鯨唄にある「祝いめでたの〜若松様よ」の
若松様とは誰・ナニのこと ?

 

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羽指踊り(部分図)
『小児乃弄(しょうにのもてあそび)鯨一件の巻』

『羽指踊(はざしおどり)』  (佐賀県唐津市呼子町小川島)


いわひ目出たの 若松さまよ。 枝も栄へる 葉もしげる。
  三國一しやあすは あみに大がけしよ。

 

竹に成りたやお山の竹に。旦那栄へる 葉もしげる。
                三國一しやあすは あみに大がけしよ。


      
納屋のろくろに綱くりかけて。子持巻くのハひまもなや。
                あすはあみに 大がけしよ。


(資料:『小児乃弄(しょうにのもてあそび)鯨一件の巻(上村家本)』)

 三国一(さんごくいち):世界一(ナンバーワン)

 大がけ:大漁
   竹(たけ):竹は縁起の良いものとされ、漁具(連絡用の幟(のぼり)旗や印(しるし)旗を立てる

棒・ 采配(指揮棒)の柄)などに使われた。多くの鯨唄に竹・印竹が、目出度の松とともに

見られます。

 納屋(なや):鯨組の事務所・鯨解体加工場・製品漁具倉庫・準備場所・宿舎などの総体。

 ろくろ:轆轤:鯨を引き揚げたり解体したりするとき、人力で回して綱を巻き取る装置。

人力ウィンチ。( 下図参照)  子持(こもち):子を連れた鯨。
  羽指踊(はざしおどり):羽指とは江戸時代の捕鯨漁で勢子船に乗って作業を指揮した者。

(もり)を投げ弱った鯨にとび乗り止めを刺す人。羽指の祝いの躍りが羽指躍り。

 

『祝え目出度』 (山口県長門市通)

 

祝え目出度の ヨイサー 若松様よ
          枝も栄える ヨイヤサー 葉もしげるよ


        竹になりたや ヨイヤサー 薬師の竹に
          通栄える ヨイヤサー しるし竹よ


      
 納屋のろくろに ヨイヤサー 綱くりかけてよ
          大せみ巻くのにゃ ヨイヤサー ひまもないよ


        三国一じゃ 綱に今年は大漁しよ ヨカホエ

 網(あみ):江戸時代はすごく大きい網で鯨の泳ぎを止め、銛や剣で突いて捕獲しました。

網掛け突取捕鯨法といわれました。
大せみ:大きい背美鯨(セミクジラ)。体長18b・体重80d、セミクジラは、泳ぎが遅く、皮が厚く

油が多く取れ死んでも沈まない捕り易い鯨で「本魚(ほんいお)=本当の鯨」といわれ、

他の鯨は「雑鯨」と云われました。 シロナガスクジラ・ナガスクジラなどは大きく、泳ぎが

速く死んでも沈むので殆ど捕獲出来ませんでした。
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                                             セミクジラ「鯨図巻・捕鯨道具図巻」

 二つの唄は山口県長門市通(青海島:おおみじま)と佐賀県唐津市呼子町

(小川島)の鯨捕りが江戸時代に唄っていた『羽指踊(はざしおどり)』と

『祝え目出度』という鯨唄です。

 多くの鯨唄にある「いわひ目出た」「祝え目出度」という出だしは「祝え(い)

