面白い江戸・くじら川柳

江戸時代からクジラは精が付き、冬場は温まる、仕事納めにいただく人気商品であったので
川柳が多くあります。クジラの油分、独特の匂いには鍋やお椀を洗うのが大変だったので
下女も苦労したようです。当時は伊勢湾で取れる塩皮くじらがブランド品であったため、伊勢
暦と共にクジラが江戸に持ち込まれています。さらにくじら売りも多かったため鯨売りの川柳
がかなり見られます。黒と白のくじらの皮に似た鯨帯が粋なファッションで女性の憧れで
あったようで川柳になっています。イッカクの歯はウニコールと云われ高価な解毒剤として
使われていました。今でも漢方薬の店にはイッカクの歯(牙)がディスプレイされています。
鯨は俳句では冬の季語とされ沢山詠まれています。現在も見ることが出来ます。
項目くじら川柳内容
鯨食鯨汁江戸中で 五六匹喰う 十三日 仕事納めの12月13日は江戸中で大きい鯨を5・6匹食べる(煤払いの習わし)
鯨汁 喰てしまえば いとまごい仕事納めの12月13日、食べ終わると地方に帰ってしまう
こんだから かしてやるなと 鍋を捨て 油でよごれ匂いがつき鍋を捨てるので今度から貸すな
鯨汁 たわしをひとつ すてるなり油汚れでたわしを一個使う
鯨汁 わんをかさねて しかられる油と臭気に汚れた椀を重ねておこられた
くじ汁 四五日鍋の やかましさ油と匂いで苦情が続いた
嫁は出て のうのうと喰う 鯨汁13日の仕事納め後の胴上げをおそれていた嫁が美味しい汁には出て食べる
鯨汁 おや助兵衛と 娘逃げ精力がつく食べ物といわれていたため娘は恥ずかしく逃げる?
鯨の油で 煮た牛蒡を 下女は食ひ下女は鯨の油で煮た美味しいゴボウを食べる
湯に行って 来て大魚(鯨)を 食べて居る湯上り後の鯨汁
鯨汁 どふかおかしい どなべなり土鍋についた脂肪の後始末が大変
鯨汁 豚よりいいと 徐福喰い始皇帝の命で不老不死の薬を求めていた徐福、豚よりいいと鯨喰う
伊勢鯨伊勢の御師 大きな魚を ちょっとくれ 伊勢暦を持ってきた御師が 伊勢産のくじらを少し呉れる
(伊勢暦)伊勢の御師 さて銭のない さかりに来 年末の金のない時に御師がくる
一年と 大きな魚を 台にのせ 暦と鯨少しを台にのせて出す 大きな魚(伊勢鯨) 一年(伊勢暦)
両がけの 中からくじら 出している両がけ(旅行用行李)を天秤で供の者が担いだ
鯨売油ぎる 秤を遣う 鯨売り       鯨の脂がついたはかり
大名も 切り売りを買う 塩鯨 大名でも一頭は買えない
采配で 呼び返さるる 鯨売り 仕事納め、掃除用はたきで呼び止める
その金で 鯨を買えと いせや言い伊勢屋は鰹を買う銭があるなら鯨を買えという
鯨うり 胴をつく内 銭を待ち主人の胴上げがすまないと代金を払わない。鯨売りは胴上げの祝儀が終わるまで待つ
鯨売り 銭はあしたと 置いて逃げ胴上げの標的にされそうで逃げていく様
内蔵助 くじらを売りに 行けという討ち入りの吉良邸へくじらを売りに行って情報をつかんで来い
鯨の字魚偏に 江の字くじらと 書かせたいくじらの漢字、鯨は魚偏に京、 江戸の江に替えては
よい天気 空に鯨が 鳴いている鯨ヒゲを使った凧、音が出るので凧を鯨といった
春風の 空に武者絵の 鯨波の声 武者絵の凧の鯨波(鬨の声)のおと
鯨身鯨身で 切られた首は 又生える 鯨身(芝居に用いた竹光)、鯨のヒゲ板を銀色に塗って偽刀
鯨身を  くわえて尻を ひっぱしょり同上
くせのある 酒でくじらの 太刀をはき酒癖が悪いので偽刀(鯨身)を持たせる
砂滑砂滑ほどに 水船(生簀)は 浮いて居る砂滑はネズミイルカ科のスナメリ、水船は生簀のこと
紀州塩にする 油にしぼる 紀の路がた塩鯨をつくる、油をとる紀の路潟:紀州の津々浦々
照手姫鯨寄る 浦まで照手 つれて行き毒を盛られた小次郎(小栗判官の子供)を照手姫が熊野の「湯の峯温泉」に連れて行き鯨肉で精気をつけ回復させた伝説(小栗判官・照手姫伝説は各地にある)
鯨弔い面白く 弔ふものは 鯨にて鯨まで弔うことの面白さ?
一角遣唐使 馳走のあとで うにこうる遣唐使も異国の馳走に中毒しないように一角丸(解毒剤)を持参服用した
持参金 うにこおるまで 呑んだつら持参金を持ってきた嫁は一角丸を飲んだような疱瘡顔だとの噂
三味線の二挺だけある うにこおるイッカクの牙は三味線棹の二つ分と長い(イッカクの牙:解毒剤)
踊り子の 話大きな うにこおるイッカクを見たこともない花柳界 踊り子の嘘は大きい ウニコールは嘘の代名詞
鯨帯一森(いちもり)の 茶見世目に付く 鯨帯一森(煎茶の銘柄)という煎茶を自慢にして飲ませていた店
一森の 茶見世にいきな 鯨帯給仕する女に鯨帯を締めさせたので人気をよんで粋な女に見られた
一のもり 食うたような くじら帯値段が安い町人の鯨帯は一番銛を撃たれた鯨の様に腹わた(帯芯)が出てくる
女房の 料理鯨の わたを抜き女房は料理(修理)をして鯨のわた(帯芯)を抜いている
くじらから 腹わたのでる 意く地なさ下女は手入れを怠るので意気地ない(だらしない)鯨帯を締めていた
鯨から はらわたのでる 下女の帯同上
取替えて 下女はくじらを 片身買ひ質屋に替わりの質物を入れ、念願の鯨帯をようやく片身だけ買った
ようようの 思ひくじらを 片身買ひ鯨帯:黒いビロウドの裏側に白い繻子を縫い付けた帯、くじらの皮と白脂肪層に似る
俳句:蕪村すでに得し鯨は逃げてつきひとつ
狂歌品川の沖にとまりしせみくじら、皆みんみん飛んでくるなりセミクジラとセミにかけた賑わいをあらわす。品川沖で見せ物になったクジラに見物人が集まる


