) |
アイスランド | 釣れたクジラ |
貧しい漁師は何も食べるものがありません。至福者ソルラルクに助けを求め男はロープをとり、
岸に置きました。 次の朝ロープの長さもあるクジラが釣れていました。 |
偵察クジラ |
デンマークの王が、自分を中傷する詩を書いたアイスランド人に怒ってアイスランドにクジラを送りました。
王は軍隊を送ろうと考えましたが、まず偵察のためにクジラに姿を変えた魔法使いを差し向けた訳です。 しかし、いつもアイスランドの守護神にしてやられて、クジラの偵察効果は上がりませんでした。 (ヘイムスクリングラより) | |
破裂したクジラ |
昔、ある男がいました。男は泳いでいるナガスクジラに向かって石を投げました。 石はクジラの噴気孔に はまって、クジラは息が出来なくなり破裂して死んでしまいました。 これらの行いは罰を受ける行為とされ、男は20年間海に入ってはいけないということになりました。 しかし、19年目に男はどうしても海に戻りたいという欲望に負けて漁に出ました。 そこにクジラが現れ 男を殺してしまいました。罰をその通り守れば許されるのに、決まった償いをしないため許されないという 戒めのお話です。 | |
ギリシャ | クジラ島 |
アスピドケレオンと呼ばれる海に、1頭のクジラがいた。そのクジラは島のようにとても大きかった。 無知な船乗りは、普段、島にするように船をむすびつけ、いかりをおろし、杭につないだ。クジラの上で 食事をつくろうと火をつけた。 しかしクジラは熱を感じると、小便をし、すべての船を沈めて海の 奥深くに潜ってしまった。 (自然学(ギリシャ、2世紀)) |
フランス | クジラ島 |
ある朝、われわれは百人力・アルキーナの城が立つ美しい海岸に近づいた。 イルカはスイスイ泳いで 彼女(クジラ)のもとに急行した、不格好なマグロはあんぐり口を開け、マッコウクジラとトドは怠惰な眠りから 目をさました。 われわれは遠くのほうに、いままで大海で会ったなかでもっとも大きなクジラをみとめた。 波頭からはみでたそのひろい肩は、5メートル以上もあった。それは波ひとつ立てず、身動きもせず 頭のてっぺんと尾の先はずっと遠くにはなれていた。 ニコニコと笑顔でアルキーナはわれわれを向かえ、気軽に挨拶した。 彼女は先の小島くらいに見える クジラを指差した。私はその魚の上に一歩踏み込んだ。 一昼夜の間彼女は怪物の背の上で私を 海の真中に引きとめていたのでした。(狂乱のオルランド) |
アラビア | クジラ島 |
われわれは、ようやくエデンの園のように美しい小さな島についた。船乗り達は上陸し、火をつけた。 あるものは料理と洗濯で忙しく、あるものは食べたり、飲んだり、浮かれたりし始めていた。 突然、船長が船から大声でさけぶのが聞こえた。 「みんな、船にもどれ、大急ぎで、何もかも捨てて、 命の限り走れ!」「これは島なんかじゃなくて海にただよう大きなクジラ島だ!」 「おまえたちが火をつけたとき、そいつは熱さを感じて動いたんだ、急げといっているんだ、さもないと もうじきクジラは海にもぐって、お前達は死んでしまうぞ!」 突然島が足元でふるえ、山のような波をかぶり、上にいたものが暴風雨の海の底に沈んだのだ。 |