目出度の(や)」「嬉し目出度の」「目出度目出度の」などの違いがみられ

ます。

 「鯨唄」、「木遣り唄(きやりうた)」、「博多祝唄」、「花笠音頭」などにある

「祝いめでたの〜 若松さまよ〜」という『若松さま』とは「何のことだろう」・

「人の名前かな」という疑問を多くの人が持っています。

 「若松様」というのは人名・松の木・寺・神社・若松観音・北九州市若松・

会津若松・蓬莱飾り(ほうらいかざり)など「人・木・物・事柄・慶事・事物等」

との関連がありそうです。
 さらに「様」が付いた「若松様」、「様」が付かない「若松」もみられます。

 「様」一字をとっても、「様」は人の名前、神仏以外にも使われ、(1)物事

の様子や状態・有様(2)すがた ・かたち(3)やり方・方法・形式(4)品格・

人柄などにも用いられます。
 インターネットで検索すると数多くの検索結果が表示されます。若松様

に関する歌詞、  語源、唄どうしの関連、経緯などをまとめると七つに

分けることができました。

 別表として「鯨唄」にある若松一覧表

『鯨唄に見る「祝いめでたの若松様ヨ」』も作りました。
 上村博一さんのホームページ「鯨さんの唄」から多くの唄を掲載させて

頂きました。

@ 松の若い木(枝)=若松さま説

 正月の生け花に使う「若松」、新年の歳神を迎える色鮮やかな

「門松」・語呂もいい「松竹梅」などから、松がお目出度い「若松様」

になったという説です。

しかし、どうもピンとこないし受け入れ難い語源説です。

「祝いめでたの若松様よ 枝も栄える葉も茂る」の歌詞(フレーズ)は、「祝い

唄」でよく目にします。若松は、松だから枝も真直ぐに伸び、葉も沢山繁る

「若木」とも受け取れます。
 一方、木である松に「様」が付いていることに疑問がわいてきます。

若松様を人名とすれば「おめでたい若松様」というのも可笑しいですね。

 房総の安房郡鋸南町勝山で歌われている
     『勝山の鯨唄』

              
   「やれ目出度のう うれしめでたの ヤレ
若松よナアエヤ


         ヤレ若松よナアエヤ アア枝も栄える葉もしげる」 

     
と「若松」に「様」を付けない呼び捨ての歌詞があります。

ここでは単なる植物の木といった感じです。

わかまつ【若松】: 松の若木。芽生えてから、あまり年月を経ていない松。 正月の飾り

に使う小松。 松の若葉。松の新芽。若緑。(参考:「デジタル大辞泉」)            
かどまつ【門松】:元旦には歳の神が家々を訪ねるという。その歳神を迎えるための目印

が門松であり、注連縄などの玄関飾りは結界で、これより内側には神がいるという印とされ

ている。門松に松を使うのは、神を待つと松の語呂合わせと、冬でも瑞々しさを保っている

ことによる。門松の基本はあくまで松であり、松竹梅は縁起合わせで後年始まったものと

云われる。
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     http://www.catv296.ne.jp/~whale/wakamatu-kadomatsu2.jpg 
門松

A 寺院名「若松寺(若松観音)」=「若松さま」説

  花笠音頭に「祝いめでたの 若松様よ」という歌詞があります。
 「花笠音頭」に唄われているのは、天童市にある寺院「鈴立山

(れいりゅうざん)若松寺(じゃくしょうじ)」の若松観音(わかま

つかんのん)のことで、この若松観音が「若松様」という説です。

昔から縁結びの神様として親しまれ「西の出雲大社、東の若松観音」として

有名です。
「花笠音頭」がつくられた時期は遅く大正8年になってからです。古い『木遣

り唄(きやりうた)(伊勢音頭)』系の『祝い目出度の若松様』が全国的に広

まりました。その後に「花笠音頭」が誕生しました。  

花笠音頭の若松様が、各地で唄われている祝唄の歌詞「若松様」という

語源説はまちがいでした。
 また「祝い めでたい若松観音様 枝も栄え葉も茂る」・・観音様に枝葉が

あるとは、これ如何に?です。

 B 花笠音頭「若松さま」全国拡大説

 山形県の「花笠音頭」の「目出度 目出度の 若松さまよ」の唄、

この「若松さま」が語源になって全国に伝わったという説です。

『花笠音頭』

 
「目出度 目出度の 若松さまよ 枝もチョイチョイ 栄えて 葉も

しげる


ハァ ヤッショ マカショ  シャン シャン シャン」

 前記のA「寺院名(若松寺若松さま)説」と同じです。
 古くから唄われていた木遣り唄(伊勢音頭)の歌詞「祝いめでたの若松様

よ」は、花笠音頭(発祥は大正8年)に影響したと思われます。
 しかし後発のため「花笠音頭の若松さま」は元祖にはなり得ません。


 花笠音頭:山形県尾花沢市のホームページに下記の説明がありました。
『大正8年(1919年)、尾花沢市のかんがい用水確保のため徳良湖築堤工事が行われ、

その際に唄われた土搗き唄(どつきうた)が「花笠音頭」の発祥とされています。
また、その土搗き唄に合わせて、笠を廻して即興で踊ったものが「花笠おどり」の原型と

され、現在では尾花沢市のみならず、山形県を代表する文化のひとつとなっています。』

(資料:尾花沢市ホームページ)