子供の頃レコードで聞いた藤原義江さんのクジラ関連の歌詞です。

 『鉾をおさめて』

時雨音羽 作詞
中山晋平 作曲

鉾をおさめて 日の丸あげて
胸をドンと打ちゃ 夜明けの風が
そよろそよろと 身にしみわたる

灘の生酒に 肴は鯨
樽をたたいて 故郷のうたに
ゆらりゆらりと 日は舞い上る

エンヤッサエンヤッサ
ヤンレッサ ヤンレッサ
踊りつかれて 島かと見れば
母へ港へ 土産の鯨

『出船の港』

時雨音羽 作詞
中山晋平 作曲

ドンとドンとドンと 波のり越えて
一挺二挺三挺 八挺櫓で飛ばしゃ
サッとあがった 鯨の汐の
汐のあちらで 朝日はおどる

エッサエッサエッサ 押し切る腕は
見事黒がね その黒がねを
波はためそと ドンと突き当たる
ドンとドンとドンと ドンと突き当たる

風に帆綱を きりりと締めて
梶を廻せば 舳先はおどる
おどる舳先に 身を投げかけりゃ
夢は出船の 港へ戻る

参考:サカナのおもしろい雑学 篠崎晃雄 新人物往来社

参考:くじらと散歩 小松正之 ごま書房