 「土搗き唄」(どつきうた):家などを建てる場合に土台をかためるため「タコ」などで土搗

きをするのだが、徳良湖工事では特に「亀」と呼ばれる重さ60キロ程の石をつかった。

1つの石に10本の綱をつけ10人で力いっぱい引っ張り5尺ぐらい持ち上げ、綱をゆるめて

勢いよく下に落とす。「亀」による土搗きは大きな威力を発揮したが、綱を引くときの呼吸を

はかるのがなかなか難しいので掛け声をかけた。それが「ヨイショ、マカショ」であり、10数

回毎の一服に歌うのが「土搗き唄」だった。

(資料: まるきん http://www.mmy.ne.jp/marukin/main.html

 C 地 名 か ら の 若 松 説 

 博多祝い唄にある若松様は北九州市若松区のこと、会津若松

などの地名
「若松さま」になったという説。

『博多祝い唄』

 
「祝いめでたの若松さまよ 若松さまよ 枝も栄ゆりゃ 葉も茂る」
  「エイショーエー エイショーエー ショーエ ショーエ
   アー ションガネ アレワイサソ エーサーソーエ ションガネ 
                    (この部分の繰り返し)」 

 
「さても見事な櫛田のぎなん 櫛田のぎなん 枝も栄ゆりゃ 葉も

茂る」


「こちの座敷は 祝いの座敷 祝いの座敷 鶴と亀とが 舞い遊ぶ」
「こちのお庭に お井戸を掘れば お井戸を掘れば 水は若水 

金が湧く」

 
「船は大黒船 船頭さんな恵比須 船頭さんな恵比須 乗せた

お客が福の神


「だんな大黒さん ごりょんさんな恵比須 ごりょんさんな恵比須
でけた子供が福の神」


この地名説も語源としては説明不足です。
 福岡市の「博多祝い唄」に唄われている櫛田(くしだ)神社と北九州市とは

距離もあり、また関連からも若松様と呼ばれるには無理があります。
 北九州市若松区には若松恵比須神社がありますが祝唄の「若松様」との

関係は一切なさそうです。
「博多祝い唄」には面白く・めでたい言葉が沢山並んでいます。各地の鯨唄

にも似ているところがあります。

 この唄の特異なところは、銀杏の力強さをアピールしていることです。

 幹のどこを切っても枯れずに生きる銀杏(ぎんなん)。
 鎌倉の鶴岡八幡宮の大銀杏は2010310日の強風で倒壊しました

が無事再生しました。
 銀杏に関わる歌詞は若松様と同じ「櫛田のぎなん 枝も栄ゆりゃ、葉も

茂る」です。
 しかし「ぎなん」には「様」が付いていません。 若松(様)= 銀杏(イコ

ール?)。

 ぎなん:銀杏:いちょう。ぎんなんのこと。
  福岡県出身ですが「ぎなん」というのは初めて知りました。
 ごりょんさん:(ご寮人様・ご料人様)奥さん、おかみさん、妻のこと

D 伊 勢 音 頭 説  (E伊勢木遣り唄が元唄)

木遣り唄「伊勢木遣り唄(1564年頃)」「伊勢音頭(1716

-1736)」になったと いわれております。
 メッカ巡礼みたいに各地からのお伊勢参り・お陰参り(1638

1867年)(200430万人/60年周期のピーク人数)、その後

の「精進落し」の楽しみ、伊勢遊里から全国に伊勢音頭の歌詞

「祝い目出度の若松様」は広まったという説です。

 伊勢音頭は享保年間(17161736)、伊勢の御師(おし・おんし)奥山桃雲

が始めた長唄風の踊り歌といわれております。古市(ふるいち)の遊里で

伊勢踊りに合わせてうたわれました。

『伊勢音頭』   
「伊勢は津で持つ 津は伊勢で持つ 尾張名古屋は城で持つ」
 囃子(ヤートコセーエエ ヨーイナヤ)
   (アリャリャ コレワイナ コノナンデモセー)


囃子詞:
 弥長世(ヤートコセー)ますます行く末長く栄えて欲しい
 拾弥成(ヨーイヤナ) 世の中に歓喜が広く行きわたっている
 安楽楽(アーリャーリャー)心身の苦痛や生活の苦労がなく、楽々として

いる(?)
 是者伊勢(コレハイセ)そこに伊勢がある
 コノ善処伊勢(コノ、ヨイトコイセ) 伊勢は良い所である
(参考;木遣り(木遣り唄):野村由和)

(歌詞「祝いめでたの若松様よ」は、伊勢音頭にはありませんが元唄の

木遣り唄Eにはあります。)

 ここで鯨との関わりをみると伊勢・志摩・熊野・紀州などの鯨捕り、捕鯨

技術、鯨舟が西方へと伝わり(1616年〜)、鯨捕りの移動・交流と共に

伊勢音頭(木遣り唄)が各地にひろまって鯨唄に織り込まれました。
 全国に暦を配布し布教して歩く伊勢の御師(おし)などからも伊勢音頭

は各地へ拡がりました。
 伊勢暦の配布・お祓(おはらい)に加え、御師は「伊勢鯨」を得意先に

土産として持ち歩きました。
 鯨食文化を京都・江戸や各地に伝える役目もしています。
 大鯨に比べ土産の塩鯨(脂皮)がほんの少量だったため、大小の滑稽

さが川柳に唄われております。
 伊勢湾付近でとれた鯨「伊勢鯨」は、江戸時代はブランド品(実は太地・

古座・三輪崎などの鯨)でした。知れ渡っている「お伊勢さま」の 名の

せいでもあり・あやかりたい為だとも思われます。

「川柳」
『伊勢の御師 大きな魚を ちょっとくれ』

(伊勢暦を持ってきた御師が 伊勢産のくじらを少し呉れる)
『一年と 大きな魚を 台にのせ』
(一年(伊勢暦)と 大きな魚(伊勢鯨)少しを台にのせて出す)

                                       
伊勢 の 御師(おし):「御師」は暦や御祓(おはらい)を配った下級の神官のこと。 

伊勢神宮に属して、暦や御祓を配り、また、参拝者の案内や宿をした神職。

伊勢太夫。 (日本国語大辞典)

鯨唄に唄われたお伊勢様の「おはらい様」と「御利生(ごりしょう)」に

ついてみます。

「始めの祝」     長崎県北松浦郡小値賀町


祝い目出度の若松様よ 枝も栄える葉も繁る
  伊勢のお伊勢のおはらい様は 拝みゃその日の祈祷になる


祝っておくれよこの家の門に 祝う門にぞ福来る  
  三国一じゃ オーお祝い上げすまそうよ ハイヤオイ


おはらい様:御祓い 神社で出す厄よけのお札。特に伊勢神宮で八座置神事(やつくらお

きじんじ)の祓をして毎年全国の崇敬者に配った大麻(たいま)やお札。おはらいぐし。

(日本国語大辞典)
三国一:世界一 

『弁財天』    長崎県南松浦郡新上五島町


祝う目出度のサー 弁財天の浦よな サー 弁財天の浦よな
  浦はチョイ 七浦七蛭子お伊勢利生よ

 
サー 明日は座頭ば 懸きょよな サー 子持ちも懸きょな
  是もチョイお伊勢の御利生かな 


伊勢音頭:伊勢地方に起こり、各地に伝わった民謡。源流は、伊勢遷宮の用材を運ぶ

御木曳(おきひき)の木遣(きやり)唄、伊勢参宮の道中唄、神宮周辺の遊郭のはやり唄など。

各地に伝存するものは歌詞・曲調とも多種多様だが、「正調伊勢音頭」系と「伊勢道中唄」

系に分かれる。「享保年間(17161736)、伊勢の御師(おし)奥山桃雲が始めた長唄風の

踊り歌。古市(ふるいち)の遊里で伊勢踊りに合わせてうたわれた。

(資料:デジタル大辞泉)」
弁財天(べんざいてん):インド神話で、河川の女神。音楽・弁舌・財福・智慧の徳があり、

吉祥天とともに信仰された。仏教・ヒンズー教に取り入れられ、ふつう琵琶(びわ)を弾く

天女の姿で表される。また、日本では財福の神として弁財天と書かれるようになり、

七福神の一として信仰される。弁天。べざいてん。(資料:デジタル大辞泉)」
御利生(ごりしょう):ご利益(ごりやく)

E 木遣り唄(伊勢音頭)「めでためでたの若松様」説 


 『木曽、飛騨や、伊勢の山から伊勢神宮へ建材のヒノキ材などを

運ぶ時に唄われた木遣り唄(きやりうた)が、伊勢木遣り唄(伊勢

音頭)になった。
 伊勢参りに来た各地の人々が伊勢遊里から吸収し「荷物になら

ない伊勢土産」として持ち帰り、全国へ波及させ変化・追加・修正・

加工されそれぞれの「祝唄」(若松様)として定着したという説

です。』


 『木遣り唄(きやりうた)』


 「アァヨー オイナー エー めでためでたの アヨイヨイ 若松様よ 
     アァヨーイセーソーリャセ 枝もな栄える ヨイソーレーサー 葉も茂る」

 
 「アァヨー オイナー エー お伊勢参りして アヨイヨイ 飲んだか酒を 
     アァヨーイセーソーリャセ 天のな岩との ヨイソーレーサー 菊酒を」


 菊酒(きくざけ):菊の花を浸して飲む酒。また、重陽の節供の際に用いる酒。菊の酒。

菊花の酒。(参考:日本国語大辞典)
 木遣り(きやり): 重い木材や岩などを、多人数で声を掛けたりしながら運ぶこと。

また、それをする人。 「木遣り歌」の略。(参考:「デジタル大辞泉」)


 
伊勢木遣り唄E⇒伊勢音頭Dです。伊勢音頭には120140位の歌詞が

あり、みなさんの耳に入り記憶されている唄がいくつも入っております。
 面白く、楽しめる、目出度い、笑わせる、ダレでもうたえる、7775(音)調

の唄になり、字には出来ない下ネタも沢山入っております。
 この中に「伊勢は津で持つ 津は伊勢で持つ」「伊勢で名所は 二見に朝熊

(あさま)」
「富士の白雪 朝日でとける」「めでためでたの若松様」などの歌詞があり

ます。
 D伊勢音頭=E木遣り唄が「めでたの若松様」を各地に運び、多くの民謡

を派生させました。

 鯨唄をうたう鯨捕りは海上で勇壮、大きい重たい鯨を動かす危険な仕事

でした。
 式年遷宮・御柱祭りとは比較できませんが同じような歌詞をうたったという

不思議さが感じられます。
 「祝い目出度の 若松様よ」のフレーズは時・場所・人はさまざまですが

私たち日本人の心の唄かもわかりませんね。「第2(影)の国歌」だと

表現する人もいます。

 大きいもの・重たいものを曳き、押す作業「木遣り」は日本各地にあり、

木・岩石以外・さらに建築以外に下記のように多くの作業・労働があります。

寺社新築改修・築城・資材運搬(木や岩石等の材料・作業道具・貯木場

作業・いかだ流し)、 建築作業(地突き・棟上げ・(とび職・火消し職人))、

漁業(網曳き・定置網曳き・網起こし ・鯨捕り(轆轤回し・骨きり・網造り)・

魚河岸作業、運搬(川曳き・陸揚げ・積み込み・北前船作業) ・祭(山車

・山鉾)、祝い(箪笥長持運び)などなど。

 重機がない時代、力を合わせる為の「掛け声」が心の「唄」に変身し「労働

歌・作業歌祭歌・祝唄」へと移行しました。

 神宮式年遷宮(じんぐう しきねん せんぐう):神宮(伊勢神宮)において行われる式年

遷宮(定期的に行われる遷宮)のことである。
20年ごとに行われ、国内各地の決まった場所のヒノキ材が伊勢神宮に運ばれます。

木遣り唄は木を運ぶ・送るための作業歌でした。(参考:「デジタル大辞泉」)

 諏訪の御柱祭 同じような行事・祭りが「諏訪の御柱祭」です。信州・諏訪大社では7年

に一度の寅と申の年に宝殿を新築し、社殿の四隅にあるモミの大木を建て替える祭り

を行います。通称「御柱祭」とよび、諏訪地方の6市町村21万人の氏子がこぞって参加

する天下の大祭です。御柱の引き作業にかかせないのが「木遣り唄」です。多くの人が

木を曳き・押す総力を合わせるための総指揮の唄ともいえます。色々の場面に応じて

多くの歌詞があり体力・声量・音質も要求され、事故も起きる危険で大変なお祭り・騒動?

です。                      

F 蓬莱台(飾り)=若松さま 説  

 「蓬莱飾り(ほうらいかざり)」には必ずと言っていいほど大きな

松(飾)があり、これを「松」「若松」と云ったようです。
 目出度い飾り・慶事物のために「めでたい様式」の「様」をつけま

した。
 正月の飾り、結婚の結納飾り(水引:みずひき)は現在も使われ

ており、この「蓬莱飾り」が「若松」または「若松さま」と呼ばれた

という説です。
    http://www.catv296.ne.jp/~whale/hourai-kazari-turukame.jpg  蓬莱飾り
(映像資料:「結納屋さんcomhttp://www.yuinouyasan.com/c04/index.html


 お祝いに使う蓬莱台(ほうらいだい)とは「蓬莱山をかたどって作った山型をのせた台」のこと。

 その上に、松竹梅・鶴亀の舞い・長寿の翁(おきな)と嫗(おうな)などを取り合わせて飾り、祝儀に

用いました。「蓬莱山」「蓬莱飾り」とも云います(参考:デジタル大辞泉)。

 蓬莱飾り=若松様の関連部分です。若松様と蓬莱飾りを置換えてみて下さい
 @「めでためでたの 若松様は 枝も栄えて葉もしゅーげる」 「若松」「枝」「葉」
 A「祝いめでたの 若松様に 鶴と亀とが舞を舞う」「祝い目出度の 若松様は 庭に鶴亀 五葉の

松」 蓬莱台(若松様)の五葉松+鶴・亀。(翁と嫗・恵比須と大黒もある)
 B「三山曳き据え、蓬莱あげりゃ 鶴と亀とが舞い遊ぶ」「目出度目出度が 三つ重なりて 鶴と亀

とが 舞を舞う」  「蓬莱台」・「蓬莱飾り」
 C「ここの座敷は 目出度の座敷 鶴とな〜亀とが 舞を舞う」 座敷=舞台 などです。
 若松様の蓬莱台にお目出度い五葉松や竹梅、鶴や亀が舞い、翁(おきな)と嫗(おうな)などを配した

全情景が「若松様」でした。蓬莱飾りは祭りの花笠・花笠踊り・山車・山鉾・笠鉾などにも影響をあたえ

ました。

 鯨 唄 へ の 影 響
 江戸時代、一大産業であった捕鯨業の資本家(商人・網元・鯨組主・藩主)、従業者(羽指(銛打ち)・

勢子(船員)・網大工(網を作る人)・舟大工(船を作る人)など)の国内交流が多く、伊勢・紀州・大阪

から土佐・長州・西海捕鯨地域(長崎・佐賀・福岡)にも伊勢音頭が伝わりました。
 江戸時代には人の移動が意外に多く、鯨捕りや鯨船(船型が熊野造り)が各地に移動し捕鯨(1616

から西海に)を行っていることも特徴です。

捕鯨技術・技術者・船・鯨関連文化も西方に流入し、西海捕鯨の全盛期を迎えました。紀州・熊野出身の

一部末裔が西海捕鯨で指導的役割を果たしました。
 各(浦)捕鯨地にある鯨唄には『祝い目出度の若松様よ』 が入った鯨唄が沢山あります。

 大きいもの・重たいものを運ぶときに曳き・押す・上げることが木遣りです。
 この掛け声が唄としての木遣り唄(伊勢音頭)にかわり、さらに鯨唄の『轆轤(ろくろ)巻き上げ唄』・『轆轤

巻の歌』などの作業歌を生みました。

 下記の「轆轤巻き上げ唄」は、作業歌である「伊勢木遣り唄」が西海鯨唄に取り入れられた良い見本です。

『轆轤(ろくろ)巻き上げ唄』 佐賀県唐津市呼子町小川島


1 沖じゃ鯨取る、浜ではさばく、ヨーイヨイ、

納屋の旦那さんな、こりゃ金はかる、

ヨーイヨーイヨイヤナー、ドートー、

エンヤ巻いた、エンヤ巻いた、巻いた、巻いた


2 ツツジ椿は野山を照らす、ヨーイヨイ、

セミの子持ちは、ヤレ納屋照らす、

ヨーイヨーイヨイヤナー、ドートー、

エンヤ巻いた、エンヤ巻いた、巻いた、巻いた


3 祝いめでたの若松様よ、ヨーイヨイ、

枝も栄える、こりゃ葉もしげる、

ヨーイヨーイヨイヤナー、ドートー、

エンヤ巻いた、エンヤ巻いた、巻いた、巻いた

轆轤は多人数で綱を巻き寄せる人力ウインチ、浜で鯨を引き寄せるとき、鯨の解体、皮を剥ぐとき、肉の移動等に使った。

轆轤には移動式と固定式があった。
http://www.catv296.ne.jp/~whale/kagura2-idousiki.jpg
轆轤・ろくろ(移動式)
(十字状、多くの人が棒を押して綱(つな)を巻き、皮を剥ぎ引き上げる図)
 (資料:『小児乃弄(しょうにのもてあそび)鯨一件の巻』部分図)

 

『轆轤巻の歌』      長崎県南松浦郡新上五島町

 

  ヤットセー ヤットセー

 

1 飲めよ大黒 歌えよ蛭子 ヨイヨイ   中の尺取りゃノウ福の神
     ヨーイトー そら巻け そら巻いた  ヤットセー ヤットセー

 

2 沖にゃ鯨捕る 端(へた)には剖く ヨイヨイ 納屋の旦那衆は ノウ金はかる
     ヨーイトー そら巻け そら巻いた ヤットセー ヤットセー

 

3 今年ゃ幸せ 思うこちゃ叶う ヨイヨイ 末は鶴亀ノウ五葉の松
     ヨーイトー そら巻け そら巻いた ヤットセー ヤットセー

 

この唄には歌詞の「祝い目出度の 若松様」は入っていませんが蓬莱飾りの役者(鶴亀・五葉の松、

大黒・蛭子)が入っています。
尺取り(しゃくとり):「酌取り」のこと。宴会で酒の酌をする人<『広辞苑』>
納屋(なや):海岸の事務所・解体作業場・加工場・倉庫などの一群のこと。納屋場(なやば)。
五葉の松(ごようのまつ): 針形の葉が5本ずつ集まって出る美しい松。縁起の良い松とされています。
 http://www.catv296.ne.jp/~whale/kagura-kotei.jpg
                                     
轆轤・ろくろ(固定式)(資料:捕鯨之図 鯨解体図奥書・部分図)

  ま と め : 若 松 様 と は 

 松を飾った祝いの「蓬莱飾り(蓬莱台)」が「若松様」といわれました。
 若松様には色々の目出度い役者達(鶴亀翁等)が並びます。
 古くからのお目出度い謂れを持った者(物)の出演(配置)・配役(脚本)により台が装飾され、

食べ、飲み、唄をうたい、祝いの物語を皆でたのしみ寿ぎました。

 この状景は「祝い目出度の若松様よ」のいくつかの歌詞にも入り表現されております。
 これらの全てを包含した舞台(飾り・座敷・床の間)が若松様そのもの、「若松(様)の舞台」であり

「若松劇場」でした。  さらに目出度い祝唄を加えたオペラ劇「若松物語」であったといえます。
http://www.catv296.ne.jp/~whale/hourai-kazari.jpg
若松様・蓬莱飾り(結婚式)(資料:絵本婚礼道しるべ)

 

寺社の建築に使う木材を運ぶ時などに唄われた「木遣り唄(伊勢音頭)」が、伊勢の遊里などで

唄われ、 伊勢参りの多くの人々、伊勢の御師達が「伊勢音頭(木遣り唄)」や「祝い目出度の〜

若松様よ」 という歌詞を各地に伝えました。
 同じ頃、伊勢・紀州の鯨捕り達が鯨舟で各地に遠征し、またお互いに交流して捕鯨技術や鯨文化

(唄)が伝わり、 伊勢音頭や一部の歌詞『祝い目出度の若松様』が作業唄の「轆轤巻き唄」などに

織り込まれ、 祝唄の「祝い目出度」や「羽指踊り」などになりました。

 この若松様フレーズは面白く、覚えやすく、祝い、歌い、楽しいので国内に流行し、各地でコピーされ、

 新につくり替えられ地域の「祝唄」「作業唄」として多くの唄が作られ定着しました。
今でも祝い事、祭りで「めでたの若松様」の歌詞は健在です。

 お伊勢参り・お陰参り(60年周期)ブームによる民の大移動(旅)、お参りフリーの社会情勢、 旅行中の

街道での接待や伊勢住民の施しサービス、宿舎を持ったツアーコンダクター(御師)の活躍と各地の

お伊勢講(共同積立)、1千軒近い遊里が伊勢音頭流行に大きく影響しました。今はない安全と人情・絆が

あったからだと思われます。
 この旅は信仰(現世利益)のほかに観光・娯楽・情報収集(ファッション・農業器具・種子購入・音楽・芸能

 の役に立ちました。
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上村博一さんのホームページ『鯨さんの詩』(鯨歌)
http://homepage2.nifty.com/ue_room/kujira%EF%BC%88kujirauta%EF%BC%89.html

(参考資料): 日本民謡の種類・分類(日本民俗学者の柳田国男)
歌われる場と目的の面から民謡の種類を分類している。
・田歌:畑歌を含む。田打歌,田植歌,草取歌,稲刈歌など。
・庭歌:屋敷内の作業場での仕事に伴う歌。
 稲扱(いねこき)歌,麦打歌,剰搗(ひえつき)歌,麦搗歌,臼搗歌,粉恐歌,糸引歌,地搗(じ   つき)歌など。
・山歌:山林原野に出て歌う歌。山行歌,草刈歌,木おろし歌,杣(そま)歌,茶山歌など。
・海歌:水上の生活,水産一般の作業に伴う歌。船卸歌,船歌,潮替歌,網曳歌,鯨歌な ど。
・業歌(わざうた):ある職業に携わる人だけが歌う歌。大工歌,木恐歌,綿打歌,茶師歌,  酒屋歌(酒造歌)など。
・道歌:馬子歌,牛方歌,木遣(きやり)(木遣り),道中歌など。
・祝(いわい)歌:座敷歌,嫁入歌,酒盛歌,物吉歌など。
・祭歌:宮入歌,神迎歌,神送歌など。
・遊歌:田遊歌,鳥追歌,正月様,盆歌,踊歌(盆踊歌,雨乞踊歌)など。
・童(わらべ)歌:子守歌(眠らせ歌,遊ばせ歌),手鞠歌,お手玉歌など(以上《民謡覚書》)
(資料:http://www.yumekobou.com/swminyourekisi.htm 
日本民謡の歴史と変遷(自由に利用下さい)) )

<伊勢音頭から派生した唄>
(博多祝い歌 花笠踊り唄 まだら節 桑名の殿様 尾鷲節 三河万歳 伊予万歳 今治大黒舞  香川の伊勢道中唄

 郡上節 帆柱起し音頭 山形大黒舞 秋田大黒舞 三吉節 津軽願人節  南部俵積み唄 広島木遣り音頭など)。

(資料:Wikipedia

 

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『鯨唄に見る「祝いめでたの若松様ヨ」』